なおり山

久望 蜜

エピソード1(脚本)

なおり山

久望 蜜

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〇おしゃれなリビングダイニング
妹「お姉ちゃん、人気のお菓子を買ってきたから、一緒に食べよう?」
  わたしの妹は美人で気立てがよく、異性にモテる。
  しかし、それは表の顔。
  本性はただのぶりっ子で、ものすごく我が儘だ。
  それがここ1ヶ月ほど、大人しい。
妹「あ、1個余っちゃったね。 お姉ちゃん、食べていいよ」
  前まではお菓子が余ったら、必ず自分が欲しいと主張した。
  なぜ、妹は変わったのか。
  その秘密をわたしは知っている。

〇おしゃれなリビングダイニング
  今から約1ヶ月前のこと。
  昔から、妹は両親に可愛らしく甘えて、わたしよりも大事にされていた。
  そして、わたしのものを欲しがった。
  服もアクセサリーも、何もかも。
母「唯は、お姉ちゃんなんだから!」
父「それくらい我慢しなきゃ、仕方ないだろう」
  両親はそういったけれど、ずっと頭にきていた。
  極めつけは、わたしの好きな男の子を奪ったことだ。
  もう許せなかった。

〇山中の坂道
  わたしは妹をハイキングに誘った。
  両親が二人とも出かける日。
  わたしたちの住む町から近い「なおり山」と呼ばれる、人があまり入らない山へ。
妹「え〜、山なんて行きたくないよぅ」
妹「服が汚れちゃうじゃない!」
主人公「ごめんごめん、二人きりで大事な話があるから」
  妹は山歩きなど渋ったが、無理に連れだした。
  そして、妹を殺した。

〇森の中の沼
  沼につき飛ばし、そのまま頭を押さえつけて水に沈め、溺死させた。
  呆気ないほど簡単に終わった。
  そのままリュックサックに石を詰めて、妹を沼に沈めてしまった。

〇おしゃれなリビングダイニング
  わたしは、何食わぬ顔で家へ帰った。
  その後帰宅した両親は、妹が帰ってこないことに慌てた。
父「縁はまだ帰らないのか!?」
母「警察に捜索願を出したほうがいいのかしら・・・・・・」
妹「ただいま〜」
  妹が帰宅した。
  いつもと何一つ変わらない姿で。
  わたしは驚いた。
  沼に沈んだ、あの血色のない白い肌は何だったのか。
  夢でも見ていたのだろうか?
  妹はわたしに何もいわなかったので、わたしも何もいわなかった。

〇通学路
  翌日、友だちと帰宅していたときのこと。
友だち「ねぇ、唯は知っている? なおり山の不思議な話!」
  わたしは内心ドキリとしながら、平静を装って答えた。
主人公「知らない。何かあったの?」
友だち「ずっと昔ね、あの山に壊れたものを捨てると、直って返ってくることがあったんだって」
友だち「だから、ある人が、治る見込みのない病気の子どもをわざと置いてきたの」
友だち「そしたら、なんと子どもの病気が治って帰ってきたらしいの!」
友だち「それから、あの山は「なおり山」って呼ばれるようになったらしいわ」
主人公「ふーん」
  怪談好きな友だちの話を聞きながら、考える。
  ということは、妹はそれで「治って」帰ってきたのだろうか。
  何にせよ、あの山に捨ててきたのは失敗だった。

〇おしゃれなリビングダイニング
  それから1ヶ月、妹の様子を注視してきた。
  今のところ、おかしな点は見当たらない。
  性格がまともになったこと以外は。
  幸か不幸か、これも山のせいなのだろう。
妹「お姉ちゃん、考えごと?」
  妹に声をかけられ、ハッとする。
主人公「ううん、何でもない」
妹「そう?」
妹「また、わたしを殺そうと考えているのかと思った」
  息を飲んで妹の顔を見ると、人間とは思えないニタニタした気味の悪い笑顔をしていた。

コメント

  • なおり山で、妹さんの性格がなおって帰ってきたと思いきや…なんだか怖い!です!
    お姉さんは、今後無事でいられるのか心配です。

  • 不気味だなーと思いながら読んでいて、ラストでゾッとしました。一体何が帰って来たというのか……。なおり山というネーミングがまた、絶妙に実在しそうで怖いです。

  • 壊れたものが治って帰ってくる…。
    人間ではなくなってるのか…?
    でも皆んなには見えるということは…うーん…。
    謎が多いけどまた私を殺そうと…というところでゾッとしました汗

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