真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

08/悪魔(脚本)

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不安狗

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〇コンビニのレジ
コロン「その人、大丈夫ですか?」
  「え?」
久野フミカ「・・・・・・コハク」
  久野が、こちらを見た。
久野フミカ「ねえコハク、私の手が、ボロボロで、服も、ボロボロで・・・・・・」
  久野が、こちらを見ている。
久野フミカ「コハクが・・・・・・すごくおいしそうなんだけど・・・・・・」
  「おい、久野・・・・・・?」
久野フミカ「ねえコハク・・・・・・」
  「・・・・・・」
久野フミカ「・・・・・・コハクのこと、食べても良い?」
  「は・・・・・・?」
  思わず後退りする。
  その拍子に、いつの間にか背後にいたコロンが、僕を背中から包み込むように抱き留めた。
コロン「先輩・・・・・・どうぞ」
  その手には、金の銃があった。
  「これ・・・・・・」
コロン「先輩の鞄から、先程返して頂きました」
  コロンがそっと、僕の手にその銃を握らせる。
  そして僕の右手を両手で支えながら、銃口を、目の前の久野に向けた。
コロン「ですが今は、先輩にお貸しします」
コロン「だって・・・・・・」
  耳元ではっきりと、コロンが囁いた。
コロン「ご両親の、仇でしょう?」
  「・・・・・・」

〇シックな玄関
  その瞬間フラッシュバックしたのは、僕の家の玄関に転がっている二人の人間の死体と、
  それに食らいついている一人の人間の映像だった。
  その死体は僕の両親で、それを頬張っているのは、久野だった。

〇コンビニのレジ
コロン「先輩から家族を奪った、先輩の日常を奪った張本人が、目の前にいるんですよ?」
  ・・・・・・そうだ。思い出した。
  僕の両親は、食われたんだ。
久野フミカ「とっても、おいしかったから・・・・・・」
  今目の前にいる久野に、食われたんだ。
久野フミカ「コハクのお父さんも、お母さんも、おいしかったから・・・・・・」
  久野が足を引きずりながら、一歩一歩近づいてくる。
久野フミカ「だからコハクも・・・・・・きっとおいしい」
  視界の隅に、銃がちらつく。
  背後のコロンが、また囁く。
コロン「さあ先輩、あなたが決断する時です」
  「・・・・・・」
  だとすれば、今の僕に、できることがあるとすれば。
  「・・・・・・」
  そして僕は、コロンの両手を振り払って右手の銃を、自分のこめかみに突きつけた。
コロン「え?」
久野フミカ「・・・・・・あっ、ダメ!」
  我に返った久野が駆け寄る前に引き金を引く。
  そして、気の抜けた音が響いた。
  やはり銃に、弾は入っていなかった。
久野フミカ「・・・・・・」
  久野がその場に座り込んだ。肌の色が、肌色に戻っていく。
  僕は銃をその場に捨てた。
  コロンの声だけが、冷たく響く。
コロン「先輩。それがあなたの決断ですか」
  「・・・・・・」
コロン「そしてその決断が、彼女に悪魔の嘘を思い出させた、と」
  「・・・・・・悪魔の嘘?」
コロン「はい。この世界はその昔、神様の残酷な試練で出来ていました」
コロン「それを塗り潰したのが、我々悪魔の優しい嘘」
コロン「それを彼女は、思い出したのです」
  「えっと、僕にもわかる言葉で、お願いしても?」
コロン「わかりました。では」

〇黒背景
  突然周囲が、真っ暗になった。
  「え」
コロン「ゲームオーバーです、先輩」
コロン「プレイヤーであるあなたが、死を選んだのですから」

〇古いアパートの一室
  「・・・・・・」
  七月九日、朝の七時過ぎ。いつもの寝室。
  僕は目覚まし時計の音で、目を覚ました。
  「・・・・・・え、夢オチ?」

次のエピソード:09/弟

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