誰かの所業は怪異に勝る

銀次郎

二つめの怪異(脚本)

誰かの所業は怪異に勝る

銀次郎

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〇散らかった職員室
田村井さん「どーもお世話になりまーす」
中島さゆ「あー田村井さん!」
林多恵「こんにちはー」
田村井さん「ご指定の教材や文具類は、こちらに置いておきますんで、サインだけお願いします」
林多恵「はーい」
田村井さん「なんかいつも忙しそうで大変ですねー」
中島さゆ「まー、でも慣れてますけどね‥あっ!?」
田村井さん「えっ?」
中島さゆ「あのー、田村井さんって、この学校と付き合い長いですか?」
田村井さん「反町第三小とですか? そうですね‥ここだけと言うか、この学区全体ですけど、もう10年は経ちますかね」
中島さゆ「じゃあ‥いろいろ噂話とか知ってる?」
田村井さん「噂話?」
中島さゆ「例えば‥副校長のとか?」
田村井さん「副校長‥」
林多恵「おっ!何かありそうな気配を‥」
田村井さん「いやー、まいったなぁ‥」
中島さゆ「例えば‥離婚とか?」
田村井さん「‥いやー‥まいったなぁ‥」
林多恵「あるんだー!」
中島さゆ「ねえねえ、教えて教えて!」
田村井さん「うーん‥」
中島さゆ「ここだけの話にするからさ!」
田村井さん「‥私から聞いたって言わないで下さいよ」
中島さゆ「言わないです!」
林多恵「です!」
田村井さん「確かに副校長は離婚歴があります」
中島さゆ「やっぱり、バツイチだったんだ」
田村井さん「違いますよ、3です」
中島さゆ「3?」
田村井さん「3回離婚してるんですよ」
中島さゆ「えっ?」
林多恵「バツ3?」
田村井さん「そうなんですよ」
林多恵「そうは見えないなぁ‥」
中島さゆ「その、離婚の理由は副校長の不倫がらみとか?」
田村井さん「いやいや、今回とは違いますよ」
中島さゆ「今回って‥知ってるのね、やっぱり」
田村井さん「あははは‥いやー、まいったなぁ」
林多恵「じゃあ、離婚の原因って、何なんです?」
田村井さん「詳しいことは知りませんが、全部相手に問題があったみたいです?」
中島さゆ「相手に?」
林多恵「そうなのか‥」
田村井さん「まあ、私が知ってるのはこのぐらいで‥くれぐれも私から聞いたって言わないで下さいね?」
中島さゆ「はい、もちろん」
林多恵「内緒にします」
田村井さん「じゃあ、私はそろそろ失礼しますね くれぐれも私から聞いたって‥」
中島さゆ「言わないです!」
田村井さん「あははは‥それじゃ、失礼します」
林多恵「意外な事実を知ってしまいましたね」
中島さゆ「まあ、知ってどうなるものでも無いんでしょうけど」
林多恵「それにしても、何で三井くんのお母さんはこんな事を聞いてきたんでしょうね?」
中島さゆ「ねー?‥っていうかさ、どうする?」
林多恵「何をですか?」
中島さゆ「何をじゃないだろ!赤いコートの女!」
林多恵「あー! 副校長のネタがあまりに刺激的なんで忘れてました」
中島さゆ「忘れないでよ‥で、どうする?」
林多恵「うーん‥とりあえず、明日の下校時に三井君を尾行するってのはどうです?」
中島さゆ「尾行?一緒に下校じゃなくて?」
林多恵「赤いコートの女は三井くんが一人の時にしか出てこないって話だから、まずそれの確認もしたいし」
中島さゆ「でも大丈夫?三井くん、怖がってるんでしょ?」
林多恵「ちゃんと説明しますし、それにもしその女が出てきたら、もうガツって!やってやりますよ!」
中島さゆ「何すんの?ガツって?」
林多恵「うーん、考えてないですけど‥」
中島さゆ「えー、不安‥」
林多恵「まあ、とにかく明日の下校時ってことで、一緒にがんばりましょ!」
中島さゆ「そうだよね、二人で解決だもんね‥」
林多恵「はい!」

〇学校の下駄箱
  翌日の下校時間
三井輝「後ろからついてくるの?」
林多恵「うん、すぐ後ろにいるから」
中島さゆ「で、もし赤いコートの女が出てきたら、すぐこっちに逃げてきてね」
三井輝「うん、わかった‥ でもその後は?」
林多恵「そうしたら、先生がこう、ガツっとね!」
三井輝「ガツ?」
林多恵「そう! そうするから、大丈夫!心配しないで!」
三井輝「ガツって何?」
林多恵「ガツはガツよー 大丈夫、ちゃんと用意してあるから!」
中島さゆ「何かあるの?」
林多恵「まあ、まかせて下さいって!」
三井輝「(心配だなぁ‥)」
中島さゆ「(心配だなぁ‥)」

〇通学路
三井輝「先生、ちゃんとついて来てるかなぁ‥」
林多恵「それにしても、ほんとに出てくるんですかねー」
中島さゆ「これ、出てこなかったらどうなるの?」
林多恵「それは、やっぱり、出て来るまで‥」
中島さゆ「繰り返すの?」
林多恵「繰り返し‥ます?」
中島さゆ「聞き返されても‥」
林多恵「だってー、どうしていいか分かんないですよー、こんな都市伝説みたいな話」
中島さゆ「ねえ?そう言えば、さっき何か用意してあるって言ってたじゃない?それなに?」
林多恵「あー、それですか? 実はちょっと昨日の話を思い出して」
中島さゆ「昨日の話?」
林多恵「ほら、例の『さとり』が出た時の話 あれを思い出して、もしかしてって‥ 先生?」
中島さゆ「‥‥」
林多恵「どうしたんですか?」
中島さゆ「あっ‥あれ!」
林多恵「えっ? あっ!」
三井輝「あっ‥あっ‥」

