赤いコートの女(脚本)
〇散らかった職員室
翌日‥
「おはよーございまーす」
「あー、おはよー」
「おはよーございます」
林多恵「おはよーございます」
中島さゆ「あー、おはよー 昨日はお疲れ様―」
林多恵「あー、もう聞いて下さいよー!」
中島さゆ「なに?まだ終わってないの?」
林多恵「終わって無いですよー 後で連絡するんですけど‥」
中島さゆ「連絡?誰に?」
林多恵「三井君のお母さんに」
中島さゆ「なんで?」
林多恵「今日、学校に来るって言うから‥」
中島さゆ「また、面倒なことに‥」
林多恵「やっぱり、副校長に言わないとなぁ‥」
中島さゆ「そりゃあ、ねぇ‥」
林多恵「付き合ってくださいよぉ」
中島さゆ「えっ?副校長のところに行くのを?」
林多恵「それもですし‥三井君のお母さんの時も」
中島さゆ「えー!って言うかさ、何でそんなに揉めてんのよ?」
林多恵「だから、聞いて下さいよー 実は‥」
〇校長室
校長室
中島さゆ「失礼しまーす」
林多恵「しまーす」
副校長 外ノ岡修二「はい、お疲れ様です‥何か?」
林多恵「あのー、実はですね、今日の放課後に 生徒の親が相談が有って来校したいとの事なんですが‥」
副校長 外ノ岡修二「相談? どんな内容なんですか?」
林多恵「はい‥その、生徒の下校時に、 不審者がいると言われてるんです」
副校長 外ノ岡修二「不審者?それは問題ですね‥ 緊急の職員会議を開いたほうがいいですかね?」
林多恵「いや、それがですね、その‥ 不審者を見たのは一人だけなんです」
副校長 外ノ岡修二「ひとりだけ?‥どういうことでしょうか?」
中島さゆ「あの、その親御さんの生徒だけが不審者を見て、他の生徒は誰も見てないんです」
林多恵「それに、そもそもほんとに不審者かどうかもよくわからないんです」
副校長 外ノ岡修二「でも親御さんはそう仰っていると?」
林多恵「はい、子供が怖がっていると言ってますので‥」
副校長 外ノ岡修二「うーん‥ちなみにその生徒さんのお名前は?」
林多恵「あっ、三井輝くんです 先月の終わりに転向して来た」
副校長 外ノ岡修二「三井‥輝‥」
中島さゆ「副校長、ご存じですか?」
副校長 外ノ岡修二「あっ、いや‥そうですか‥ それは困りましたね」
林多恵「とりあえず放課後に会議室でお話を伺って、それから対処を考えようかと‥」
副校長 外ノ岡修二「わかりました、ぜひそうしてあげて下さいお二人とも、よろしくお願いしますよ」
林多恵「はい」
中島さゆ「(私も含まれたのか‥)」
〇学校の廊下
中島さゆ「何故か私も巻き込まれている‥」
林多恵「まあ、いいじゃないですか 助けると思って」
中島さゆ「うーん‥貸しだからね」
林多恵「はーい! それにしても副校長も大変ですよねー 校長が戻ってくるまでは、校長代行も務めないといけないし」
中島さゆ「まあね‥でも、来週には戻ってくるんだっけ?」
林多恵「たしか、そうかなぁ? でも校長の産休って、あんまり聞かないですよね?」
中島さゆ「女性で30後半で校長って、異例の抜擢だからね!滅多にないらしいから」
林多恵「で、40で産休と」
中島さゆ「ねー、そう思うと人生長いなぁって考えちゃうよ、私もまだまだいけるかなー!」
林多恵「いけるといいですねー」
中島さゆ「おい!思ってないだろ!」
林多恵「思ってますよー いろいろとー」
中島さゆ「何をだよ!?」
林多恵「例えばー、例の不審者の事とか」
中島さゆ「はいはい、そっちね で、不審者が何なわけ?」
林多恵「あのー、さっきは先生にも言ってなかったんですけど、ちょっと変なとこがあって‥」
中島さゆ「変なとこ? 何が?」
林多恵「赤いコートなんです」
中島さゆ「赤いコート?」
林多恵「はい、服装が」
中島さゆ「‥まあ、そういうこともあるんじゃない? 不審者だって着たい服を着るでしょう?」
林多恵「でも、毎回なんですよ?」
中島さゆ「毎回?」
林多恵「毎回、現れる時は必ず赤いコートなんですって」
中島さゆ「‥‥」
〇役場の会議室
会議室
中島さゆ「緊張する?」
林多恵「うーん、何ていうか、正直に言うと‥」
中島さゆ「なに?」
林多恵「めんどくさい」
中島さゆ「正直すぎるよ」
トントン!!
