死神はビギナーを嗤う

坂井とーが

4話 琉生の過去(脚本)

死神はビギナーを嗤う

坂井とーが

今すぐ読む

死神はビギナーを嗤う
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ホストクラブのVIPルーム
高橋加奈子「血だらけの琉生が戻ってきたって、どういうこと!?」
オーナー「私の方でも、詳しい事情はわかりませんが・・・」

〇ホストクラブ
オーナー(今日の売り上げもなかなかだな)
オーナー「誰だ!?」
琉生「吹雪さん・・・」
オーナー「琉生!? こんな時間にどうした?」
琉生「――俺、」
オーナー「怪我してんじゃねぇか!」

〇ホストクラブ
オーナー「見せてみろ!」
オーナー「女にでも刺されたのか?」
琉生「――そんなところです」
オーナー「嘘つけ! 1人にやられた傷じゃねぇだろ!」
オーナー「取り立て屋か!?」
琉生「まぁ・・・」
オーナー「だったら、警察沙汰にしてやれ。 お前に後ろ暗いところはないんだろ」
琉生「なんでそう思うんですか?」
琉生「――あと1人」
琉生「これは俺の復讐なんだ」
  それ以上は、問い詰めても話しませんでした。
  ここからは私の想像ですが──

〇ボロい倉庫の中
  琉生は借金の取り立てに追い詰められた末
  そいつらを非合法な手段で
  返り討ちにした可能性があります

〇ホストクラブのVIPルーム
高橋加奈子「まさか」
オーナー「しかし、そうとしか考えられないのです」
オーナー「あの日以来、琉生が取り立てに追われている様子はなくなったのですから」
木村早苗「それで、そのあと琉生はどうしたんですか?」
オーナー「どうしたと思います?」
木村早苗「借金問題が解決したから、ホストをやめたとか?」
オーナー「そう簡単にはいきませんよ」
オーナー「生活苦にあえいでいた学生が、毎月何百万もの大金を手にするのです」
オーナー「・・・やめられるわけがない」

〇ホストクラブ
オーナー「今月のナンバーワンは──」
オーナー「琉生だ!」
琉生「ありがとうございます!」
琉生「支えてくれた姫様には必ずお礼をするので、期待していてください!」
  愛を金で割り切れる奴なら
  よかったのかもしれません
  しかし、琉生にはそれができませんでした──

〇ラブホテル

〇ホストクラブ
ホス狂い「なんで返信に27分もかかったの!?」
琉生「ごめん。大学の授業中だったんだ」
ホス狂い「そんなの知らない! 授業中でもスマホは見れるでしょ!」
琉生「いや、そういうわけには・・・」
ホス狂い「言い訳なんて聞きたくない!」
琉生「ちょっと、落ち着いて!」
ホス狂い「先月ナンバーワンになれたのは誰のおかげ?」
ホス狂い「あたしがお金使ったからだよね! その分、あたしを優先してよ!」
琉生「もちろん、キミには感謝してる。 でも、お金のことは無理しないで」
ホス狂い「違うの! そんな言葉が聞きたいんじゃない!」
ホス狂い「あたしを琉生の一番にして。 愛してるって言ってよ・・・」
琉生「・・・」
琉生「俺、嘘はつきたくないから──」
ホス狂い「なんなのよ! もうイヤアアアア!!」

〇ホストクラブ
女「金が欲しけりゃ、アタシの靴を舐めなさい」
琉生「ずいぶん酔っていらっしゃるようで・・・」
女「琉生、愛してる」
琉生「ありがとう。嬉しいよ」
女「琉生、チューしよ!」
琉生「みんな見てるから、恥ずかしいな」
女「つき合ってくれないなら、琉生の秘密バラしてやる」
琉生「そういうのやめてくれる?」

〇手
  琉生、琉生、琉生!

