第十話 高校時代【前編】(脚本)
〇教室
栄田 駿(わかってる。この夢は 【最後】を見るまで醒めることはない)
栄田 駿(あの最悪の【最後】を見るまで)
〇教室
佐伯 栞里「やっと起きた! 頭から水でもかけようかと思ってたよ」
〇教室
足立 雄輔「人が気持ちよく寝てんのに 起こすんじゃねえよ」
佐伯 栞里「おや、そんなこと言っていいの?」
佐伯 栞里「もうバイトの時間になるから 起こしてあげたのに」
足立 雄輔「えっ、マジで!?」
佐伯 栞里「そうよ。もう五時半」
足立 雄輔「やばい! つーか、お前も同じバイト先だよな?」
佐伯 栞里「だから起こしたの。 雄輔、自転車持ってるわよね?」
足立 雄輔「まさか乗ってく気か!?」
佐伯 栞里「当たり前じゃない。起こさずに 自転車を奪うという選択肢もあったのよ」
足立 雄輔「ねぇよ、そんな選択肢! 手癖悪すぎだろ」
佐伯 栞里「せっかく起こしてあげたのに。 恩を仇で返すのね」
佐伯 栞里「ああ、困ったなあ! バイトに遅れてしまうなあ」
佐伯 栞里「こんな時、自転車があればなあ」
足立 雄輔「ああ、もうわかったよ 乗ってけ、チクショウ!」
佐伯 栞里「そうこなくっちゃ!」
〇土手
佐伯 栞里「早い早い! 流石男の子!」
足立 雄輔「栞里、お前重いんだよ! ちったぁ痩せろ!」
佐伯 栞里「うーん、風が気持ちいいねー!」
足立 雄輔「聞け!」
足立 雄輔(変な奴。何が楽しくて僕なんかに 付きまとってるんだろう)
足立 雄輔(だけど悲しいことに今の僕には)
足立 雄輔(こいつくらいしか友達らしい友達は いないんだよな)
足立 雄輔(親父が生きてた頃が懐かしいぜ)
〇渋谷のスクランブル交差点
足立 雄輔「僕と遊ぶ子、この指止ーまれ!」
「きゃー! 止まるー! 止まっちゃう!」
足立 雄輔(このまま、こんな風に生きていけると 思ってたのに)
〇海
アナウンサー「こちら、日本海上空です」
アナウンサー「スターダスト航空S578便が、 エンジントラブルを起こした模様です!」
アナウンサー「海洋上に胴体着陸を試みたようですが あえなく機体は分解」
アナウンサー「生存者の発見は絶望的です!」
アナウンサー「なお、航空機にはあの大黒運送の社長、 足立彰雲氏も乗っていた模様で・・・」
〇シックなリビング
足立 雄輔「嘘だろ? 親父! お袋!」
〇葬儀場
足立 雄輔(これからどうすればいいんだ? 遺産? 後見人?)
足立 雄輔(今まで誰かに聞けば何でもやってくれた)
足立 雄輔(今更一人で何でもやれだなんて そんなのないだろ!)
足立 雄輔「どうしよう・・・」
???「わからなくて当然さ。 君はまだ子供だからね」
足立 雄輔「え?」
足立 貞夫「やあ、兄さんのことは残念だった」
足立 貞夫「何も心配はいらないよ 叔父さんがこれからは、君のお父さんだ」
足立 雄輔「あ、ありがとう、貞夫叔父さん」
足立 雄輔(あれ? でも叔父さんて確か)
〇シックなリビング
足立 彰雲「ああ、腹が立つ!」
足立 雄輔「どうしたの、父さん」
足立 彰雲「ああ、雄輔か。どうもこうもない。 またあのバカがやらかしたんだ」
足立 雄輔「あのバカって?」
足立 彰雲「貞夫だよ。あいつの強引なやり方のせいで トラブルが絶えん」
足立 彰雲「雄輔、早く成人して父さんを助けてくれ」
足立 彰雲「お前と二人なら、あいつを会社から 追い出せる」
〇車内
足立 雄輔(大丈夫なのか? そんな叔父さんについて行って)
足立 貞夫「さ、着いたぞ」
〇地下の部屋
足立 貞夫「ここが今日から君の部屋だ」
足立 雄輔「えっ!?」
足立 貞夫「うちは兄さんの家ほど裕福じゃなくてな」
足立 貞夫「客間はここしかないんだ」
足立 雄輔「でも、叔父さんて副社長じゃないの?」
足立 貞夫「副社長と社長じゃあ、もらえる額は 天と地ほどに違うんだ」
足立 貞夫「不便をかけるが、よろしく頼むよ」
足立 貞夫「家のことは家政婦に任せてある 困ったら彼女に何でも言うと良い」
足立 雄輔「・・・」