中島さゆ「はい、どうぞ」
三井楓「失礼します、三井です」
三井輝「こんにちはー」
林多恵「はい、こんにちは じゃあ‥どうぞお座りください」
三井楓「はい‥輝も座って」
三井輝「はーい」
林多恵「えーっと‥今回の件ですね、副校長とも話し合いまして、私たち二人で対応させていただくいうことで‥」
三井楓「副校長‥」
林多恵「はい」
三井楓「あの‥先生お二人でですか?」
林多恵「はい‥ねえ? 先生?」
中島さゆ「えっ? あっ、はい あのー、改めてで申し訳無いんですが、 今回の出来事をお教え頂いて宜しいでしょうか?」
三井楓「あのー‥電話で散々話しましたけれど‥」
林多恵「‥‥」
中島さゆ「まあ、そうなんですが、今回は輝君もいるので、その時の事をより正確に把握できると思うのですが‥いかがでしょう?」
三井楓「そういうことなら‥わかりました」
〇通学路
それを初めてこの子から聞いたのは、1週間ほど前になります
最初は帰り道に赤い人がいると言われ、何の事かわかりませんでした
それが「赤いコートの女性がこっちを見ていると」と言っているとわかり、最初は知り合いだろうか?と思うようになりました
ただ、こちらに引っ越してまだ1ヶ月、親しくする方もいませんし、この子もようやく友達ができ始めたころ
知り合いというのも変な話だなと思っていました
そして次の日、今度は「赤いコートの女性が何か話しかけてくる」と言うのでした
特に近づいてくるような事はしないのですが、明らかにこの子に向かって話しかけているようなんです
ただその時は、何を言っているのか、内容までは聞き取れないようでした
お友達もその赤いコートの女性を見たか聞いたところ、なぜか決まって、この子が一人になった時にだけ、出て来るそうなんです
そしてまた次の日、赤いコートの女性は現れました‥でも今度は話しかけてくる内容がわかったそうなんです
〇役場の会議室
中島さゆ「何て言ったんですか?」
三井楓「それが‥」
〇通学路
「近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな 近づくな‥」
と延々と繰り返していたそうなんです
〇役場の会議室
中島さゆ「‥‥」
林多恵「‥‥」
三井楓「それ以来この子が学校に行くのは怖がってしまって‥それで先生にご相談したわけなんです」
三井楓「もちろん警察にも相談したんですが、 この子の前にしか出てこない事ということや、それに‥」
中島さゆ「それに?」
三井楓「赤いコートの女性なんて何か都市伝説みたいで、本気で受け取ってもらえない無いみたいなんです‥」
林多恵「警察か‥まあ、声掛け事案になるとは言え、なかなか信じてもらえないんですかね」
中島さゆ「‥それはそれとして、学校側も何か対策しないとね」
三井楓「今日は私が連れて帰りますので、明日からは何とか‥ほんとに、お願いします」
中島さゆ「はい」
林多恵「何とかします」
〇学校の廊下
三井楓「じゃあ、これで失礼します」
三井輝「さようならー」
林多恵「はい、さようなら、気をつけてね」
中島さゆ「‥あれ?」
林多恵「どうしました?」
三井楓「あのー‥」
林多恵「はい?」
三井楓「副校長先生の事なんですけど‥」
中島さゆ「副校長?」
三井楓「あの方、何度か離婚してるって本当ですか?」
林多恵「えっ?」
中島さゆ「いやー‥どうでしょう? プライベートなことなので‥」
林多恵「そうですね、私たちは何もしりませんが‥」
三井楓「‥そうですか、わかりました‥失礼します」
林多恵「あっ、はい‥」
中島さゆ「お気をつけて」
林多恵「‥何でしょう?あれ?」
中島さゆ「‥副校長の離婚歴?」
〇散らかった職員室
中島さゆ「で、どうするー、明日は?」
林多恵「そうですねー、どうしましょう?」
中島さゆ「ねえ、そう言えばさ、赤いコートの女性? これって都市伝説なの?」
林多恵「どうなんでしょうね? でも聞いたことはありますよ」
中島さゆ「えっ?ほんと?」
林多恵「はい 何か、赤いコートの女って怪談みたいなやつで、その女の話をすると、突然現れて、付きまとってくるとか」
中島さゆ「あー、何か今回の話と似てるね」
林多恵「あと、ほら、昔の口裂け女?ですっけ? あれも確か赤いコートだって、何かで読んだような‥」
中島さゆ「なるほどねー‥ じゃあこれが怖い話として子供に伝わってる可能性もあるわけね」
林多恵「そうですねー‥じゃあ、あれですかね? 妖怪的な何かってことですかね?」
中島さゆ「いやいや何言っての~ 妖怪なんているわけないじゃない?」
林多恵「えっ?だって昨日あんなに『さとり』の話をしてたじゃないですか?」
中島さゆ「あれはほら、あの状況でそんなものいないって言ったら、私が詰められそうで、なんか怖いじゃない?だからよ」
林多恵「そんな理由だったのか‥」
中島さゆ「それはそれとしてだけど‥どう思う?」
林多恵「どう?何がですか?」
中島さゆ「あの、副校長の話」
林多恵「いやー、知らなかったです 知ってました?」
中島さゆ「まったく! ていうか、副校長ってバツついてたの?」
林多恵「知らないなー」
中島さゆ「ねー、知らないよねー だいたい、副校長ってここに来て3年ぐらいでしょ?その時はもう結婚してたはずだけど?」
林多恵「となると、それより前の事ですかね?」
中島さゆ「まあ、そうなるね」
林多恵「でもー‥なんで三井くんのお母さん、 そんなこと知りたいんですかね?」
中島さゆ「‥ね?」
続く