エピソード2(脚本)
〇廊下の曲がり角
陽菜乃「・・・・・・やっぱり動きづらいわね」
郁斗「あれ、陽菜乃?」
陽菜乃「・・・・・・ぁ、花泪夫藍」
郁斗「あはは。前みたいに、郁斗でいいよ」
陽菜乃「結構よ」
郁斗「本当に陽菜乃は変わったな」
郁斗「陽菜乃もロビー行くんだろ?良かったら、一緒に行かないか?」
陽菜乃「・・・・・・構わないわよ」
郁斗「ありがとな」
二人は並んでロビーへと向かう。
郁斗「聞いたぞ、陽菜乃。パートナー成立半年で、もうブロンズクラスだって」
狩人にはクラスがあり、武器のレベルで変わる。
一桁はビギナー、10~39までがブロンズ、40~69がシルバー、70~99がゴールド、100がプラチナだ。
陽菜乃「ゴールドに言われたくないわ」
郁斗「そりゃ、俺は成立十数年のベテランだからな」
郁斗「・・・・・・なぁ、陽菜乃」
陽菜乃「何?」
郁斗「本当にパートナー・・・・・・青蘭でいいのか」
陽菜乃「余計なお世話よ」
郁斗「確かに青蘭は紅蓮の弟で特殊な武器だけど、陽菜乃の体格には・・・・・・」
陽菜乃「余計なお世話というのが聞こえなかった?」
郁斗「・・・・・・ごめん」
郁斗「陽菜乃は元々同期だから、心配なんだ」
陽菜乃「・・・・・・気にしてないわ」
陽菜乃(・・・・・・私は人喰いさえ、殲滅出来ればいいもの)
〇おしゃれな受付
青蘭「・・・・・・・・・・・・」
青蘭「・・・・・・あの写真、ヒナ笑ってたな」
陽菜乃の部屋に入った時、青蘭も卓上の写真を見ていた。
青蘭「・・・・・・あんな顔、見た事ない」
コツコツコツ
黄花「あら、おはよう。青蘭君」
青蘭「あ、おはよう。オウカ先輩」
考え込む青蘭の元に、黄花が歩み寄る。
黄花「陽菜乃ちゃんは?」
青蘭「支度中」
黄花「ここでいいの?廊下じゃなくて」
青蘭「オウカ先輩だって、一人じゃん。起こしに行ったら、多分?怒らせちゃった」
黄花「・・・・・・部屋に入っちゃったの?」
黄花「女の子の部屋に男の子はあんまり入っちゃ駄目よ」
青蘭「そうなの?合鍵はあるのに?」
黄花「それは緊急事態用よ。女の子は男の子に入られたら嫌なものなの」
青蘭「そうなんだ。教えてくれてありがとう、オウカ先輩」
黄花「どういたしまして」
カツカツ・・・
郁斗「お待たせ、黄花」
黄花「いいえ?じゃあ、巡回に行きましょうか」
郁斗「うん、よろしく」
黄花「じゃあ、またね」
郁斗「またな、陽菜乃」
青蘭「じゃあね、オウカ先輩。それにハナサフラン先輩」
二人を見送り、青蘭は陽菜乃に振り返った。
青蘭「えっと、ごめんね」
陽菜乃「何が?」
青蘭「勝手に部屋に入って」
陽菜乃「・・・・・・・・・・・・別にいいわ。それより、遅刻するから早く行くわよ」
青蘭「うん」
〇荒廃したセンター街
放課後
タンッ
陽菜乃「チッ、早いわね」
夕方。
学校に行った後、直ぐに禁止区域にやって来た陽菜乃。
現在、素早い人喰いを追い掛けていた。
陽菜乃「このままじゃ追い付かないわ。青蘭、使うわよ」
青蘭「俺の許可なんか取らなくていいんだよ」
陽菜乃「・・・・・・能力解放“風切り”」
緑の光が陽菜乃を包んだかと思うと、一気にスピードが上がった。
そして・・・・・・
陽菜乃「追い付いた・・・・・・」
陽菜乃「消えなさい!人喰い!」
追い付いた事で、人喰いを斬り倒した。
陽菜乃「・・・・・・はぁ、はぁ」
青蘭「大丈夫か?」
陽菜乃「問題ないわ」
青蘭(やっぱり、能力を使うのは早すぎたか?だけど、ヒナの望みだしな)
タンッ
郁斗「陽菜乃?何で居るんだ?」
呼吸を整えた所で、郁斗が陽菜乃達の元へ降り立った。
郁斗「今日、登校日だろ?」
陽菜乃「終わったから来たのよ」
郁斗「普通は休むもんだろ」
黄花「そうよ。ちゃんと体を休めないと」
呆れた様に言う郁斗の手には、銃の姿になった黄花が握られている。
陽菜乃「必要ない」
郁斗「・・・・・・陽菜乃、お前の気持ちは分かる」
郁斗「だけど、こんな無謀な事を紅蓮が喜ぶ訳ないだろ」
郁斗「紅蓮の事はいい加減・・・・・・」
陽菜乃「貴方に何が分かると言うの!」
陽菜乃「勝手な事を言わないでちょうだい!貴方には関係ない事よ」
青蘭「あ、一人で行くなよ!」
一人離れる陽菜乃を慌てて追い掛ける青蘭。
