第二十話『瀬田彩人Ⅰ』(脚本)
〇公園の砂場
瀬田彩名(村井のやつ、随分怯えてるわね)
待ち合わせは、人気がない公園を選ぶのが基本だった。
この場所は立地があまり良くないこともあって、夕方であっても子供が遊んでいることは少ない。
放課後、雨でなければこの公園で、瀬田彩名は“彼”と会うのが普通だった。
まだ本人は来ていないようだ。やや時間にルーズなところがあるのでそれくらいで怒ったりはしないが。
瀬田彩名(無理もないか。・・・・・・太田川先生に小河原海砂、小池校長と来れば・・・・・・まず次は自分だものね)
奥田奏音の呪い、なんて話は正直彩名は信じていなかった。悪霊だなんてナンセンスだ。
悪霊が祟り殺すなら、殺し方には共通点が生まれそうなものであるし──
何より、トイレに無理やり顔を突っ込ませたり、人気がない路地で成人男性をミンチにするというのがなんとも胡散臭いのである。
まるで、悪霊の仕業に見せかけようとしているかのようではないか。
瀬田彩名(悪霊が、まるで人目がない場所を狙ったように人殺しをしたりするようなものかしら。それも、脈絡もない方法で)
瀬田彩名(・・・・・・きっと違う。これは、生きた人間の仕業だわ)
科学の力か、超能力の類かはわからないが。
生きた人間がそのようにしている、と考えた方が彩名としては自然であるように思われた。とすれば、第一容疑者は。
瀬田彩名(あの女が怪しい。奥田奏音の母親・・・・・・奥田冴子)
スマホに目を落として、彩名は呟く。
瀬田彩名「私の存在に気づかれる前に・・・・・・始末しなくちゃ」
〇モヤモヤ
第二十話
『瀬田彩人Ⅰ』
〇高級マンションの一室
瀬田彩太「おい、彩人!あの友人たちはなんだ!」
現在高校生の兄、彩斗が家を出て行ったのは、ほんの二年前のことである。
兄と彩名は歳の離れた仲の良い兄妹だった。兄も、彩名のことはどちらかというと娘のようにかわいがってくれていたように思う。
ただ、自由奔放な兄は、父と母の厳しい教育方針にはついていけなかった。
二人が自分の付き合う友人さえ口を出してくるのを見て、ついに堪忍袋の尾が切れたということらしい。
瀬田彩人「うるせえな!俺が誰と付き合おうと関係ないだろ!」
瀬田円花「親に向かってなんなのその口の聴き方は!未成年なのに煙草やお酒をするような、あんな野蛮な連中と付き合うなと言っているの」
瀬田円花「貴方はこの瀬田家のい長男なのよ!?セタデンキの跡取りだってことを忘れて貰っちゃ困るわ!」
瀬田彩人「そんなの知るか!好きでこんな家に生まれたわけじゃねえし、親父の会社を継ぐ気もねえ!昔から言ってるだろうが!」
瀬田円花「彩斗!」
瀬田彩人「めんどくせえ、こんな家、出てってやるよ!」
〇黒背景
そして、兄は勘当――というより、自らこの家を出て行ったのだった。
恐らく両親としても、自分達の言うことをまったく聴かない息子に愛想を尽かしていたというのもあるだろう。
気づけば、瀬田家の跡取りは彩名ということになっており。両親は、まるで兄など最初からいなかったようにふるまったのだった。
でも、彩名にとっては違う。瀬田彩斗は、たった一人の大切な兄だ。いつも遊んで貰ったし、可愛がってもらった。
素行が荒れても関係なかった。だから、こっそりスマホで連絡を取り合って会うことなど珍しくなかったのである。
そう、あの日も。
瀬田彩名「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんって、怖いお友達もたくさんいるよね?」
瀬田彩名「コドモが大好きだったり、人を苛めたり殴るのが大好きな変態さんの知り合いとかいたりする?」
怒りと、悲しみと、悔しさのまま。彩名は兄に、持ちかけたのだった。
瀬田彩名「懲らしめて欲しい子がいるんだけど、協力してくれないかしら」
〇公園の砂場
瀬田彩人「彩名」
瀬田彩名「!」
声をかけられて、彩名ははっとして顔を上げた。見れば兄が、片手を上げてこちらに走ってくるのが見える。
瀬田彩名「お兄ちゃん!もう、遅かったじゃない!」
瀬田彩人「ごめんごめん。ちょっと面倒な奴に絡まれて、ぶっとばしてくるのに手間取った」
瀬田彩名「もー。殺してないよね?」
瀬田彩人「大丈夫大丈夫。ちゃんと半殺しに留めたからよお」
兄が普段、何をしているのかは知らない。
ただ、お酒も煙草もクスリもなんでもあり、な闇の世界の住人と付き合いがあるのはわかっている。
兄の衣服から、煙草に混じって妙な匂いがすることは少なくなかったから。血の臭いが、混じってくることも。
それでも彩名は気にしなかったし、深く追求することもしなかった。
自分を大事に思ってくれる兄が変わらないなら関係ない。
自分の知らないところで誰が傷ついていようが死んでいようが、自分にはどうでもいいことだからだ。
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首謀者と真の実行犯が出揃いましたね。。。もうおぞましい内容ですね。。
そして此奴等の牙が冴子さんへと向きそうな様相。ハードな展開になりそうですね!