〇謎の扉
オーナー「琉生、あまり客のことを真剣に考えるな」
琉生「でも、彼女たちは本気なんです。 俺も本気で応えないと・・・」
オーナー「お前はまじめすぎるんだ。 客のことは、うるさいATMだと思え」
琉生「そんなことできません! 彼女たちにも人生があるんですよ!?」
オーナー「はぁ。お前、向いてねぇな・・・」

〇ホストクラブのVIPルーム
オーナー「そしてある日、琉生の人生を揺るがす決定的な事件が起こりました」
オーナー「おっと、シャンパンがなくなってしまいましたね」
オーナー「残念ですが、お話はここまでということで」
「ええええ!?」
高橋加奈子「いいところまで話しておいて、それはないでしょ!」
木村早苗「続きを聞かせてください!」
オーナー「お客様、ここはあくまで『飲食店』ですよ?」
オーナー「『飲み物』なしで居座るのはいかがなものかと」
「・・・」
オーナー「そういえば、近くに24時間営業の街金がありますが・・・」
高橋加奈子「ああ、もう! わかったわよ!」
木村早苗「ええっ!?」
オーナー「まいどあり~」
オーナー「さて、決定的な事件の話でしたね」

〇大学の広場

〇講義室
琉生「はぁ。そろそろ本気で単位がヤバイ」
友人「きのうも遅くまでバイトか?」
琉生「ああ。色々あって、結局寝てない・・・」
友人「バイト、減らしたらどうだ? 体壊したら元も子もないだろ」
琉生「辞められるならすぐにでも辞めたい」
「・・・」
友人「仕方ねぇな。ノート貸してやるよ」
琉生「いいのか!?」
友人「その代わり、難しいところは教えてくれよ?」
友人「じゃあ俺も、その条件でテストの過去問貸してやる」
琉生「ありがとう! 助かる!」
琉生「お前らは命の恩人だ!」
友人「大げさだなぁ」
ホス狂い「琉生、みーつけた」
友人「たまには遊ぼうぜ。男だけでさ」
友人「だよな。女がいると琉生の取り合いになりそうだ」
琉生「それは嫌だな」
友人「おい、ちょっとは否定しろよ」
友人「琉生、どうした?」
ホス狂い「酷いよ、琉生! あたしのこと捨てるつもり!?」
琉生「お前、なんで・・・」
ホス狂い「あたし、琉生の赤ちゃんができたんだよ!?」
琉生「えっ」
ホス狂い「お金だけ貢がせておいて、あたしを捨てないで!」
琉生「待って。場所を変えよう」
ホス狂い「琉生、きのう他の女と会ってたでしょ!」
琉生「違う! あれは──」
ホス狂い「ああ、そっか! ホストクラブのお客さんだよね!」
琉生「わざとやってるのか!?」
ホス狂い「あはっ」
友人「琉生、今の何だよ」
友人「ホストクラブって・・・」
琉生「ちがっ──」
琉生(・・・違わない)
琉生「――全部、あの子の言う通りだ」
教授「キミ、学生課まで来てもらおうか」

〇手
琉生(自業自得だ・・・)
琉生(俺は彼女の人生を食い物にしたんだから・・・)

〇ホストクラブ
オーナー「大学、本当にやめてよかったのか?」
琉生「騒ぎになってしまったので仕方ありません」
琉生「それに、あいつに対する責任もありますから」
オーナー「だから、お前はまじめすぎるんだ。 妊娠も虚言だったんだろ」
琉生「そうですけど・・・」
ホスト「姫様ご来店です!」
ホス狂い「琉生、会いに来たよっ」
オーナー「・・・」
ホス狂い「今日はシャンパン入れてあげる」
琉生「ありがとう」
琉生「──愛してるよ」
ホス狂い「・・・」
ホス狂い「琉生って、大学やめてから変わったよね」
琉生「そう? キミのことを好きになったからかな」
ホス狂い「前はそんなこと言わなかった」
ホス狂い「あたし、前までの誠実な琉生が好きだったな」
琉生「え?」
ホス狂い「もういいわ。冷めた。バイバイ」
琉生「は・・・?」
琉生「なんだよ、それ・・・」

