1. 婚約破棄からの国外追放(脚本)
〇謁見の間
それは、私が十八歳の誕生日を迎えたわずか一ヶ月後のことだった。
フェルナンド「アリア・レトゥラン! この陰湿な女め! お前がミランをいじめていることは分かっているんだぞ!」
アリア「・・・・・・!?」
フェルナンド「我が国が大事にすべき巫女様を尊ぶ心を持たぬなど、国母となる者としてあまりにも恥ずかしいことだとは思わないのか?」
アリア「お待ち下さい! 誓って私はそのようなことは一切いたしておりません!」
ミラン「ふえぇん! アリア様ぁ! ひどいですわぁ!」
フェルナンド「ああ、ミラン。可哀想に・・・・・・」
アリア「・・・・・・」
フェルナンド「アリア、ここまで言ってもなお、お前は反省する心を持たぬのか! もう我慢の限界だ! このような者を国母には出来ぬ!」
フェルナンド「僕はお前との婚約を破棄することを宣言するとともに、国外追放処分を命ずるっ!! 衛兵、この女を連れて行け!!」
アリア「私は無実です! フェルナンド様、どうか私の話を聞いてください・・・・・・! ううっ、痛いっ!」
こうして私は城内で一時軟禁状態に置かれた後、すみやかに国外へと送られることになったのだった。
〇英国風の部屋
アリア「はあ・・・・・・。どうしてこうなってしまったのかしら」
私ことアリア・レトゥランは、エミレシア王国の公爵家の娘として生を受けた。
そして、五歳の頃に世継ぎの王子・フェルナンド様の婚約者として定められた。
親が決めた婚約であり、お互いに恋愛感情を持っていたわけではないことは事実だ。
それでも国の次代をともに担う存在として、信頼関係や友情は育んでいたつもりだった。
そんな穏やかな日々が一変したのは、ほんの一年ほど前のこと。突然、王城の庭園に謎の少女・ミランが現れたことに端を発する。
後の調査によって異世界から来たらしいということが判明した彼女は、どういうわけか瞬く間に高位の男たちの心を虜にしていった。
人々に利用されやすいがゆえに一際警戒心高く育てられているはずの彼らが簡単にミランに堕ちていく様は、どう見ても異常だった。
とりわけ心酔していたのは、私の弟であるオスカーと私の婚約者のフェルナンド様だ。
今や彼らはすっかりミランの言いなりになっていて、私が何を言っても聞く耳など持ってくれない。
アリア「今日だってその延長線上よ。私はミランをいじめていないのに、ろくに調査もせず彼女の発言だけを証拠にして私を断罪したのだから」
アリア「私も貴族だから、政争で負けて失脚したならばまあ仕方ないかと諦めもつくわ」
アリア「そうでなくても、私に瑕疵があったとか、何か明確な理由さえ分かったならば納得もできるでしょう」
アリア「でも、何もわからない。それがこの上なく気持ち悪くて不気味なのよ」
まあ、幽閉されて追放の時を待つばかりの今となっては、そんなことを言ったってもはやどうしようもないのだけれど・・・・・・
・・・・・・あら? 誰かが部屋の扉をノックしているわ。
アリア「どうぞ、お入りになって。・・・・・・って、ミラン様!?」
ミラン「あらあら、天下の公爵令嬢様が堕ちたものね。恨むならば私ではなく、あなたを「悪役令嬢」にした神を恨んでちょうだい」
アリア「・・・・・・私に無実の罪を着せたかと思えば、今度は気でも狂ったのかしら。悪役令嬢? 何を言っているのか分からないわ」
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