姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

最終話 愛と幸せの王国(脚本)

姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

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〇噴水広場
  それから5年──
  イデアル王国には、
  穏やかな空気が流れていた。
カイル王子「すごーい!パパの銅像だ!」
カレン「ええ、そうね」
カイル王子「なんて書いてあるの?」
カレン「“この地に愛と幸せの平和を築きし勇者、 ジーク=イデアル”」
カイル王子「勇者・・・」
カイル王子「パパ、かっこいいね」
カレン「でしょう?とっても格好良かったのよ」
カレン「本当に・・・」
  今日は銅像の除幕式。
  王国に平和をもたらした功績を称え、
  ジークの銅像が広場に建てられたのだ。
町人「あら、プリンセスにカイル王子!」
町人「どうだ?銅像かっこいいだろ?」
町人「なんせ、本人の5割増のカッコよさで作ったからな!」
町人「いや、8割増しだろ? しばらく見ないもんなぁ、こんな怖い顔!」
町人「本当・・・」
???「どれが本人の8割増しだって?」
カイル王子「パパッ!!」
ジーク王子「カレン、カイル!」
ジーク王子「悪いな、決裁案への署名が終わらなくて」
カレン「ううん、早く見たいって予定より早く王宮を出たのは私たちだから」
  あの日、
  グロース帝国に辿り着いたジークは──

〇謁見の間
グロース帝国皇帝「王子自ら、ここに赴いたというのか?」
ジーク王子「左様にございます」
ジーク王子「我が名はジーク=イデアル」
ジーク王子「イデアル王国の、第一王子にて軍の統帥者」
ジーク王子「この度の戦い、 こちらに勝機はないと見込みました」
ジーク王子「無意味な戦争を、もう終わりにしたいと──」
ジーク王子「そのためにこの命、差し出すつもりです」
グロース帝国皇帝「無意味などではない!」
ジーク王子「な・・・っ!」
グロース帝国皇帝「どうして私が復讐に乗り出したのか、そなたには分かるのか?」
ジーク王子「4年前の私の、こちらの反撃のせいだと心得ております」
ジーク王子「あれは、私も不本意なことでした」
ジーク王子「そちらの兵士にも、多大な数の負傷者を生み──」
ジーク王子「無意味な死を遂げさせてしまった者もいます」
ジーク王子「争えば、血が流れる。 誰かが傷つけば、誰かが悲しむ」
ジーク王子「私は、もう誰も傷つけたくない」
ジーク王子「もう、誰も傷つかない未来を──」
グロース帝国皇帝「黙れ!」
グロース帝国皇帝「あの中にはな、」
グロース帝国皇帝「あの中には、私の息子がいたんだ!」
グロース帝国皇帝「私は、あの場所で何もかも失った!」
グロース帝国皇帝「フレディ・・・」
グロース帝国皇帝「私の大切な、息子だ・・・」
ジーク王子(フレディ・・・!?)
グロース帝国皇帝「弱気で優柔不断な男だった」
グロース帝国皇帝「だから、戦争というものをこの肌で体感させ──」
グロース帝国皇帝「勝利をつかむ瞬間を、見せてやるつもりだった」
グロース帝国皇帝「だが、そなたのせいで全て台無しだ!」
グロース帝国皇帝「息子を、帝国の後継者を失わせた──」
グロース帝国皇帝「そなたはこのグロース帝国にとって忌まわしい人物」
グロース帝国皇帝「だからこそ、私はこの復讐で──」
ジーク王子「待ってください!」
ジーク王子「フレディは・・・フレデリックは、リーベン姓を名乗り王国で生きています!」
グロース帝国皇帝「何?」
ジーク王子「あの日、──ブルートを私が焼いてしまった日」
ジーク王子「私は生き残った民を助け、王都の端に住めるよう手を回しました」
ジーク王子「敵兵も、味方も関係ない」
ジーク王子「あそこにいた人はみな、死を恐れ、震えていた──」
ジーク王子「だから、私は怯えるフレデリックと名乗る兵士も助けました」
ジーク王子「もし、彼が──」
グロース帝国皇帝「それは、誠か?」
ジーク王子「はい。彼は今、王都の端の孤児院で、」
ジーク王子「ブルートの民と共に暮らしており──」
???「父上!」
グロース帝国皇帝「フレディ・・・?」
グロース帝国皇帝「本当にお前なのか・・・?」
  突然現れたフレディは、
  呆然とする皇帝に向かってうなずいた。
  そして、ジークに向き直りひざまずく。
ジーク王子「フレディ、どうしてここに!」
フレデリック(恋愛小説家)「ウェルナーさんから降伏すると聞き、戻ってまいりました」
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子、今まで貴方を騙していた非礼、深くお詫びいたします」
フレデリック(恋愛小説家)「私はグロース帝国の第1皇子、フレデリック=グロース」
フレデリック(恋愛小説家)「貴方の勇気ある行動に感化されました」
フレデリック(恋愛小説家)「逃げているだけでは、ダメなんだ、と」
  フレディはもう一度皇帝に向き直り、ジークよりも深く頭を下げた。
フレデリック(恋愛小説家)「父上、私からもお願いです。 この度の戦争は、終わりにすべきです」
フレデリック(恋愛小説家)「傷付け合い、憎しみを産み出す戦いなんて、誰も望んでいません」
フレデリック(恋愛小説家)「・・・戦地はとても怖いところです」
フレデリック(恋愛小説家)「目が合えば、やるかやられるか」
フレデリック(恋愛小説家)「でも、ジーク王子だけは違った」
フレデリック(恋愛小説家)「怯み、逃げ、泣き出した僕に手を差し伸べ──」
フレデリック(恋愛小説家)「自身の理想を、教えてくれました」
フレデリック(恋愛小説家)「望むのは、誰もが笑い幸せに暮らす未来」
フレデリック(恋愛小説家)「人の命は、尊いのです」
フレデリック(恋愛小説家)「ですから──」
  皇帝はため息を漏らすと、目尻を下げた。
  その優しい眼差しは、凍っていた空気を溶かすようにジークに向けられる。
グロース帝国皇帝「"氷王子”・・・噂とはだいぶ違う人物のようだな」
ジーク王子「噂とは独りよがりなものです」
ジーク王子「私は、弱く、脆い」
ジーク王子「でも、そんな私を強く支えてくれる者がいた──」
ジーク王子「それだけで、私は自身の想いを貫くことができたのです」
グロース帝国皇帝「ひとつ問いたい」
ジーク王子「何なりと」
グロース帝国皇帝「そなたが、平和を望む理由は何だ?」
ジーク王子「それは──」

