死神はビギナーを嗤う

坂井とーが

3話 ホストクラブ(脚本)

死神はビギナーを嗤う

坂井とーが

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〇玄関の外
木村早苗「元、婚約者・・・!?」
高橋加奈子「あなたは琉生の何? 琉生はまだここに住んでいるの!?」
  私は琉生の何・・・?
木村早苗「私は木村早苗といいます。 琉生はもう出ていってしまって・・・」
高橋加奈子「入れ違いか! やっと居場所を突き止めたのに!」
木村早苗「どうして琉生を探してるんですか?」
高橋加奈子「決まってるでしょ。琉生に騙された――結婚詐欺にあったからよ!」
高橋加奈子「どうせあなたもそうなんでしょ?」
木村早苗「私は投資詐欺でした。株の才能があると言われて、お金を用意したところを・・・」
高橋加奈子「そう。少し手口を変えたのね。 私も琉生から株を教わったことは同じ」
高橋加奈子「婚約していたからって、口座情報を共有したら・・・全部持っていかれたわ」
木村早苗「やっぱり琉生は、詐欺師なんですね。 何かの間違いじゃなく・・・」
高橋加奈子「そうよ。だから私は、こうして琉生を追ってる」
高橋加奈子「警察に捕まる前に、あの綺麗な顔をボコボコにぶん殴ってやるためにね!」
木村早苗「その気持ち、わかります!」

〇マンションの共用廊下
安田千佳(いやいやいや! 被害者同士で意気投合してるって、どんな状況よ!?)
安田千佳(・・・一応、神山さんに報告しておくべき?)
  おかけになった電話番号は現在──
安田千佳(・・・)
安田千佳(もう知るか!)

〇玄関の外
高橋加奈子「あなた、何か手掛かりだけでも知らないの?」
木村早苗「いえ。同棲してすぐに逃げられましたから・・・」
木村早苗「加奈子さんには何も心当たりがないんですか?」
高橋加奈子「あったら最初に当たってるわよ」
高橋加奈子「琉生は私の近くにいながら、個人情報を何も明かさなかった。全部、偽りだったのよ」
木村早苗「個人情報といえば・・・」

〇高級マンションの一室
神山琉生「実は俺、病気で肝臓が悪くて、あまり脂っこいものを食べられないんだ」

〇玄関の外
高橋加奈子「肝臓!? 私は聞いてないわ。 ただ、健康に気を使っているとだけ・・・」
木村早苗「じゃあ、私に嘘を?」
高橋加奈子「いいえ。そんな嘘をつく理由がない」
高橋加奈子「でも、どうして私には隠していたの?」
木村早苗「もしかしたら、私の頭が悪いから油断してたのかも・・・」
高橋加奈子「私ならその情報から何か推理できるのかしら」
高橋加奈子「肝臓を壊す──ウイルス性肝炎・・・? でも、それで特定は不可能ね」
木村早苗「あ、お酒を飲み過ぎたとか?」
高橋加奈子「そんなはずないわ。琉生、お酒は1滴も飲めないって言ってたもの」
木村早苗「やっぱり、これだけの情報からじゃ何もわかりませんよね」
高橋加奈子「うーん。私にはわかるかもしれなくて、早苗さんには想像がつかないこと・・・」
高橋加奈子「わかったわ!」
高橋加奈子「琉生はお酒が飲めない体質じゃなくて、肝臓を壊したから飲めなくなったのよ!」
高橋加奈子「琉生ほどのイケメンが肝臓を壊すほど飲んだとなれば、推定できる職業は──」

〇歌舞伎町
高橋加奈子「ホストクラブ!!」

〇マンションの共用廊下
安田千佳「ホストクラブ・・・って!?」
木村早苗「千佳、ちょうどよかった! 手伝って!」
安田千佳「ええええ!?」

〇綺麗な部屋
安田千佳(変なことになっちゃったなぁ・・・)
安田千佳「それって、ただのネットストーカーだよね」
高橋加奈子「捜索活動よ。琉生が本当にホストだったなら、お店の写真が残ってるかもしれない」
木村早苗「ホストクラブまとめサイト、ア行からヤ行までにはありませんでした」
高橋加奈子「ホストクラブ裏掲示板、『神山』、『琉生』で検索10年分もハズレよ」
高橋加奈子「まだホストブログ投稿サイトが手付かずだわ。千佳さんも手伝って!」
安田千佳「私も!?」
高橋加奈子「琉生は写真嫌いだから、顔を隠してるかもしれない。髪の色にも気をつけて」
安田千佳「いえ、私はそろそろ・・・」
木村早苗「見つけた!」
「えっ!?」
木村早苗「このホストクラブの5年前の写真に写り込んでるのって──」
高橋加奈子「琉生!?」
安田千佳「ほんとだ! よくこんなの見つけたね!」
木村早苗「執念よ!」
木村早苗「千佳、加奈子さん、突撃しましょう!」
高橋加奈子「もちろんよ!」
安田千佳「いや、私パスで!」

〇歌舞伎町
木村早苗(勢いで来てしまったものの)
木村早苗(こんな場所、初めて・・・)
木村早苗「あの、ホストクラブって、ぼったくられたりしないんですか?」
高橋加奈子「そんなことされたら、弁護士でも警察でも呼んでやるわ!」
木村早苗(頼もしい・・・)
男「あっ、可愛いお姉さんだ!」
木村早苗「はい!?」
男「今から遊びに行くの?」
木村早苗「えっと、ホストクラブに・・・」
男「えー、意外! それならさ、いい店紹介するよ」
木村早苗「いえ、そういうのじゃなくて・・・」
高橋加奈子「ストッープ!」
高橋加奈子「知らない人に話しかけられても無視! ほら行くよ!」
木村早苗「は、はいっ」

