1話 憧れの先輩(脚本)
〇教室
今日の授業はここまでだ。
ちゃんと復習しとけよー
女子1「あー、やっと終わった! お先ー!」
女子2「彼氏とデートだって。いいなあ」
女子3「奈子ー。 ダメ元で聞くけど、カラオケいかない?」
山本 奈子「行かない」
女子2「だよねー。 医学部志望だと勉強大変だねえ」
山本 奈子「今日は生徒会」
女子3「生徒会って、誰も何にもしないんでしょ? よくやるよねー」
山本 奈子「引き受けちゃったから」
山本 奈子「楽しんできて?」
女子2「うん、じゃあねー」
〇学校の廊下
――医学部に行こうと、自分で決めた
〇階段の踊り場
部活や遊びよりも、勉強に時間を
割こうと、自分で決めた
〇学校の廊下
みんなみたいに華やかな高校生活は
送れないだろうけど、それでいい
憧れの人を眺めているだけで
私は十分
〇生徒会室
山本 奈子「失礼します」
佐藤 正美「来たね、奈子ちゃん。 待ってたよ」
山本 奈子「今日も正美先輩だけですか?」
佐藤 正美「うん。 いつもどおりにね」
佐藤 正美「みんな忙しいのはわかるけど・・・」
佐藤 正美「引き受けたからには、ちゃんとやってほしいよな」
山本 奈子「ですよねえ・・・」
山本 奈子「なので、来ました!」
佐藤 正美「はは、俺もだよ」
佐藤 正美「そうだ、奈子ちゃんこれ」
佐藤 正美「「水の都の物語」! いやあ、面白かったよ!」
佐藤 正美「商業で成り上がったヴェネツィアの 一千年、ドラマチックだったなあ!」
佐藤 正美「ありがとう、奈子ちゃん」
山本 奈子「楽しんでもらえてよかったです!」
山本 奈子「そうだ、私も・・・」
山本 奈子「ちょうど、昨日読み終わりました」
山本 奈子「細胞ってすごいですね! 読んでてワクワクしました」
佐藤 正美「だよな!」
佐藤 正美「俺も、クラスのヤツから回ってきたとき 夢中で読んじゃってさ」
佐藤 正美「奈子ちゃんに読ませたいって思ったんだ」
佐藤 正美「ね、奈子ちゃん、次もお任せでいい?」
山本 奈子「はい! 正美先輩が選ぶ本、楽しみにしてますね」
佐藤 正美「はは、俺も!」
佐藤 正美「・・・・・・」
山本 奈子「どうしました?」
佐藤 正美「・・・いや、なんでもない」
佐藤 正美「仕事しようか。 今日は、この書類を片付けよう」
山本 奈子「はい!」
山本 奈子(みんなに押し付けられた 生徒会の仕事だけど)
山本 奈子(おかげで、正美先輩と本の貸し借りまで するようになった)
〇体育館の中
正美先輩は、成績優秀で、
バスケ部のエースで
〇教室
かっこよくて、優しくて
みんなの人気者
〇生徒会室
山本 奈子(本当なら、私なんかが話せる人じゃないんだよね・・・)
山本 奈子(正美先輩のことだけは、 生徒会に入ってよかったなあ)
佐藤 正美「・・・よし、こっちは終わり!」
山本 奈子「私も、全部終わりました!」
佐藤 正美「結局、今日も二人で全部やっちゃったな」
山本 奈子「本当ですね」
山本 奈子「だから、みんな来ないのかも?」
佐藤 正美「あー。確かに 俺たちで全部足りるからなあ」
佐藤 正美「まあ・・・ なら、このままでもいいか」
山本 奈子「えっ・・・」
佐藤 正美「生徒会」
佐藤 正美「みんな来ないなら、生徒会室で 奈子ちゃんと二人きりになれる」
佐藤 正美「こうして、奈子ちゃんと二人だけで ゆっくり話せるし?」
佐藤 正美「・・・奈子ちゃんは、いや?」
山本 奈子「えっ・・・」
佐藤 正美「俺と、二人きりになること」
山本 奈子「あの・・・それは、嫌じゃないというか、 むしろ嬉しいというか」
その時、チャイムが響き渡る
山本 奈子「あ・・・先輩、部活ですよね」
佐藤 正美「・・・そうだね」
山本 奈子「急がないと。 行きましょう」
佐藤 正美「うん。今日はここまでかな」
〇学校の廊下
佐藤 正美「じゃ、俺は部活行くから」
佐藤 正美「またね、奈子ちゃん」
山本 奈子「はい、がんばってくださいね」
山本 奈子(はあ・・・びっくりした・・・)
山本 奈子(正美先輩、私と二人きりで話せることが 嬉しい感じだったけど・・・)
山本 奈子(いやいや、まさか、ね・・・)
まずは一人目の男子登場ですね。先輩と二人っきりで、近くもなく遠くもない距離で作業を進めながらも、彼女の心臓がドクドクと高鳴っているのが、すごく伝わりました!