〇手
オーナー「お客様はホストにどのような印象を持っていますか?」
オーナー「女を騙す? 貢がせる?」
オーナー「そう思っているなら、間違いです」
オーナー「ホストの心をもてあそび、食い荒らしていくのは──」
  いつも、女のほうなのです

〇ホストクラブ
琉生「うっ・・・」
オーナー「琉生!?」
オーナー「誰か、救急車を!」

〇病室
  病院に運ばれた琉生は、
  二度と酒が飲めない体になっていました
オーナー「気がついたか?」
琉生「オーナー・・・」
オーナー「まぁ、ゆっくり休め」
オーナー「酒が飲めなくてもホストはできる。 そのうち戻ってくればいい」
琉生「ッ──」
琉生「もう、嫌だ・・・」
オーナー「琉生?」
琉生「金があれば、普通になれると思ってた」
琉生「大学に行って、友達とバカやって、彼女を作って・・・」
琉生「普通に、就職できると思ってた」
オーナー「・・・」
琉生「大学の頃の友達が、今は就職してサラリーマンをやってる」
琉生「あいつらはいいよなぁ。 金に苦労せず大学を出られて・・・」
オーナー「大学を出るだけが人生じゃないだろ」
琉生「・・・夢だったんだ。安定した生活が」
琉生「でも、もういい。俺にまともな生き方なんてできるわけなかった」
琉生「生まれたときから、決まってたんだ・・・」
オーナー「あまり思い詰めるな。一度、全部断ち切って自由になってみろよ」
オーナー「そうすれば余裕もできるだろ」
琉生「責任、投げ出せってのか?」
オーナー「バカ言え。お前に責任なんてねぇよ」
オーナー「あの女どもは、お前がいなけりゃ他のホストに貢ぐだけだ」
オーナー「それがお前だっただけ、マシじゃねぇか」
琉生「・・・」
オーナー「客の方には俺から連絡しておく。 他にも必要なものがあったら言ってくれ」

〇ホストクラブ
オーナー「しかし、どれだけ待っても、琉生が店に戻ってくることはありませんでした」

〇ホストクラブのVIPルーム
オーナー「琉生とはもう何年も連絡が取れていません」
オーナー「詐欺の件は警察から聞きましたが、すぐには信じられませんでした・・・」
木村早苗「・・・琉生、そんな事情があったのね」
オーナー「私が知っていることは、これですべてです」
オーナー「もしどこかで琉生を見つけたら、必ずおふたりにも連絡しますよ」

〇謎の扉
ホスト「素敵な姫様、ありがとうございました!」
高橋加奈子「くっ。合法的にぼったくられてしまった・・・」
木村早苗「あのオーナー、やり手ですね」

〇繁華な通り
高橋加奈子「今日は遅いし、これからのことは明日考えましょ」
木村早苗(どこに泊まろう・・・)
木村早苗「あ」
ホス狂い「うぇーい」
木村早苗「大丈夫ですか!?」
高橋加奈子「放っておきなさい。 飲み屋街なんだから、よくあることよ」
木村早苗「でも・・・」
ホス狂い「う~ん」
ホス狂い「琉生・・・」

〇シックなバー
吹雪「来たか」
琉生「吹雪さん。 急に呼び出して、何のつもりですか?」

コメント

  • まさかのホス狂いさん再登場にびっくりしました!
    オーナーも食えないですね。あとがきも、いかにもアカン台詞が😂

  • ホス狂いの名前のまま、ストーリーに関わってくる重要人物扱いされてて笑いました。モブじゃなかったのね。

    そして、口座は貸しちゃだめです。

  • おもしろくてここまで一気に読ませて頂きました!女二人のバディものになるのでしょうか?割り切れない早苗に加奈子がバシバシ突っ込んでいくのかなと。いいコンビになりそうですね!
    投資詐欺に結婚詐欺、詐欺をするのも酷いですが詐欺をする方にも理由がーーと納得しかけていた所にまさかのオーナー黒幕!?展開が読めなくてドキドキです……

コメントをもっと見る(11件)

成分キーワード

ページTOPへ