私の守護霊

セーイチ

村の土地神(脚本)

私の守護霊

セーイチ

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〇広い玄関
愛絆美「ただいまー」
舞「おじゃましま~す」
白虎「にゃにゃ~」
お婆ちゃん「ありゃありゃありゃありゃ」
お婆ちゃん「よ~来たね~愛絆美」
お婆ちゃん「んで、お友達の舞ちゃんだったかのぅ」
舞「はい!愛絆美のクラスメイトで幼馴染の舞です!」
舞「よろしくお願いします!」
お婆ちゃん「ありゃ~元気な子だね~」
お婆ちゃん「さぁさぁ疲れただろう」
お婆ちゃん「中でユックリしなせぇ」
愛絆美「うん、ありがとう」
舞「しつれいしまーす」

〇実家の居間
舞「はぁ~・・・生き返った~」
愛絆美「もう大袈裟なんだから」
舞「いやいや疲れた所に冷えたお水、しかも天然の湧き水とか」
舞「なかなかに贅沢だよ~」
お婆ちゃん「そんなもんかねぇ~」
お婆ちゃん「はい、大したもんじゃないけんど」
舞「更に疲れた所への糖分!」
舞「お婆ちゃんわかってる~♪」
お婆ちゃん「はっはっは!楽しいお友達だねぇ」
愛絆美「それは否定できないかな・・・」
愛絆美「あ・・・」

〇古風な和室(小物無し)
愛絆美「・・・」
お婆ちゃん「どうしたんだい?」
愛絆美「お婆ちゃん・・・ごめんなさい・・・」
お婆ちゃん「ん?何のこったい?」
愛絆美「私のせいで、お爺ちゃんの写真飾れなかったんだよね」
  お爺ちゃんは、私が幼い頃になくなっている
  大のお爺ちゃん子だった私を悲しませないため、護人がお爺ちゃんの姿になり
  そして、遺影などお爺ちゃんの写真を私に見られないようにしていたらしい
お婆ちゃん「何だい、そんな事かね」
愛絆美「そんな事って・・・」
お婆ちゃん「お爺さんは愛絆美の事が大好きだったからね」
お婆ちゃん「写真なんて飾ってたら・・・」
お婆ちゃん「愛絆美を悲しませるな!」
お婆ちゃん「って、怒られるところさ」
愛絆美「・・・」
お婆ちゃん「ホレホレ、泣かんでもええ」
お婆ちゃん「お友達と一緒に、お菓子食べな」
愛絆美「・・・うん」

