《エデン》

草加奈呼

エピソード32 番外編 カートと魔術(脚本)

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草加奈呼

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〇城の回廊
幼き日の風華「ふうっ・・・」
  風華 13歳
若き日のカート「はぁ はぁ」
幼き日の風華「もう、 ちっとも剣の練習にならないじゃない」
若き日のカート「無茶を言わないでくれ、風華。 俺は剣術は苦手なんだ」
若き日のカート「本を読んでいる方が性に合っている」
幼き日の風華「せめて、私を守れるくらいには 強くなってもらわないと困るわ!」
若き日のカート「・・・俺は、学問で風華を守るよ」
幼き日の風華「んもう、カートったら!」

〇要塞の廊下
  その夜────
  ・・・まえが・・・
  おまえ・・・・・・ いい・・・・・・
若き日のカート「ん? 誰だ!?」
  城の見廻りをしていたカートに、
  誰かが語りかけてきた。
  しかし、後ろを振り向いても誰もいない。
  おまえがいい・・・
  私の・・・・・・ここへ・・・・・・
若き日のカート(この声は一体・・・? どこから聞こえているんだ・・・?)
  そうだ、こちらへ・・・
  ・・・の、・・・・・・を・・・・・・
  カートは、その声の正体を探るべく、
  声のする方へと進み始めた。

〇神殿の門
  すると、城の最奥にある部屋の前まで来た。
若き日のカート「こんな所に部屋があったとは・・・」
若き日のカート「しかし、この部屋は一体・・・?」
  カートは疑問に思いながらも、吸い込まれるようにその部屋へ入った。

〇魔法陣2
  おまえ・・・ちか・・・ほ・・・くな・・・・・・?
若き日のカート「な、なんだ、 この禍々しいオーラは・・・!?」
  今なら・・・
  おまえに力を与えてやれる・・・
  おまえは、力がほしくないか・・・?
若き日のカート「くっ・・・! こ、このような甘言に・・・・・・ 踊らされてはいけない・・・っ!」
  カートは、急いで部屋を出て扉を閉めた。

〇神殿の門
若き日のカート「はぁ・・・はぁ・・・」
若き日のカート(なんだったんだ、今のは・・・)
「カート!」
国王「そこで何をしている?」
若き日のカート「国王陛下!」
国王「この部屋は、 とても重要なものが封印されている」
国王「入ることは罷りならん。早々に立ち去れ」
若き日のカート「は、はっ! 承知致しました・・・!」
国王「・・・・・・・・・・・・」
国王「・・・やはり、 封印の力が弱まっている・・・」
国王(かつての仲間たちが次々と命を落とし、 次の子孫の能力が、まだ開花していないようだ)
国王(我が子たちは能力が開花したが、 こればかりは個人差があり、 どうにもならない・・・)
国王(すでに連絡の取れない仲間もいる・・・ 一体、どうすれば・・・)

〇要塞の廊下
若き日のカート(そうか、おそらくあそこが魔術を 封印してある部屋なのだな)
若き日のカート(あの声は・・・ 魔術から発せられたものなのか・・・?)

〇屋敷の書斎
  カートは、魔術について調べるようになった。
  そして、その歴史に深く興味を持ち、
  魅入られるようになった。
若き日のカート「風華、おまえの宝玉を、 ちょっと貸してくれないか?」
幼き日の風華「え、宝玉を?」
幼き日の風華「これはダメよ。絶対に人に貸したりしちゃダメって、お父様とお母様に言われているの」
若き日のカート「少しだけでも、ダメかな・・・? 魔術の封印について、その宝玉を研究したいんだ」
幼き日の風華「魔術の・・・」
幼き日の風華「わかりました。 お父様に進言してみます」

〇謁見の間
国王「・・・ならん! カート、何を考えている!?」
若き日のカート「お言葉ですが国王陛下。 魔術の封印の力が弱まっているのですよね・・・?」
国王「それはそうだが・・・!」
若き日のカート「ならば、他のアイ=リーンの子孫の能力開花を待つよりも、宝玉を研究して封印の力が弱まらないようにすべきです」
若き日のカート「その方が、後世のためかと思われます」
国王「う、むぅ・・・ 言いたい事はわかる、わかるんだ・・・。 しかし、危険すぎる・・・」
若き日のカート「研究に危険はつきものです」
若き日のカート「必ず、必ずや結果を残しますので、 何卒・・・!」
国王「む、む・・・」
国王「わかった! カート、そなたを信じよう!」
国王「ただし、あの部屋だけには近づかぬように! それが条件だ!」
若き日のカート「はっ! ありがとうございます!」
国王「では、風華。 おまえの宝玉をここへ」
幼き日の風華「はい、お父様」
  風華は、カートに宝玉を渡した。
幼き日の風華「絶対に、大切に扱ってね。 失くしたりしないでね」
若き日のカート「承知致しました」

〇屋敷の書斎
  それから、宝玉の研究が始まった──。
若き日のカート(これは・・・。 この素材は、見た事もない・・・。 一体、なんという素材なんだ・・・?)
若き日のカート(できれば、王子の宝玉も見てみたかったが、他国で療養中では、無理だな・・・)
若き日のカート(大切に扱うと言った手前、強い衝撃を 与えるなどの実験はできない・・・)
若き日のカート(万が一壊れてしまったら元も子もないからな・・・)
若き日のカート(アイ=リーンの子孫と宝玉。 そして神具)
若き日のカート(この3つ、子孫8人分が揃うと、 魔術の封印が可能になる)
若き日のカート(逆を言えば、揃わなければ封印できない、 という事になる)
若き日のカート(この体制は、非常に危うい。 子孫が生まれなければ、 引き継ぐ者がいなくなってしまうからだ)
若き日のカート(ならば、宝玉だけで封印できる方が、 断然効率がいい)
  カートは、研究に没頭した。
  しかしある日の夜────

