わたしに触れないで

結丸

苦悩の人(脚本)

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〇警察署の資料室
  とある警察署、資料室──
立川 将大「・・・・・・」
穂村 真依「あれ、立川さん?」
立川 将大「ああ、穂村か」
穂村 真依「調べ物ですか?」
立川 将大「いや・・・ そういう訳じゃないんだがな」
  真衣は立川の手にしている資料を
  覗き込んだ。
穂村 真依「それって、小学校で起きた火災の・・・」
立川 将大「ああ。 当時、捜査を担当していた」
穂村 真依「そうでしたか・・・」
立川 将大「? どうした、穂村」
穂村 真依「実は私・・・ あのとき現場にいたんです」
立川 将大「えっ──」
穂村 真依「当時は交通安全課に所属していて、 あの日は生徒たちに交通安全指導を していました」
立川 将大「そうか、ではあのときの警察官の中に 穂村もいたんだな・・・」
穂村 真依「ええ・・・」
穂村 真依「私たちがいながらあんな火災が・・・ なのに、多くの方々が──」
穂村 真依「っ、すみません・・・」
立川 将大「いや、いい。 俺のほうこそ思い出させて悪かった」
立川 将大「それに、お前たちは最善を尽くした。 そのことは資料にも書かれている」
立川 将大「だから・・・責めなくていい」
穂村 真依「・・・はい」
立川 将大(あの火災、出火元は給食室で・・・ 運悪く給食室裏にストーブ用の灯油が 置かれていた)
立川 将大(火の勢いは凄まじく、あっという間に 小学校は全焼・・・)
立川 将大(生徒43名、教師5名、調理スタッフ3名が 犠牲になった)
立川 将大(特に調理スタッフの 遺体の損傷は激しく──)
立川 将大(顔はおろか性別の判別が 困難なものもあった)
立川 将大(もちろん、生き残りの方々の傷も 相当なものだったが・・・)
立川 将大「・・・どうも、すっきりしないな」

〇ラブホテルの部屋
爪紅 栞「ね、スッキリした?」
爪紅 覚「こ・・・これは・・・?」
爪紅 栞「お兄ちゃんってば終わった途端に 爆睡なんだから」
爪紅 栞「いっぱい寝て、スッキリしたんじゃない?」
爪紅 覚「待ってくれ。 この状況、一体なん──」
  栞は覚の手に取り、自分の胸に押し当てた。
爪紅 覚「っ!?」
爪紅 栞「あん、振り払わないでよ。 昨日みたいに触って?」
爪紅 覚「昨日みたいって・・・」
爪紅 栞「子供じゃないんだから、 言わなくても分かるでしょ」
爪紅 覚「そ、そんな・・・ 俺は妹になんてことを・・・」
爪紅 栞「いいのよ、お兄ちゃん酔ってたし。 気にしないで」
爪紅 覚「・・・っ・・・」
爪紅 栞「やだ、お兄ちゃん泣かないで」
爪紅 覚「俺は・・・ 人の道に外れてしまった・・・」
爪紅 栞「・・・いいじゃない、人の道なんて」
  栞は呟き、覚の身体に跨った。
爪紅 覚「栞、ダメだ──」
爪紅 栞「何がダメ?」
爪紅 覚「こんなの、許されることじゃない」
爪紅 栞「だね。 他人なら離婚だろうし・・・」
爪紅 栞「でも、血の繋がりがある兄妹なら 一生別れることないよね?」
爪紅 覚「何を言ってるんだ・・・?」
爪紅 栞「他人じゃなければ、一生一緒だよね?」
爪紅 覚「し、栞──」
  栞は覚の言葉をキスで塞いだ。
爪紅 覚「んっ・・・ や、やめてくれ」
爪紅 栞「大丈夫、華奈子さんには秘密にしたげる。 だからその代わりに──」
爪紅 栞「私をお兄ちゃんの恋人にして?」
爪紅 覚「・・・」
  目を閉じた覚から抵抗の気配が消えた。
  やがて栞の腰を両手で掴み・・・
爪紅 栞「ふふ、そうそう・・・」
爪紅 覚「・・・っ・・・」
  覚は観念したように栞を抱き寄せた。

〇幼稚園の教室
爪紅 華奈子「はーい、それじゃみんな お片づけしましょうねー」
保育士「爪紅先生、お電話です」

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