エピソード33 番外編 泡沫の夢(脚本)
〇洞窟の深部
ゴルド砂漠下 洞窟内
静かな夜──
ティサはいつものように、カートの様子を
そっと見守っていた。
苦しんではいないか、魔術の進行は進んでいないか、
カートが寝ている間に、毎夜様子を見るのも、ティサに与えられた命令だった。
ティサ(カート様・・・。今日も穏やかに 眠っていらっしゃるわ・・・)
ティサ(私・・・・・・ 私は・・・・・・)
ティサは、そっと眠っているカートの頬に
触れ・・・
優しく、口づけをした。
そして、肌を重ねようとした。
カートは、急に自分に触れたものに驚き、
目を覚ました。
カート「ティサ・・・!?」
ティサ「カート様・・・。 起きてしまったのですね・・・」
カート「何を、している?」
ティサ「カート様に愛を乞おうと」
カート「・・・ダメだ。それだけは」
カート「ティサ、今すぐやめろ。これは命令だ」
ティサ「・・・・・・・・・・・・」
ティサ「聞けません」
カート「なに・・・?」
カート「ティサ! 命令だと言っているだろう!」
ティサ「・・・聞けませんっ!!」
カート(ティサが・・・命令に背いた!?)
ティサ「カート様・・・。 私の使命は、あなたをお守りする事です」
ティサ「だけど、あなたは、 運命を受け入れようとしている・・・」
ティサ「私の、存在意義は何なのですかっ!?」
ティサ「カート様・・・ あなたを愛しています・・・」
ティサ「この気持ちだけは・・・ 命令で縛り付けないでください・・・」
ティサ「私は! 命令に背いてでも、 あなたを愛します・・・!」
ティサ「どうかお願いです・・・。 私の存在意義を・・・ください・・・」
カート「くっ・・・」
カート(ティサ・・・そんなにまで・・・)
カート「・・・・・・・・・・・・」
カート「わかった。一度だけ」
カート「泡沫の夢と思おう・・・・・・」
ティサ「ありがとう・・・ございます・・・」
2人は、一夜を共にした──。
〇洞窟の深部
ティサ「カート様、おはようございます」
カート「ティサ・・・」
カート「その、身体は大丈夫か?」
ティサ「ふふ・・・」
カート「何がおかしい?」
ティサ「カート様は、やはりお優しいですね」
ティサ「なぜ魔術の封印を解いてしまったのか・・・ 理解できませんわ」
カート「それは・・・」
ティサ「正直申しますと、私はあなたを殺して 魔術を暴走させようかと思いました」
カート「・・・・・・!?」
ティサ「そうすれば、 魔術はまた新たな依代を求めますから」
ティサ「・・・でも、できなかった」
ティサ「こんな気持ちになったのは、 初めてだったんです・・・」
ティサ「あなたと一緒なら、封印されてもいい、 と──」
ティサ「カート様、ありがとうございます」
ティサ「私は、 アイ=リーンの子孫たちが来るまで・・・」
ティサ「誠心誠意、 お仕えさせていただきます・・・」
カート「ティサ・・・」
カート(こちらこそ、ありがとう────)
カート(こんな俺を、愛してくれて────)
たった一度の逢瀬が未来を救うことになるとは。
完結、お疲れ様です!
ありがとうございます、経緯が明かされてすっきりしました。これ本編で見たかったなー!