真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

04/始まりの終わり(脚本)

真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

今すぐ読む

真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇コンビニのレジ
久野フミカ「ねえコハク・・・・・・何で生徒会長なんか立候補したの」
  七月二日、夜の十時前。校則違反のバイト中。
  僕はバイト先のコンビニで、同じく校則違反を現在進行中の生徒会長立候補者、久野本人にこう質問された。
  「・・・・・・そっちこそ」
久野フミカ「私? コハクが立候補したって聞いたから、何となく」
  こういうことをさらっと言うのが、久野である。
  こっちの気も、知らないで。
  「・・・・・・それ、答えになってないよ」
久野フミカ「だってコハク、私の質問にも答えてくれてないじゃん」
  客がいないため、久野はいつも通りスマホをいじりながら会話を続ける。
  「・・・・・・」
久野フミカ「ユキが、生徒会長になったから?」
  久野がスマホを見つめたまま尋ねる。
  「・・・・・・あっちの学校はもう、選挙終わった頃か」
  柏櫓ユキ。中学の時までは同じ学校に通っていた、もう一人の幼馴染。
  弟のジンと、久野と僕の四人でかつてはよくつるんでいた。もう随分長い間、連絡は取っていない。
  だからユキさんは関係ない。
  そもそもユキさんは、小学生の頃から児童会活動に精を出していた。今更、僕が真似する理由は無い。
久野フミカ「ホントに、連絡取ってないの?」
  僕もユキさんも、自分から進んで連絡を取ろうとするようなキャラじゃない。
  ユキさんの方は、ただ単に忙しいだけなのかもしれないが。
  「・・・・・・ユキさんは関係ない。どうせ、僕が勝つことは無いし。だからよく言うあの、何事も経験ってやつだよ」
久野フミカ「んー・・・・・・、それも、答えになってない気がするけど」
  「・・・・・・あ、いらっしゃいませー!」
  丁度良いところで客が来たようで、背後の自動ドアが開いた。

〇コンビニのレジ
  その後そこそこ忙しくなってしまったため、これ以上久野と話すことは無かった。
  そして僕はこの時点で、何となく察してもいた。
  この選挙、多分久野が勝つのだろう。
  久野には一年分のアドバンテージと他学年への影響力がある。一方ミウさんの支持層は、そうは言ってもまだ二年生がメインだ。
  全学年の生徒に選挙権が与えられる以上、久野の勝利は確実のはず。
  そして結果は僕の読み通り、久野が生徒会長に当選した。

〇渡り廊下
  ただ、僕が想定していなかったことが一つ、選挙の当日に宮浦先生から告げられた。
  「僕とミウさんが、副会長?」
宮浦先生「うん。実は今年からそうなったらしいんだよ」
宮浦先生「だから会長は久野さんになっちゃったけど、これからは同じ生徒会関係者として、一緒にがんばっていこうな! 虎丸!」
  ここで僕が副会長を辞退したら、生徒会顧問の宮浦先生がかわいそう、という一時の気の迷い、
  悪魔の囁きに耳を傾けてしまった僕は、副会長になることを承諾してしまった。
  「はい、がんばります・・・・・・」

〇鏡のある廊下
  そして無事掃除も終わった新生徒会室の前、後悔に苛まれている今に至る。
  この扉の先には生徒会総選挙の勝者久野と、生徒会総選挙の敗者ミウさんがいる。
  どう考えたって、気まずいに決まっている。
  「はぁ・・・・・・」

〇生徒会室
  意を決して生徒会室の扉を開けると、久野が机に座ってスマホをいじっていた。
久野フミカ「あ、コハクじゃん」
久野フミカ「今日はおつかれー。これからよろしく」
  演説の時に着ていた巫女服はもう着替え終えていたようで、だるそうに手で顔を仰いでいる。
  「あ、よろしく・・・・・・」
星木ミウ「コハク君、さっきの良い演説だったよ」
  ミウさんの方は、パイプ椅子に座って読んでいた文庫本に押し花のしおりを挟むと、一瞬だけこちらを見て目を細めた。
  「ど、どうも・・・・・・」
星木ミウ「これから副会長同士、仲良くしてね」
  そしてすぐに視線を落とし、また本の続きを読み始めた。
  「うん、よろしく・・・・・・」
久野フミカ「・・・・・・」
星木ミウ「・・・・・・」
  「・・・・・・」

〇土手
  その後宮浦先生が大分遅れて生徒会室にやってくるまで、僕達三人は言葉を交わすことは無かった。
  この先が大変思いやられる。
  僕は精神的に疲労困憊のまま、ようやく帰路に就いた。
  七月七日、七時前。
  今年も夜空は雲に覆われていて、天の川は見えなかった。

次のエピソード:05/強盗

成分キーワード

ページTOPへ