〇実家の居間
お婆ちゃん「そう言や、昔の事を聞きたい言うてたなぁ」
愛絆美「そうなの、お婆ちゃんに話を聞こうと思って」
お婆ちゃん「教えてやりたいがのぉ・・・大昔の事となると」
お婆ちゃん「あ・・・そうそう、今は真那月(まなつ)が帰って来とるんよ」
愛絆美「真那月お兄ちゃんが?」
お婆ちゃん「ああ、アイツに聞いてみるとええ」
???「ただいまー」
お婆ちゃん「おや、都合よく帰ってきたらしいのぉ」
真那月「あれ?」
真那月「愛絆美じゃないか、めずらしいな」
愛絆美「お兄ちゃん久しぶり」
舞「えっ!?」
舞「愛絆美のお兄さん?兄弟が居たの!?」
愛絆美「違う違う」
愛絆美「お兄ちゃんは、お母さんの弟」
愛絆美「つまり叔父さん」
愛絆美「小さな頃良く遊んでもらっていたから、勝手にお兄ちゃんって呼んでるだけ」
真那月「おや、お友達?」
真那月「はじめまして、愛絆美の叔父の真那月です」
舞「はじめまして~愛絆美の親友の舞です」
お婆ちゃん「ホレ、アンタも突っ立ってないで座った座った」
真那月「はいはい、わかってるよ」
真那月「っで、何か用事でもあったのか?」
  私は事の成り行きを説明した
真那月「はぁ~なるほどねぇ~」
愛絆美「お兄ちゃんは何か知らない?家や地元の歴史の事」
真那月「ん?俺?」
愛絆美「お兄ちゃん学者さんでしょ?」
舞「え!マジで!?すっごーい!」
お婆ちゃん「何が凄いもんかね」
お婆ちゃん「しゅっちゅう遊び歩ちゃ~わけわからん壺だの人形だのこうてきて」
お婆ちゃん「邪魔でしゃあない」
真那月「母さん、遊びじゃないって」
真那月「フィールドワークって言ってくんない?」
舞「叔父さんは何の学者さんなんですか~?」
愛絆美「オカルト学だよね」
真那月「民俗学だよ!」
愛絆美「そうだっけ?やけに都市伝説とか妖怪の話に詳しかったから・・・」
真那月「確かにオカルトもかじっちゃいるけど・・・」
愛絆美「でも民俗学なら、歴史的な事も詳しいでしょ?」
真那月「まぁ、庶民の生活や文化の歴史を紐解くのが民俗学だからな」
愛絆美「じゃあ地元の歴史を教えてよ」
愛絆美「特に戦国時代」
真那月「え~・・・今日は久しぶりの休みなんだけど」
お婆ちゃん「真那月ぅ・・・」
真那月「わ、わかってるよ!」
真那月「可愛い姪っ子の為だ、協力するよ」
愛絆美「ありがとう、お兄ちゃん」
真那月「と言ってもなぁ・・・」
真那月「正直、面白い話なんてないと思うぞ?」
真那月「例えば、戦国時代を応仁の乱から江戸幕府を開くまでとしても・・・」
真那月「ここらで大きな戦があったって話は聞いた事ないなぁ」
舞「そうなんですね~」
真那月「その時代、他国から攻めるには河を渡ったり山越えが必要だったからね」
真那月「採掘物がある訳でも無いし、攻めるメリットが少なかったんだよ」
真那月「平和な土地だったんだよね」
愛絆美「そっか・・・」
真那月「残念だけど、特産品とか名産品とかを題材にしたら?」
舞「愛絆美、どうする?」
愛絆美「う~ん・・・」
お婆ちゃん「真那月ぅ、もう少し親身にならんかい」
真那月「い、いや、いくら何でも歴史は変えられないよ」
お婆ちゃん「(ジロッ)」
真那月「わ、わかったよ、考えるよ」
  お兄ちゃんは腕組みをして唸りだした
真那月「・・・ん?」
護人「・・・?」
真那月「・・・そう言えばその時代に関して、気になる文献を思い出した」
愛絆美「なになに?」
真那月「その時代、なぜこの土地が争いから無縁だったか」
愛絆美「それは立地条件とかじゃないの?」
真那月「それも有る」
真那月「だがもう一つの説があるんだ」
真那月「守護霊だよ」
愛絆美「守護霊?」
真那月「正確には土地神様だな」
護人「・・・」

〇山間の集落
真那月「守護霊が個人や家を護る様に、郷村を護るのが土地神様だ」
愛絆美「土地神様?神様なら守護霊とは関係ないんじゃ・・・」
真那月「神とは言われるが、その実は土地に憑いた霊や妖怪が神格化したとする伝承も多いんだ」
真那月「神様は神様だけど、ギリシャ神話や北欧神話に登場する神々とは違う」
真那月「もっと身近な存在だ」
真那月「その土地神様が護ってたから、この地域は平和だったんじゃないかって話があるんだよ」

〇実家の居間
真那月「愛絆美も知ってるように、守護霊の概念が一般化してからの歴史は浅い」
真那月「まだまだ研究途中だから、それを地元の歴史と繋げて発表しても面白いんじゃないか?」
愛絆美「その土地神様ってどんな神様なの?」
真那月「さあ?」
愛絆美「さあ・・・って」
真那月「土地神様の言い伝えはこの地域にもあるけど、具体的な伝承がないんだ」
愛絆美「じゃあ、本当に土地神様が村を護ってた証拠も無いの?」
真那月「まあ、こんな小さな村の土地神を調査しようって物好きも居ないからなぁ」
真那月「ただ可能性は高いと思う」
真那月「実は隣国の文献に、この地域への侵攻を記録した物が有るんだ」
  お兄ちゃんは、その文献に関して説明をしてくれた

〇城
  侵攻の理由は単純な領土の拡大
  攻めにくい土地を手に入れれば、それは攻められにくい領土を手にできる事になるからだ
  侵攻は数度に及ぶが、その全てが失敗
  敗戦ではなく失敗
  全て、急な天候の悪化や原因不明の集団食中毒等で中断されている
  しかも同様に侵攻を失敗した国がもう一つあった
  記録を確認する限り、その国も同様の理由で侵攻に失敗している
  そしてその両国と隣接しているのが、この村だ

