私を覚えてる?(脚本)
〇大広間
貴族「ロワール将軍!」
貴族「本日は受勲おめでとうございます!」
ロワール「皆さん、ありがとう」
ロワール「これからも微力ながら、皇帝陛下のために粉骨砕身つとめてまいります」
貴族「なんて立派な方なんでしょう!」
ロワール「はは・・・いやいや照れますな」
ロワール「ちょっと夜風にあたってまいります」
貴族「ホホ・・・謙虚な方ねえ」
〇城の回廊
ロワール「ククク・・・最高の気分だ」
ロワール「そのへんの下女でもいたぶってやりたいな」
ロワール「お?」
ロワール「・・・ほお」
ロワール「お嬢さん、おひとりかな?」
ティナ「・・・」
ロワール(俺を見てもお辞儀すらしないとは)
ロワール(口がきけない?頭が弱いのか?)
ロワール(好都合だ、そのへんの陰に連れ込んで── ククク・・・)
ティナ「私を、覚えていますか?」
ロワール「は?」
ティナ「私を、覚えてる?」
ロワール「ガッ・・・!?」
ティナ「答えなさい 私を──私の父を──母を──」
ティナ「覚えていますか?」
ロワール「ヒィッ、誰か・・・助け・・・」
ロワール「なんで・・・俺が・・・こんなところで・・・」
ロワール「誰だ・・・誰なんだ貴様は・・・!?」
ロワール「なんで俺がこんな目にあわなきゃならん・・・!!!?」
ティナ「・・・」
ロワール「ア・・・」
ティナ「わけも分からず、あっけなく全てを奪われる・・・」
ティナ「かつて『あなたたち』がしたことでしょう?」
護衛「ロ、ロワール将軍!?」
護衛「大変だ・・・誰か来てくれ!!」
カイン「どうした」
護衛「ストラ卿!! ロワール将軍が・・・」
カイン「これは・・・」
護衛「『黒き風』だ・・・」
護衛「たしか先月はピノ伯爵が犠牲に・・・」
貴族「なんとおぞましい・・・!! 早く犯人を捕まえてくれ・・・!!」
カイン(手に何か握っている・・・?)
護衛「どうされましたか、ストラ卿?」
カイン「いや、なんでもない」
カイン(・・・赤い・・・髪・・・)
カイン(まさか・・・)
〇立派な洋館
──10年前
〇貴族の応接間
???「モントルー公爵!! 謀反の罪で粛清する!!!!」
ロワール「1人も逃がすな!!!!」
護衛「み、皆殺し・・・ですか!? 女や子どもは・・・」
ロワール「殺せ!!!!」
ロワール「──様のご命令だ!!」
〇洋館の廊下
ティナの母「逃げなさい、マルティナ・・・!!」
ティナ「お母様──!!」
〇けもの道
ティナの父「もはやこれまで・・・」
ティナの兄「父上・・・!!」
ティナの父「私がここで奴らを食い止める・・・マルティナを頼んだぞ・・・!!」
ティナの兄「・・・!!」
「イヤ・・・お父様!! お父様──!!!!」
〇黒背景
ティナ「どうして・・・!?」
ティナ「私たちが何をしたというの・・・!?」
ティナ「お父様・・・お母様・・・お兄様・・・みんな・・・」
ティナ「絶対に・・・仇はとるから・・・」
〇英国風の部屋
ティナ「ハア・・・ハア・・・」
ティナ(なんとか戻ってこられた・・・)
ティナ(やっぱり・・・『力』を使うのは 月に1度が限界みたいね)
「おい、ティナ!!」
ティナ「──何!?」
ティナ「今日は客は取らないって言ったはずよ!!」
ティナ(ドレスに血がついたまま・・・!!)
娼館の亭主「──なんだ」
娼館の亭主「準備万端じゃねえか」
ティナ「いったい誰?こんな夜中に」
娼館の亭主「あの子爵令息サマだよ」
娼館の亭主「お前にゾッコンだな」
ティナ「──ハア・・・」
ティナ「わかった。通して」
ティナ「これは貸しだからね」
娼館の亭主「わ~かってるよ 頼んだぜ、稼ぎ頭さん」
〇英国風の部屋
ティナ「まあ、そんな恐ろしい事件が・・・」
ヒュース「そうなんだよ~ もう怖くて怖くて・・・」
ヒュース「ティナに慰めてほしくてさ!! 急にすまなかったね」
ティナ「ティナもヒュース様に会えて嬉しいです」
ティナ「それで・・・犯人は捕まったのですか?」
ヒュース「いや、衛兵も手がかりがないとかぼやいてたよ」
ヒュース「凶器も見つからないし、足跡もない。 まさに『黒き風』──風のようだってさ」
ティナ「不思議ですね・・・ でもヒュース様がご無事でよかった」
ティナ「ヒュース様に何かあったら、ティナは・・・生きていけない・・・」
ヒュース「ああ、僕の心優しき天使・・・」
ヒュース「早く君を僕だけのものにしたいよ・・・」
ティナ「またそんなお戯れを・・・ ヒュース様には奥様がいらっしゃるじゃない」
ティナ「ティナは、こうして時々でも2人きりになれれば十分・・・他に何も望みませんわ」
ヒュース「ティナ・・・!!」
〇英国風の部屋
ティナ(そう・・・こうやって情報とお金を流してくれるだけで十分よ)
ティナ(私は誰のものにもならない)
ティナ(ましてや誰かを愛するなんてことも・・・)
〇黒背景
カイン「ティナ」
ティナ「カイン!!」
お兄様の親友で・・・
会えばいつも優しく笑いかけてくれた・・・
私の・・・初恋のひと・・・
〇けもの道
ティナの兄「カイン・・・!?」
ティナの兄「なぜ・・・お前がここに・・・」
ティナの兄「まさか・・・そなたの父、ストラ侯爵が仕組んだことなのか!?」
ティナの兄「お前まで・・・我が公爵家を裏切ったということか!?」
カイン「・・・剣を構えろ」
ティナの兄「──おのれ!!」
ティナの兄「うおおおお!!」
私は木の陰でかたく目を閉じていた
「グアッ・・・」
ティナ「・・・おにい、さま?」
ティナ「イヤアアア!!」
ザッ・・・
ティナ「ひっ・・・」
ティナ「キャアッ」
ティナ(ドレスが・・・!!)
カイン「・・・」
ティナ(カイン・・・冷たい目・・・)
カイン「・・・お前はここで死ぬんだ」
カイン「1人生き残っても・・・辛いだけだ」
ティナ「・・・!!」
ティナ「・・・!!」
ティナ「──いいえ」
ティナ「私はマルティナ=ラ=モントルー!! 誇り高き公爵家が長女!!」
ティナ「そなたたちの非道には屈しません」
ティナ「いつか必ず・・・一族の墓前にそなたたちの首を据えてみせましょう」
ティナ「その日まで・・・私のことを決して忘れるな!!」
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不穏なシーンから始まるこの物語、目が離せなくてどんどん読み入ってしまいました。ティナの芯の強さは魅力的ですね。彼女の”力”についても気になります!
テイナの精神の強さがとても魅力的でした。家族が殺された事への復讐、最後まで誰にも邪魔されずに成し遂げてほしいと思います。カイン・・・どういう人物なのかまだ明確ではないけど、最終的に味方になってくれるよう願ってます。