〇美しい草原
ジーク王子(幼少期)「王子様とお姫様は、」
カレン(幼少期)「そして二人の国の国民は──」
「いつまでも幸せに暮らしました!」

〇謁見の間
ジーク王子「幼い頃にした、しがない約束です」
グロース帝国皇帝「ほう?」
ジーク王子「国民が、愛と幸せに溢れ──」
ジーク王子「笑顔でいられる国を作ろうと、約束した者がいました」
グロース帝国皇帝「それは・・・そなたの大切な人なのだな」
ジーク王子「はい?」
グロース帝国皇帝「優しい顔をしておったよ、ジーク王子・・・」
グロース帝国皇帝「そうか、ジーク王子も人の子」
グロース帝国皇帝「私は何に怯え、何を取り戻そうとしていたのだろうな・・・」
グロース帝国皇帝「ジーク王子、1つ、提案がある」
グロース帝国皇帝「──和平条約を、結ぼうじゃないか」
ジーク王子「え・・・」

〇噴水広場
カレン(こうして、我がイデアル王国とグロース帝国は和平条約を結んだって話)
カレン(その間、私は待つことしかできなかったけれど──)
ハンナ「いいえ、姫様は待っていただけじゃないですわ!」
ハンナ「しっかり、ご自身の足で、ご自身の言葉で、国民の誤解を解くのに奔走したじゃないですか!」
ハンナ「姫様のジーク王子への愛、たっくさんの国民に伝わって──」
カレン「ハンナ!」
カレン「その話は、恥ずかしいからなしなし!!」
カレン「っていうか、ハンナだってウェルナーと・・・」
ハンナ「あーあーあーあー」
ハンナ「何も聞こえないですわ、姫様!」
カレン「あー、もう!」
カイル王子「あ、ウェルナー!」
ウェルナー(専属護衛)「ん?」
ハンナ「あぁ!!」
ウェルナー(専属護衛)「何でしょうぼっちゃん?」
カイル王子「ウェルナー、あのさ、」
カイル王子「ハンナにフラれるなよ!」
ウェルナー(専属護衛)「心配には及びませんよ、ぼっちゃん」
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ殿は、私の最愛の人」
ウェルナー(専属護衛)「いつだって、隣で支え合っていこうと、誓った仲なのです」
  ウェルナーはぐっとハンナの腰を抱き寄せた。
ハンナ「もう!カイルぼっちゃんはおませさんなんだから!」
カイル王子「ハンナとウェルナーが幸せそうで良かったな、ママ、パパ!」
カレン「ええ、そうね」
ジーク王子「そうだな、ところで──」
ジーク王子「本物の方が5割増でカッコよくないか?」
カイル王子「どっちもかっこいいよ!」
???「おーい、王子夫妻☆」
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子、この度は式典へのお招きありがとうございます」
ジーク王子「とんでもない」
ジーク王子「我がイデアル王国とグロース帝国の、友好のしるしだ」
???「フレディ〜」
孤児院の子ども「あのねあのね、ジーク王子とプリンセスが頑張ってくれたから──」
孤児院の子ども「僕たち、ブルートの街に住めることになったんだよ!」
孤児院の子ども「フレディも遊びに来てね!」
フレデリック(恋愛小説家)「うん、必ず」
  街中に、笑い声が響いた。
  ここは、平和な、愛と幸せに包まれた王国。
  そして二人は、愛と幸せに溢れた王子様とお姫様。
カレン「ねえ、ジーク?」
ジーク王子「何だ?」
カレン「今なら言えるかな?」
ジーク王子「・・・ああ」
「王子様とお姫様は、そして二人の国の国民は──」
カイル王子「あー、それ、僕知ってるよ!」
カイル王子「ママが読んでくれたお話の最後のところでしょ?」
ジーク王子「カイル、続きは?」

〇空
カイル王子「いつまでも幸せに暮らしました!」
  姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です
  
  おしまい

コメント

  • 完結おめでとうございます。全話のラストでどうなることかと思いましたが、ハッピーエンドを迎えられてよかったです。愛と幸せの物語をありがとうございました。

  • 長編完結お疲れさまでした!😆
    途中どうなるかハラハラしましたが、素敵なハッピーエンドでよかったです✨
    ホロリと泣かされてしまいました😢
    朝永さんの物語が読めてよかった。
    ありがとうございます😊

  • まさか、まさかの展開でしたが。
    うわあぁぁぁーん!ハッピーエンドで良かったよー!
    ハンナも最後まで最高でした!
    終わらないでー!もっと読みたいー(ノ_<)

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