〇通学路

〇通学路
中島さゆ「三井くん! こっちに来て!」
林多恵「早く!早く!!」
三井輝「うわー!」
中島さゆ「三井くん!ほら、先生の後ろに隠れて」
三井輝「うん」

〇通学路

〇通学路
中島さゆ「うわぁ‥ほんとにいたよ‥」
林多恵「ですね‥」
中島さゆ「三井くんにしか見えない、想像上の何かかと思ってたのに‥」
三井輝「そんなことないよ!ほんとにいるんだよ!」
中島さゆ「そうだよね、ごめんごめん とにかく後ろにいて!」
林多恵「近寄ってきますね‥」
中島さゆ「どうする?‥って言うか、 対策あるんでしょ?」
林多恵「まあ、一応は」
中島さゆ「一応って‥大丈夫なの?」
林多恵「まあ、ガツってやってやりますよ!」
中島さゆ「またそれかよ‥」

〇通学路
林多恵「ちょっと、あなた!何ですかいったい?」
赤いコートの女「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな 近づくな‥」
林多恵「だいたい!もうコートの季節じゃないじゃないですか?」
中島さゆ「(えっ?何を言ってるんだ‥)」
赤いコートの女「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな‥」
林多恵「しかもそんな赤いコートを着て!! いいですか!?赤いコートはコーディネートが難しいんです!!」
赤いコートの女「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づく‥」
林多恵「いい?赤いコートの魅力はね、何と言ってもそのドラマチックな存在感にあるの!」
赤いコートの女「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな 近づくな 近づくな‥」
林多恵「着るだけであなたをドラマのワンシーンの中に、そう、別世界に連れて行ってしまう!まさに異世界転生ファッション!」
赤いコートの女「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな 近づくな‥」
林多恵「そんなアイテムだからこそ、無職だろうが、ニートだろうが、おじさんだろうが、 着こなせた時の充実感は特別なモノなのよ!」
中島さゆ「(林先生は何を語ってるんだ‥)」
赤いコートの女「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな近づくな‥」
中島さゆ「(なぜか赤いコートの女が怯んでいる‥)」
林多恵「もしかして、赤いコートを若いときの特別な一枚と思っているんじゃないかしら?」
赤いコートの女「近づくな 近づくな‥」
林多恵「だけどね、違うの‥年齢を重ねて、深みが出てきた大人の女性がもっとも似合うものなのよ」
赤いコートの女「近づく‥‥!!」
林多恵「でもそんな特別な赤いコート、コーディネートをする時はちょっと力んでしまいがち!だけどそんな必要はまるで無いの」
赤いコートの女「‥‥」
林多恵「例えば、クラッシュ加工をされたダメージデニムと合わせたカジュアルコーデなんてどう?」
赤いコートの女「ああ‥」
中島さゆ「(‥感心している)」
林多恵「普段はなかなかチャレンジできない組み合わせだけど、思い切ってやってみて!」
赤いコートの女「‥‥」
中島さゆ「(メモをしているのか‥)」
林多恵「他にも、ガーリーに白地の花柄ワンピースを合わせた甘辛ミックスコーデなんてのも素敵!」
林多恵「ダメージデニムから花柄ワンピの2パータンなんて、このギャップにきっと彼も夢中になるはずよ!」
赤いコートの女「うんうん」
中島さゆ「(‥‥)」
林多恵「でも特別な時には‥赤いコートの下には何も着ないセクシーコーデ‥ なんてのも、またよし!」
赤いコートの女「キャー!!」
中島さゆ「(‥下ネタじゃねえか‥)」
林多恵「だからこそ!そんな特別な赤いコートを‥赤いコートを‥子供をおどす時に着るなんて許せないよ!」
赤いコートの女「‥‥」
中島さゆ「(お前はこれで説得されていいのか‥ あっ?)」
中島さゆ「ねえ、ちょっと!」
林多恵「えっ?」

〇通学路
赤いコートの女「‥‥」
田之上樹里「‥‥」
赤いコートの女「‥‥」
田之上樹里「‥‥」
赤いコートの女「‥‥」

〇通学路
中島さゆ「もしかして‥田之上先生?」
林多恵「えっ?えっ?うそでしょ?」
田之上樹里「‥」
赤いコートの女「‥」
中島さゆ「だって‥田之上先生‥ですか?」
赤いコートの女「ちか‥づく‥な‥」
中島さゆ「あっ‥」
林多恵「えー‥」
中島さゆ「消えちゃった‥」

〇通学路
林多恵「これって‥やっぱり、妖怪とか幽霊とか‥」
中島さゆ「幽霊って‥だって、田之上先生、まだ生きてるでしょ‥?」
三井輝「先生、赤いコートの人、やっつけてくれたの?」
林多恵「えっ? う、うん! ばっちり!  ちゃんとねガツっと言ってやったから」
中島さゆ「(あれがガツだったのか‥)」
三井輝「わー、ありがとう、先生!」
林多恵「よし、じゃあお家まで送るよ お母さんにも説明しないといけないしね」
三井輝「はーい!」
中島さゆ「いいのか、これで?」
  続く

次のエピソード:あの人の過去に起きたこと

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