足立 雄輔「なんだよ、この部屋。刑務所かよ。 窓も机もない」
足立 雄輔「石みたいに固いベッドだ。 僕、本当にここに寝泊まりするの?」
竹中 菊代「こんにちは、お坊ちゃま。 私はこの家を任されている竹中と申します」
足立 雄輔「あ、家政婦さん。叔父さんは?」
竹中 菊代「旦那様なら会社に行かれましたよ」
足立 雄輔「そっか。叔父さんにお願いしたいことが あってさ・・・いつ、帰ってくるの?」
竹中 菊代「基本あちらで寝泊まりされてます ここへはいらっしゃいません」
足立 雄輔「えっ?」
竹中 菊代「何かありましたら私にお話下さい」
足立 雄輔「そ、そっか。 じゃあ家政婦さんでもいいか」
足立 雄輔「実は新学期になるからさ、 教科書を買いたいんだけど」
竹中 菊代「わかりました。申請してみます それまでお友達のものをお借りなさいませ」
足立 雄輔「マジかよ」
足立 雄輔(貯金なんてない。親父のクレカはもう 使えなくなってた)
足立 雄輔(どうすればいいんだ)
〇渋谷のスクランブル交差点
足立 雄輔「ねー、遊ぼうよ」
ギャル2「金無くてどうやって遊ぶのよ。 私帰る」
ギャル1「超ツマンネ。あたしも一抜けた」
足立 雄輔「え?」
足立 雄輔(友達って、こんな簡単に いなくなるものなのか?)
〇教室
足立 雄輔「サボっても誰も遊んでくれないし 学校行くか」
足立 雄輔「あ、でも教科書」
足立 雄輔「あのさ、教科書貸してくれないかな」
同級生1「悪い。今日持ってきてないんだわ」
足立 雄輔「あのさ、教科書を」
同級生2「親父さんのカードで店ごと 買えばいいんじゃないか?」
同級生2「以前君がうちの生活を馬鹿にしたこと 忘れたとは言わせないよ」
〇川に架かる橋の下
足立 雄輔「・・・」
足立 雄輔「僕の周りって全部金で出来てたんだな」
足立 雄輔「金がなくなった途端、スマホも 友人も全部なくなっちまった」
足立 雄輔「教科書も買ってくれない叔父に 刑務所みたいな部屋」
足立 雄輔「僕が何をした? どうしてこんな目に遭わなきゃならない?」
足立 雄輔「グスッ」
足立 雄輔(僕が死んでも、 誰も悲しんではくれないけど)
足立 雄輔(楽にはなる。 それに親父に文句も言えるかもな)
???「あのさー、ひょっとして 自殺しようとなんてしてないよね?」
足立 雄輔「えっ?」
〇空
佐伯 栞里「迷惑なんだけど。 見られてる前で死なれても」
佐伯 栞里「私が見殺しにしたみたいじゃない」
〇川に架かる橋の下
足立 雄輔「べ、別に死のうとしてねーし」
佐伯 栞里「や、明らかにヤバい足取りで 川へ向かってたわよ、あんた」
足立 雄輔「放っといてくれよ! お前に関係ないだろ」
佐伯 栞里「関係はないわ。ただ、死ぬなら 私の見えないところで死んでってだけよ」
足立 雄輔「お前血も涙もねぇのか」
佐伯 栞里「あるに決まってんじゃない。馬鹿なの?」
足立 雄輔「例えだよ!」
足立 雄輔「・・・」
佐伯 栞里「死ぬ気、失せた?」
足立 雄輔「だからそんなのないって」
足立 雄輔「でも、少し落ちついた」
佐伯 栞里「そ、良かった」
〇空
〇川に架かる橋の下
佐伯 栞里「へえ。じゃあ、叔父さんがあんたの 後見人になったんだ」
足立 雄輔「ああ。副社長だからお金がないらしくて 教科書代もくれないんだ」
佐伯 栞里「そんな副社長いる? 何て会社?」
足立 雄輔「大黒運送」
佐伯 栞里「大黒運送!? 超巨大企業じゃない! 絶対嘘よ!」
佐伯 栞里「・・・」
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一見爽やかな救いの出会いなのにー😂何がどうなってああなるの!やっぱり次が気になります!
まだまだ片鱗ですね✨
でも、今までの流れからすると、しおりは駿の正体に気付いてるって事ですよね…?
次行ってきます💨
栞里ちゃん強い!!
今の段階では、なぜ二人の関係がこじれるのかわからないですね。
子どもはやっぱり、親がいなくなっても生きていける力が備わるよう、育てなくてはですね……