冷徹な人(脚本)
〇病院の待合室
爪紅 華奈子「・・・・・・」
英介・抄子「華奈子ちゃん!」
爪紅 華奈子「あ・・・」
爪紅 英介「覚は!? ビルの屋上から落下したって──」
爪紅 華奈子「植え込みのおかげで助かったそうです」
爪紅 抄子「植え込み・・・」
爪紅 華奈子「両手足の骨折はありますけど・・・ とにかく命に別状はないって」
爪紅 英介「そ、そうか・・・ ひとまず安心したよ」
爪紅 抄子「それにしても、どうして・・・」
栞の声「華奈子さんのせいよ」
爪紅 華奈子「えっ──」
爪紅 栞「お兄ちゃん、悩んでたの。 華奈子さんのことで」
爪紅 英介「華奈子・・・」
爪紅 抄子「どういう意味? 華奈子さんのせいって──」
爪紅 栞「お兄ちゃん、子供がほしいのに 華奈子さんが拒否してるって」
爪紅 華奈子「なっ── 栞ちゃん、何を言ってるの?」
爪紅 栞「あ、もっとハッキリ言ったほうがよかった?」
栞は華奈子に近付き、
耳元で囁いた。
爪紅 栞「「華奈子とのセックスが苦痛だ」 って言ってたわよ」
爪紅 華奈子「──!!」
爪紅 英介「確かに、なかなか子宝に恵まれないとは 思っていたが・・・」
爪紅 抄子「拒否してるなら授かるものも 授からないわね・・・」
爪紅 華奈子「ち、違います! 私・・・拒否なんて──」
爪紅 抄子「あの子は子供好きなのに」
爪紅 英介「それだけじゃない。 男としてのプライドもある」
英介と抄子からの冷たい視線が
華奈子に向けられる。
爪紅 華奈子「そんな・・・ どうして・・・」
爪紅 華奈子「うっ・・・ わ、私・・・そんなこと・・・」
爪紅 栞「泣きたいのはお兄ちゃんよ!!」
爪紅 栞「愛した妻に蔑ろにされて!! いつまで経っても子供が出来ない!! 家に帰っても心が安まらない!!」
爪紅 栞「だから・・・ お兄ちゃんは私の身体を──」
爪紅 華奈子「え?」
爪紅 栞「なんでもない。 さ、お兄ちゃんの病室へ行かなきゃ」
爪紅 華奈子「待って、覚に何をしたの!?」
爪紅 栞「別に?」
爪紅 華奈子「栞ちゃん!!」
華奈子は栞の腕を掴んだ。
爪紅 栞「痛っ!!」
爪紅 華奈子「あなた、覚に──」
爪紅 栞「アンタじゃ勃たないんだってさ」
栞は華奈子を睨みつけ、
低い声でそう言い放った。
爪紅 華奈子「な・・・なんてことを・・・」
爪紅 栞「分かったら離して」
爪紅 華奈子「あ・・・ ま、待って──」
爪紅 英介「華奈子ちゃん」
爪紅 華奈子「お義父さ──」
爪紅 英介「帰ってくれないか」
爪紅 華奈子「・・・え?」
爪紅 英介「申し訳ないが・・・ 今日は家族だけにしてほしい」
爪紅 華奈子「家族だけって・・・」
爪紅 抄子「私達も混乱してるのよ。 とにかく・・・お願い」
爪紅 華奈子「お、お義母さん・・・」
爪紅 華奈子「──っ!!」
華奈子は泣きながら
走り去った。
爪紅 栞(チョロ〜〜〜ッ!!!!!! あんなにすぐ引き下がるなんて)
爪紅 栞(まさか一番厄介な奴が早々に 退場してくれるなんて・・・)
爪紅 栞「神様も捨てたもんじゃないわね」
爪紅 英介「ん? どうした、栞」
爪紅 栞「・・・ううん、なんでもない」
〇おしゃれなリビングダイニング
爪紅 華奈子「はぁ・・・ はぁ・・・」
爪紅 華奈子「うっ・・・ ううう・・・」
〇黒
華奈子とのセックスが苦痛だ
〇おしゃれなリビングダイニング
爪紅 華奈子「・・・・・・」
爪紅 華奈子「もう無理」
華奈子は包丁を手首に当てた。
爪紅 華奈子「・・・っ・・・」
爪紅 華奈子「!」
爪紅 華奈子「・・・はい」
〇田舎の病院の病室
爪紅 覚「・・・」
爪紅 覚「・・・なんだ、生きてるのか・・・」
爪紅 覚「うっ・・・ うう・・・」
栞の声「お兄ちゃん」
爪紅 覚「っ!!」
爪紅 栞「よかった・・・ 目が覚めたのね」
爪紅 覚「栞・・・」
爪紅 栞「ごめんなさい」
爪紅 覚「え?」
爪紅 栞「私が、お兄ちゃんを・・・ 追い詰めちゃったのよね」
爪紅 覚「・・・」
爪紅 覚「栞が悪いんじゃない。 俺が・・・悪いんだ」
爪紅 覚「酔っていたとはいえ、 実の妹を・・・」
爪紅 栞「私は嬉しかったから」
爪紅 覚「え・・・ 嬉しいって──」
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