郁斗「・・・・・・生き急ぐなよ、陽菜乃」
黄花「諌めるのはパートナーの役目。ちょっと、干渉し過ぎちゃったわね?」
郁斗「そう・・・・・・みたいだな」
郁斗「どう足掻いても紅蓮には勝てないのか」
黄花「・・・・・・青蘭に期待、としか言えないわ」
カツカツ・・・パシッ
青蘭「一人で行くなって」
一人行動をする陽菜乃の手を、青蘭が掴んだ。
青蘭「ここにはまだ複数の人喰いが潜伏されてると言われてる。いくら狩人だからって、一人で歩き回るな」
陽菜乃「説教は結構。私は貴方と違って、経験は長いわ」
青蘭(そりゃ・・・・・・確かに、半年しか経験ねぇ奴の言う事なんか聞く必要ないかもしれねぇけど)
陽菜乃「人喰い共が何故ここを襲ったのかは知らない」
陽菜乃「・・・・・・でも、ここに居ると分かってるなら丁度いい」
陽菜乃「一匹残らず・・・・・・」
陽菜乃「──全て狩り取ってやる」
目の前の人喰いを斬る陽菜乃の瞳には、確かな憎しみが存在していた。
〇可愛らしい部屋
一年前
陽菜乃「癖ついちゃってるなぁ」
紅蓮「ヒナ、準備出来た?」
陽菜乃「ちょっと紅蓮!勝手に入らないで言ってるでしょ」
紅蓮「ああ、ごめんごめん」
紅蓮「外で待ってるから、早くおいで」
陽菜乃「・・・・・・分かったわ」
陽菜乃「本当に紅蓮ってば・・・・・・」
〇廊下の曲がり角
黄花「あら、紅蓮君」
紅蓮「やあ、オウカ」
黄花「あの話・・・・・・考えてくれたかしら」
紅蓮「ああ・・・・・・ごめん。やっぱり、俺は・・・・・・」
黄花「そう。残念だけど、仕方ないわね」
ガチャ
陽菜乃「お待たせ・・・・・・って、黃花」
黄花「おはよう、陽菜乃ちゃん」
陽菜乃「おはよ」
郁斗「ぁ・・・・・・お、おはよう。陽菜乃」
陽菜乃「あ、おはよう。郁斗」
黄花「ふふ、やっと来た。じゃあね、二人とも」
郁斗「また」
紅蓮「・・・・・・イクトってば、ヒナしか眼中にないって感じだな」
陽菜乃「?」
紅蓮「何でもない。行こうか」
陽菜乃の手を取り、歩き出す紅蓮。
その手を見て、陽菜乃は小さく笑った。
紅蓮「・・・・・・あ、そうだ。ヒナ、今日時間貰っていいかな?」
陽菜乃「?ええ、いいわよ」
〇児童養護施設
陽菜乃「あれ、ここって・・・・・・」
紅蓮「俺とヒナが出会った、武器達の養護施設」
紅蓮「ちょっと会わせたい人が居るんだ」
陽菜乃「会わせたい人・・・・・・?」
コツコツ・・・
青蘭「何、兄貴?呼び出したりして」
陽菜乃「えっと・・・・・・?」
紅蓮「紹介するよ、弟の青蘭だ」
紅蓮「青蘭、こっちは俺のパートナーのヒナ」
青蘭「ヒナ?」
陽菜乃「えっと、初めまして。陽菜乃です」
陽菜乃「・・・・・・紅蓮、貴方弟が居たのね」
紅蓮「武器に兄弟が居るのは不思議?」
陽菜乃「そんな事ないわ。実際に家庭があるのも見てるもの」
青蘭「・・・・・・で、何で呼び出した」
紅蓮「大事な弟に俺の大切な人を紹介したかったのと、大切な人に家族を知って貰いたかったから」
陽菜乃「!」
青蘭「大事?大切?」
紅蓮「青蘭はまだパートナーが居ないからな。まだ理解出来ないか」
青蘭「・・・・・・用はそれだけ?なら、俺は戻るよ」
そう言うと、青蘭は施設へと戻って行った。
陽菜乃「あ、あの、パートナーって意味で大切って事よね?あんな言い方じゃ、誤解されるわよ」
紅蓮「勘違いじゃないよ」
陽菜乃「え?」
紅蓮「パートナーだけじゃなくて、俺と恋人になってくれないかな?」
陽菜乃「え・・・・・・あ、あの・・・・・・」
紅蓮「人と武器が結ばれるパターンって、結構あるかるさ・・・・・・嫌、か?」
陽菜乃「いいえ、嬉しいわ」
紅蓮「そ、それじゃ・・・・・・」
陽菜乃「よろしく、紅蓮」
紅蓮「やった!」
陽菜乃「きゃっ」
笑顔で陽菜乃を抱き上げる青蘭。
それに驚きながらも笑顔で応える陽菜乃。
紅蓮「ねぇ、このまま写真撮っていいかな?」
陽菜乃「もう・・・・・・いいわよ」
〇おしゃれな受付
幸せな日々。
それは・・・・・・
ビービー!
突然、壊される。
???「《緊急事態!人喰いの襲撃!狩人は急ぎ急行せよ!繰り返す・・・》」
陽菜乃「人喰いの襲撃!?」
紅蓮「ヒナ!」
陽菜乃「ええ!」
陽菜乃は武装した紅蓮片手に、駆け出した。