〇実家の居間
舞「なる~」
真那月「一回や二回なら偶然って事も有り得るだろうけど」
真那月「これだけ何度も同じ事が起こっているなら、土地神のせいと考えても不思議はない」
愛絆美「でも確証はないんだよね?」
真那月「断言できない理由については三つ・・・」
真那月「1.昔から土地神様の噂は有ったが、明文化された書物が発見されていない」
真那月「2.守護霊が一般化した今でさえ、その姿を見た者が居ない」
真那月「3.直近100年は土地神様が関与したと思える事例が無い、そんな所だな」
真那月「でも、護人なら何か知ってるんじゃないか?」
護人「・・・」
愛絆美「護人、知ってるの?土地神様の事」
護人「・・・知ってる」
舞「うそ?じゃあ確定じゃん!」
舞「その土地神様って何所に居るの?」
護人「この村に昔からある廃寺、その本堂の奥にいらっしゃいます」

〇神社の本殿
愛絆美「その廃寺って山の上にある?」
護人「そう、子供の頃は近付くなと言われていたところだ」
舞「そこって遠いの?」
愛絆美「ん~歩いて30分くらいかな?」
真那月「マジかよ・・・」
真那月「半信半疑だったけど、まさか本当に土地神様が敵国の侵攻を止めてたのか?」

〇実家の居間
舞「よし、じゃあ今から行こう」
愛絆美「え?」
舞「まだ暗くなる前だし、今から行っちゃおう!」
舞「明日の午後には帰らないとだし!」
愛絆美「う~ん」
愛絆美「そうだね、じゃあ・・・」
護人「・・・どうしても行くか?」
愛絆美「えっ?」
護人「正直あまり勧められない」
愛絆美「ひょっとして、怖い神様なの?」
護人「いや、悪い方じゃない」
護人「特に子供に危害を加える様なことはしない」
護人「・・・ただ」
愛絆美「ただ?」
護人「ただ、面倒くさい」
護人「それでも良ければ、俺から話してみよう」
愛絆美「メンドクサイって・・・」
舞「・・・何か怖いんだけど」
愛絆美「でも、今の状況じゃ目新しい情報は見付からなさそうだし」
愛絆美「・・・」
愛絆美「会ってみよう」
愛絆美「舞も良い?」
舞「もちろん」
舞「びゃっくんもね」
白虎「にゃあ~」
舞「護人君が危害を加えないって言うなら大丈夫でしょ」
舞「メンドクサイってのは気になるけど」
舞「愛絆美もメンドクサイっちゃメンドクサイし」
愛絆美「えぇ!?」
舞「ねっ?護人君」
護人「・・・」
愛絆美「ちょっと!護人まで!」
  そう言いながら、最近の自分を思い返すと強く反論できない
愛絆美「気を付けます・・・」
舞「それじゃ、早速行きますか」
真那月「お、俺も行くぞ!」
護人「真那月はやめておいた方が良い」
護人「なんで!?」
護人「あまり大人数で押しかけると機嫌を損ねる可能性がある」
護人「子供なら大目に見て貰えるだろうが、大人だとな・・・」
真那月「そ、そんな一人くらい・・・」
お婆ちゃん「真那月、護人のいう事を聞いとけ」
真那月「ううう・・・研究のチャンスなのに・・・」
護人「すまんな、真那月」
  こうして私達は、お兄ちゃんを置いて土地神様が居るという廃寺へと向かう事になった

〇山中の坂道
護人「土地神様は俺の生前から、この村を護っていたんだ」
護人「俺が狐として天命を終えた後、守護霊となるのに土地神様の力を借りた」
護人「それが土地神様との出会いだったんだ」
護人「守護霊は宿主以外とはあまり関わり合いを持たない」
護人「しかし宿主を護る為に、土地神様や他の守護霊と協力する事はあるんだよ」
舞「それで、メンドクサイってどーいうふうに?」
護人「それは・・・」
愛絆美「あ、見えたよ」

〇神社の本殿
舞「ほほぅ雰囲気あるねぇ~」
愛絆美「廃寺って割りに奇麗だね」
護人「この村は、信心深い人が多いからな」
  護人は本堂の扉の前に進んで行った
  護人が扉を押すと、扉は抵抗も無く開かれる
  そして現れたのは、想像していた物とは程遠い景色だった