〇魔法陣2
  またあの声が聞こえて、カートは無意識のうちに封印の間に入って行った。
若き日のカート「・・・ハッ! ここは・・・」
  ようやく
  その気になってくれたかな・・・?
若き日のカート「ち、違う! 俺はそんな事は望んでいない!」
  言葉巧みに
  宝玉を手に入れてくれてありがとう・・・
  これで、奴等に
  気取られずに堂々と外に出られる。
若き日のカート「な、なんだと・・・!?」
  おまえに力を与えてやる・・・
  ありがたく思え・・・
若き日のカート「う、ううっ!!」
若き日のカート「やめろ!! 入ってくるな・・・!!」
  フハハハハ、無駄だ。
  封印の力がかなり弱まっている。
  今、おまえの
  身体に入り込むのは容易い事だ。
  それに、おまえの本心が言っている。
  『力が欲しい』と。
若き日のカート「そ、ん、な・・・」
  『風華を守る力が欲しい』と。
  さあ、ラクになりたまえ・・・
  我を受け止めよ・・・・・・
若き日のカート「ふう、か・・・ すまな、い・・・・・・」
  カートは、そのまま意識を失った。

〇魔法陣2
  どれだけ気を失っていただろうか?
  カートは、ゆっくりと身体を起こした。
若き日のカート「なんと言う事だ・・・俺が、 魔術の封印を解いてしまうとは・・・」
若き日のカート(魔術の禍々しいオーラが消えている。 これでは、封印を解いた事がバレてしまう・・・)
  カートは、魔術が封印されていた台座に、
  幻影を見せる術を施した。

〇魔法陣2
若き日のカート(これでしばらくはカモフラージュできる)
  しかし、カートが持っていた風の宝玉が、
  仄かに輝き出した。
若き日のカート「これは・・・ まさか、警告しているのか・・・!?」
  光が漏れてはいけないと、カートは宝玉をぎゅっと握りしめた。
  するとどうした事か、宝玉の輝きは消えた。
  身体に入り込んだ禍々しい気配も、
  少し弱まった気がした。
若き日のカート(これは・・・。まさか、宝玉自体に魔術を 弱める力があるのか?)
若き日のカート(これならば、 魔術に呑み込まれずに済むのか・・・?)
若き日のカート(いや、そうとも限らない・・・)
若き日のカート(何が起こるかわからない・・・ だが、風華だけは守らなければ・・・!)

〇屋敷の書斎
  カートは、引き続き魔術の研究に没頭した。
  魔術を再び封印するには──
  宝玉のみでの封印を可能にできないか──
  しかし、魔術に関する知識を得れば得るほど、その力は増幅していった。

〇謁見の間
  数年後、ついにカートは魔術の暴走を抑えきれなくなり──
  モステア国王を、殺害した。
  そして同時に、世界各地にいるアイ=リーンの子孫たちが持つ宝玉が、一斉に光り始めたのである。

〇牢獄
カート「風華、俺を殺しに来い」
風華「えっ?」
「カート・・・ッ!!!!」
カート「・・・・・・・・・・・・」
カート(これで・・・いい・・・)
カート(後は、運を天に任せよう・・・)
  そう言って、カートはモステアから姿を消した──

〇モヤモヤ
  ── 異空間 ──
カート「・・・・・・・・・・・・」
カート「ハッ・・・!」
カート「ここは・・・?」
魔術に支配されし者「お、オマエ・・・ ナゼ、そコニ タッテイる・・・?」
カート「貴様は・・・!」
カート「そうか・・・ 封印は、成功したんだな・・・」
魔術に支配されし者「ありえナい・・・・・・」
魔術に支配されし者「アリエナイありエナイありエナいアりえなイアリエナイありエナイありエナいアりえなイアリエナイありエナイありエナいアりえなイ」
魔術に支配されし者「普通ノニンゲンニ、ソノヨウなコトが デキルワケガナイ!!!!」
カート「私利私欲に塗れた、 普通の人間ならな・・・」
カート「だが俺は魔術を研究し────」
カート「この《エデン》の母となるセ=シルと アイ=リーンの意志を継ぐ者!!」
カート「ここで、貴様に抗わせてもらう」
魔術に支配されし者「ばかナ・・・! ソんナことヲシテモ、 オマエはソトにデラレナイ!!」
カート「そんなことは、百も承知だ!!」
カート「封印の方法が簡略化される日まで────」
カート「俺は貴様に抗い、 貴様を二度と外には出させない!!」
カート「それが・・・」
カート「俺の出した答えだ!!」
魔術に支配されし者「クッ・・・キサマ・・・」
魔術に支配されし者「我ニ カナウト 思うなああああアッ!!!!」

次のエピソード:エピソード33 番外編 泡沫の夢

コメント

  • 裏を知るとまた物語が別の意味を持ってきますね。カートも幸せになってほしかった。

  • んん??
    すみません、最後のシーンがよくわからなかったのですが、最終決戦の後ってことですか?
    精神世界で生きてる……みたいな?

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