〇繁華な通り
木村早苗「すみません、ご迷惑をおかけして・・・」
高橋加奈子「いいわよ。あなたがいなければ、ここまでたどり着かなかったんだから」
高橋加奈子「落ち込んでる暇はないわ。さぁ、ここよ」

〇謎の扉

〇ホストクラブ
木村早苗(きゃー! ほんとに来ちゃった!)
ホスト「ようこそおいでくださいました、姫様」
木村早苗「姫様!?」
高橋加奈子「私たちは客じゃないわ。昔ここで働いていた、琉生という男のことを聞きに来たのよ」
ホスト「少しお待ちください。オーナーをお呼びします」
オーナー「私は当店のオーナーの御堂吹雪(みどう ふぶき)と申します」
オーナー「お客様は警察の関係者でしょうか?」
高橋加奈子「──違うわ」
オーナー「でしたら、何もお話しできることはありません」
木村早苗(そうよね。突然訪ねて、個人情報を教えてもらえるわけ・・・)
高橋加奈子「ただでとは言ってないでしょ。このお店で一番高いシャンパンをちょうだい」
木村早苗「ええええっ!?」
オーナー「そういうことでしたら、VIPルームへご案内します」

〇ホストクラブのVIPルーム
木村早苗(すごい・・・!)
木村早苗(って、驚いてる場合じゃないわ)
木村早苗「あの、加奈子さん。あんな大金を払って大丈夫なんですか?」
高橋加奈子「私はこの復讐に人生をかけてるの。 金に糸目はつけないわ」
オーナー「復讐とは、穏やかじゃありませんね」
高橋加奈子「私だけじゃないはずよ。 あの詐欺師に騙された女は・・・」
オーナー「騙したのではありません。 彼は女性に夢を見せてあげたのです」
高橋加奈子「夢ですって?」
オーナー「ええ。つらく悲しい現実をひと時でも忘れられたら、それは素敵なことでしょう?」
高橋加奈子「そんなこと望んでないわ!」
木村早苗「私もです!」
オーナー「本当に?」
オーナー「あなた方も心の底では、琉生の見せる甘い夢に浸っていたかったのでは?」
高橋加奈子「論点をずらさないで! 私たちは琉生を探してるのよ!」
オーナー「そうでしたね。しかし、琉生の居場所がわかるなら、真っ先に通報していますよ」
高橋加奈子「手掛かりでいいのよ。琉生の本名は? 出身は? 前職は?」
高橋加奈子「何か知っているでしょう!?」
オーナー「そうですね。シャンパンのお代の分くらいは、お話ししましょう」
オーナー「彼の本名は、中川琉生といいます」
木村早苗「『琉生』は本名・・・!?」
オーナー「琉生は自分の名前を大切にしていました」
オーナー「なんでも、亡くなった母がつけてくれた名前だそうで」
オーナー「聞けば、中学を出てすぐに両親が他界して、お金には相当困っていたようですね」

〇ホストクラブ
オーナー「この店の面接に来たときの琉生は、20歳の苦学生でした」
琉生「俺を雇ってください! 何でもします!」
オーナー(むしろ、こっちの方からスカウトしたいね)
オーナー「どうしてホストをやろうと思ったのですか?」
琉生「お金のためです。 親の残した借金があって──」
オーナー「それは、真っ当なところから?」
琉生「・・・いいえ」
オーナー「でしたら、おそらく法的な返済義務はないでしょう」
琉生「知っています」
オーナー「ということは、弱みでも握られましたか?」
琉生「そんなところです」
オーナー「脅されてお金を払っても、終わりはないと思いますが」
琉生「・・・」
オーナー(なんだ、このギラついた目は)
オーナー「もう一度聞きます。借金返済のために働きたいというのは本当ですか?」
琉生「俺、借金があるとは言いましたけど・・・」
琉生「『返済したい』とは一言も言ってませんよ」
オーナー「──ハハッ」

〇ホストクラブのVIPルーム
オーナー「店に迷惑はかけないというので、その場で採用しました」
オーナー「若いのに、骨のある奴だと思いましたね」
オーナー「親からの経済的な支援もない中、自力で高認試験を受けて大学に入ったのだとか」
オーナー「学のない私でも、それがどれほど大変なことかわかりますよ」
「・・・」
木村早苗「借金を返済せずに、琉生はどうしたんですか?」
オーナー「そのことについて、琉生は多くを語りませんでした」
オーナー「ただ、ある日の営業後──」

〇ホストクラブ
  店に、血だらけの琉生が戻ってきたのです

次のエピソード:4話 琉生の過去

コメント

  • ここにきて琉生の背景が気になってきましたね。
    それにしても被害者仲間が心強すぎる!シャンパンいくらなんだろう💦

  • 作者コメントそのままTapNovelに出来るんじゃないか…。

    さてさて、琉生にはたどり着くのか、たどり着いたとして、どう復讐するのか見物ですね。

  • 2人が組んで彼を追いかける…なんか予想外の展開になってきましたが…しかし加奈子さんのほうはすごい行動力ですね。
    …でも後書き読むと、そっちのほうが気になってしまいます(笑)

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