第1話(脚本)
〇ヨーロッパの街並み
フレスベルグ王国 715年
〇怪しげな酒場
北区・シュンラン郊外・食堂
村人1「西区で魔獣が出たそうだ」
村人2「今度も悪魔蔓のせいか?」
村人1「ああ、郊外調査隊が来たときに、一度焼き払ったそうだが、」
村人1「わずかに残っていたらしくてな」
村人2「それで、村はどうなったんだ?」
村人1「調査隊のおかげで、魔獣討伐は成功したが、」
村人1「悪魔蔓のせいで作物も建物もダメになっちまったんだと」
村人2「それは災難だな・・・」
村人2「悪魔蔓が出たら、この村もおしまいだな」
グライユ「・・・」
〇黒
〇ヨーロッパの街並み
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「グライユ殿下!」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「どこにいらしてたんです? 隊員たちが探し回っていましたよ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ちょっと偵察に行っていた」
グライユ・アーティ・マーナガルム「それより街中では、団長と呼べとあれほど言っているのだが」
グライユ・アーティ・マーナガルム「これは難しい命令か? 第7部隊ハウク隊長殿?」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「ふわ!!」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「申し訳ございません! でん・・・グライユ団長!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「それで、西区の悪魔蔓の状況は?」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「報告によると、後援の聖魔道師団が合流し、村ごと焼き払ったとのことです」
グライユ・アーティ・マーナガルム「生き残った者は?」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「ごくわずかですが・・・」
グライユ・アーティ・マーナガルム「そうか・・・」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「団長、気を落とさないでください」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「現在の王国の技術では、悪魔蔓を完全に除去することは不可能です」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「繁殖を抑えるのでやっと。イタチごっこになるのは仕方がないことです」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「我々だけでは、 全ての村を救うことはできませんよ」
グライユ・アーティ・マーナガルム「わかっている」
グライユ・アーティ・マーナガルム「だが、もっと早く討伐が終わっていたら、救える命があったのではと考えたら」
グライユ・アーティ・マーナガルム「私の実力に歯痒くなる時があるのだ」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「考えればキリがありません」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「救えた命を大事にしましょう」
グライユ・アーティ・マーナガルム「そうだな」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「そうだ。悪魔蔓の被害に遭われた村人の受け入れ先が決まったと報告がありました!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「それは朗報だな!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「一体、どこの領主が引き受けてくださったのだ?」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「リッチモンド公爵家です」
グライユ・アーティ・マーナガルム「リッチモンド・・・か・・・」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「あっ。そういえばリッチモンドは皇太后陛下が御隠居なさっていましたね」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「最近は、お戻りになられないのですか?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「今は、そんな場合じゃないだろう」
グライユ・アーティ・マーナガルム「悪魔蔓が国内中に繁殖すれば、この国全体が荒野と化すかも知れぬのだ」
グライユ・アーティ・マーナガルム「まずは国のために動かねば」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「とか言って、世継ぎの話題を振られるのが嫌だからじゃないのですか?」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「ルルーシュ様ほどのお美しいご令嬢を娶られたばかりだというのに」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「魔物の討伐に率先されるなど、夫婦関係にヒビが入りかねませんよ?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「婚約様もいないお前に言われたくはない」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「う!」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「で、出過ぎたことを申し上げてしまいました」
グライユ・アーティ・マーナガルム「構わん。任務をこなしたらすぐにでも妻を抱くとしよう」
グライユ・アーティ・マーナガルム「さっさと孕ませて王太子を皇太后に抱かせてやればいいのだろう? そうしよう」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長(うわー。怒ってる・・・)
〇森の中
グライユ・アーティ・マーナガルム「今夜は、この辺りで野営を張るぞ」
隊員たち「承知いたしました!」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「馬車から荷物を下ろせ! 今夜も冷えるぞ、薪を準備しろ!」
隊員たち「ざわざわざわ・・・」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ちょっと森を散策してくる」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「殿下! わたくしもお供いたします!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「・・・」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「あっ。団長!」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「最近はどこもかしこも魔獣だらけですので、お一人では危険かと」