〇御殿の廊下
舞「何コレ?」
  扉の先には長い廊下
  明らかに外観の大きさと合わない
舞「まるで別空間だねぇ~」
舞「ひょっとして異世界ってヤツ?」
護人「現世ですよ」
護人「ただ、土地神様の眷属以外には入れない場所ですけどね」
護人「眷属以外が本堂に入っても、この場所には来られません」
愛絆美「確かに、子供のころ本堂に入った事あるけど、こんな場所じゃなかった・・・」
護人「さ、行こう」
  護人が先頭で足を踏み入れたその時
愛絆美「護人!?」
  護人が本堂に足を踏み入れた途端、狐の姿に戻ってしまった
護人「あぁ、ココは土地神様のテリトリーだから、勝手に力を行使する事を許されないんだ」
舞「ひょえ~」
舞「びゃっくんは大丈夫?」
白虎「にゃあ~」
護人「悪意を持たなければ、害になる結界ではないですから」
護人「取り合えず、進みましょう」
  護人の後に続き、長い廊下を進む
  窓から外を見ると、明らかに私の知っている景色じゃない
  護人は現実だと言っていたから、遠く離れた場所に瞬間移動した感じなんだろうか?
  やがて護人は小さな扉の前で足を止める
護人「失礼します」
  護人が扉を開けて、揃って中へ入ると・・・

〇屋敷の寝室
???「すぴ~~しゅぴゅ~~」
  誰か寝てる?
護人「玉藻様」
  護人が床に敷かれた布団の前で片膝をつく
  その緊張した様子に、私も舞も白虎も固唾を飲んだ
???「すぴゃ~~」
護人「玉藻様!」
???「すぅ~~~・・・んにゃ?」
???「ん~・・・なんじゃなんじゃ、騒々しい」
護人「お久しゅうございます」
???「ん~~?」
玉藻「・・・」
玉藻「おぉおぉ!誰かと思えば子狐ではないか、久しいの~」
舞「護人君を子狐って・・・」
舞「ってか、この子が土地神様?」
舞「どう見ても子供、だよね?」
玉藻「ん?なんじゃ、この童共は」
護人「今の宿主とご学友、そしてその守護霊です」
  少女は布団から起き上がると私達に歩み寄り、興味深そうに眺めていた
玉藻「ふむ、悪人ではなさそうじゃな」
玉藻「まぁ、護人が悪人を連れ歩く訳もないか」
玉藻「お初にお目に掛かる」
玉藻「ワシは玉藻、この村の土地神じゃ」
愛絆美「は、初めまして、護人の宿主で愛絆美と言います」
玉藻「!?」
護人「い、いかが致しました?」
玉藻「・・・いや、何でもない」
舞「んじゃ続き~」
舞「はじめまして、舞で~す」
舞「んでコッチが、びゃっくん」
白虎「・・・」
舞「びゃっくん、どうしたの?」
玉藻「はっはっは!」
玉藻「幾ら四聖獣とはいえ、幼子ではワシの妖気に恐怖も感じるか」
玉藻「安心せい、お前らと争うつもりはない」
白虎「・・・にゃぁ」
玉藻「っで、護人はワシに何ぞ用かの?」
護人「はい、主である愛絆美が玉藻様の嘗てのご活躍を拝聴したいと申しておりまして」
玉藻「嘗ての活躍とな?」
愛絆美「せ、戦国時代の事です」
玉藻「戦国時代?」
護人「550年くらい前です」
玉藻「数字で言われても分からん、人の歴などに興味はない」
護人「玉藻様が他国からの軍勢を豪雨で流したり、備蓄に毒気を混ぜて撃退した時の事です」
玉藻「・・・」
玉藻「お~お~!あったな、その様な事も!」
玉藻「そうかそうか、土地を護ったワシの華麗な活躍が聞きたいか」
愛絆美「は、はい」
玉藻「良かろう、心して聞くと良い」
玉藻「そもそもアレは・・・」
玉藻「(ぐぅ~)」
玉藻「・・・その前に腹ごしらえじゃな」
玉藻「護人、俗世間ではそろそろ秋の収穫時期かの」
玉藻「今年の芋はどんな出来じゃ?」
護人「・・・いえ、今は収穫時期ではございません」
護人「それに、昨今は芋を作る農家も減ってしまって・・・」
玉藻「何と!村の特産ではないか!何をやっておるのだ!」
護人「い、稲荷寿司をご用意しておりますので・・・」
玉藻「いやじゃ!」
玉藻「寝起きは甘味と決まっておるのじゃ!」
護人「か、甘味ですか」
玉藻「そうじゃ!」
玉藻「今は小木野屋の饅頭の気分じゃ!アレ以外は受け付けん!」
愛絆美「・・・」
  その時、私達は早くも土地神様の「メンドクサイ」姿を拝む事となった

次のエピソード:狐の盟約

コメント

  • 舞ちゃんとびゃっくんがリズムと雰囲気を作っていて、読んでいて楽しくなります!喜怒哀楽さまざまな感情が盛り込まれた情感豊かな第3話ですね!

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