グライユ・アーティ・マーナガルム「問題ない。ラスカを森で遊ばせるだけだ」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「しかし!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「案ずるな。 何かあればラスカが知らせる。 ここは任せたぞ」
ハウク(ハク)・グリムゾンテム第7隊長「は! 承知いたしました!」
〇けもの道
グライユ・アーティ・マーナガルム「ふう・・・ この辺りでいいか?」
ラスカ「ワフッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「窮屈な場所に押し込んですまなかったな」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ここなら、存分に体を動かせるだろう」
ラスカ「ワフッ! ワフッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「そうか、この森を気に入ったか」
「ワフッ! ワフッ! ワフッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「おい! あまり奥へ行くな!」
魔獣「ギュッギュッギュッッギュッギュッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「魔獣か!」
魔獣「ギュッギュッギュッッギュッギュッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「っく!! 硬い!!」
ラスカ「グルルル!!」
ラスカ「キャンキャンキャンキャン!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ラスカでも歯が立たないとは!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ラスカ! 来い! 撤退だ!」
〇岩山の崖
グライユ・アーティ・マーナガルム「なっ! 行き止まり!?」
魔獣「ギュッギュッギュッッギュッギュッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「くそ! ここまでか!」
「うわ!」
〇黒
〇黒
グライユ・アーティ・マーナガルム「・・・ううっ」
グライユ・アーティ・マーナガルム「生きて・・・いる?」
ラスカ「クゥーン」
グライユ・アーティ・マーナガルム「お前も無事だったか」
グライユ・アーティ・マーナガルム「これは・・・」
〇美しい草原
グライユ・アーティ・マーナガルム「なぜ、冬のこの時期に蛍が?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「それに、緑が生い茂っている」
「ワンワン!!」
〇美しい草原
グライユ・アーティ・マーナガルム「あれは・・・」
グライユ・アーティ・マーナガルム「・・・ユグドラシル?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「なんと、大きな樹なのだ・・・」
「ワンワン!!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「おい! ラスカ!」
〇赤い花のある草原
ラスカ「ワフッ」
ラスカ「クッチャクッチャ」
グライユ・アーティ・マーナガルム「何を食べている?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「この香りはマジョラムか?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ではこれはマジョラムの果実」
グライユ・アーティ・マーナガルム「実がつくマジョラムなど、初めて見たぞ」
ラスカ「ワッフ! ワッフ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ん? 食べろ?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「甘い・・・こんなにも甘い果実をつけるのだな」
グライユ・アーティ・マーナガルム「こんな場所があるなんて、皆に教えねば」
グライユ・アーティ・マーナガルム「一体どうやれば、崖の上に戻れるのだ?」
ラスカ「ワフッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「ラスカ? どこへ行く?」
〇睡蓮の花園
ラスカ「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「・・・人?」
シャルロッテ「・・・」
シャルロッテ「・・・どなた?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「失礼をする」
グライユ・アーティ・マーナガルム「私はフレスベルグ王国、第一皇子グライユ・アーティ・マーナガルムだ」
グライユ・アーティ・マーナガルム「そなたは、この土地の主か?」
シャルロッテ「・・・」
シャルロッテ「ここは冥界の父、ハデスの庭であり冥界の入り口」
シャルロッテ「そして、私を閉じ込める監獄です」
グライユ・アーティ・マーナガルム「冥界・・・では、死んだのか・・・」
グライユ・アーティ・マーナガルム「なんということだ。 国が大変な時に・・・私は・・・ううっ」
シャルロッテ「可哀想な皇子」
シャルロッテ「あなたの魂は、間も無くハデスが冥界へと連れていくでしょう」
「・・・あなたも冥界へ行かれるのでは?」
シャルロッテ「いいえ」
シャルロッテ「私は冥界の地を踏むことが許されていません」
シャルロッテ「そのため、長い年月をここで過ごしてきました」
グライユ・アーティ・マーナガルム「それは、そなたの死をハデスが許していないということか?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「それとも、現世でやり残したことがあるのか?」
シャルロッテ「魂だけになった私には・・・わかりません」
シャルロッテ「私の肉体を見つけてください」
シャルロッテ「この監獄から解き放ってください」
シャルロッテ「私の願いを叶えると約束してくださるなら」
シャルロッテ「冥界の父から逃れる道を教えて差し上げましょう」
グライユ・アーティ・マーナガルム「私は現世に戻りたい。 志半ばで、死ぬわけにはいかないのだ」
グライユ・アーティ・マーナガルム「約束しよう 必ずあなたの願いを叶えると!」
シャルロッテ「冥界の父がもうすぐ来ます」
シャルロッテ「ハデスに捕まれば、冥界へと送られてしまいます」
グライユ・アーティ・マーナガルム「では、どうすれば?」
シャルロッテ「ユグドラシルの木に向かってください。 そこにあなたの世界へ戻る道があります」
シャルロッテ「さあ、行ってください」
グライユ・アーティ・マーナガルム「待ってくれ! そなたの名は?」
グライユ・アーティ・マーナガルム「君の肉体は、どこにあるのだ?」
シャルロッテ「急いで!」
グライユ・アーティ・マーナガルム「っくそっ! ラスカ! 走れ!!」
〇木の上
グライユ・アーティ・マーナガルム「ユグドラシルの木! ここだな!」
〇村に続くトンネル
〇村に続くトンネル
「木の幹に道が!!」
「来た!!」