ゴリラ魔法少女

竹間単

エピソード1(脚本)

ゴリラ魔法少女

竹間単

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ゴリラ魔法少女
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〇川沿いの公園
  地球外生命体と魔法少女が戦うようになって、数年が経った。
  今日もまた、地球に降り立った生命体が街を破壊している。
  そんな地球外生命体の近くで、神秘なる光に包まれた二人の少女がいた。
ミカ「魔法少女☆ミカ、見参!」
幸子「魔法少女☆幸子、見参!」
ミカ「・・・・・・」
幸子「・・・・・・」
ミカ「・・・・・・」
幸子「何か言いなさいよ」
ミカ「あ、あはは」
ミカ「まさか幸子ちゃんも魔法少女だったなんて」
ミカ「ビックリだよ、あはは」
幸子「他には?」
ミカ「えっと、その」
ミカ「うーん・・・」
ミカ「強そうだね?」
幸子「ゴリラだからね!」
ミカ「知り合いに会っても正体バレなそうだね」
幸子「ゴリラだからね!」
ミカ「バナナが好きそう」
幸子「ゴリラだからね!?」
ミカ「・・・・・・」
ミカ「魔法少女も多様化の時代なんだよ、きっと」
幸子「私の目を見て言ってくれる?」
ミカ「なんかごめん」
幸子「不公平にも程があるでしょ!」
幸子「あんたは可愛いひらひらの衣装を着て魔法で戦う魔法少女」
幸子「私はゴリラの握力で敵を握り潰すゴリラ魔法少女」
幸子「何よ、ゴリラ魔法少女って!」
ミカ「ゴリラ魔法少女は幸子ちゃんが言い出したんだよ・・・」
幸子「最近は物理で戦う魔法少女もいるけど、それにしたって衣装は可愛いじゃない!」
幸子「何で私はゴリラなのよ!」
ミカ「少女よりゴリラの方が強いからかな」
幸子「あんたが言っても説得力無いわよ」
幸子「ああもう!」
幸子「私、魔法も使えなければ少女の姿でもないじゃない」
幸子「魔法少女って何!?!?」
ミカ「私に聞かれても」
幸子「あんたは真っ当な魔法少女でしょ!?」
幸子「私に教えてよ、納得できる魔法少女の概念を!」
  二人はうっかり忘れていたが、
  二人が言い争いをしている間にも、地球外生命体は街を破壊し続けている。
ミカ「大変!」
ミカ「幸子ちゃん、そんなことより戦わないと!」
幸子「”そんなこと”じゃないわよ!」
幸子「ゴリラなのよ!?」
幸子「ゴ・リ・ラ!!」
ミカ「ごめん。言い方が悪かったね」
ミカ「だけど街が・・・」
幸子「私だって戦わなきゃいけないことは分かってるわよ」
幸子「今やいくつもの惑星が地球を狙っているんだもの」
幸子「戦わなければ、よく分からない地球外生命体に地球は侵略されるわ」
ミカ「それなら」
幸子「でも、ゴリラなのよ!?」
ミカ「強そうじゃない」
幸子「強いけども!」
ミカ「地球を守ればヒーローだよ」
幸子「ヒーローでも、ゴリラなのよ!?」
幸子「そもそも何故私はゴリラに変身して戦ってるの?」
幸子「ゴリラで勝てるなら武装した人間でいいじゃない」
ミカ「私に言われても」
幸子「どうして私はゴリラなの!?」
幸子「ねえ、教えてよ!!」
ミカ「たいへーん☆ 地球外生命体がどんどん街を破壊してるから、倒しに行ってくるね!」
幸子「あ、ちょっと!!」
  ミカは幸子から逃げるように、地球外生命体を倒しに向かった。
  幸子は小さくなるミカの背中に向かって大声を投げる。
幸子「私がゴリラ魔法少女だってこと、誰にも言わないでよ!?」
幸子「絶対に二人だけの秘密だからねーーー!!!!」
  ミカは魔法のステッキから出た光で空にOKと書いてから、その光を地球外生命体にぶつけた。
  ミカの攻撃を受けた地球外生命体は、断末魔の悲鳴を上げながら霧散した。
  幸子の出番は無かった。

〇見晴らしのいい公園
  数刻後。
  幸子の通信機が鳴った。
幸子「はい、こちら地球の幸子」
上司「おつかれ、幸子くん」
上司「周りには誰もいないな?」
上司「先ほど変身装置のエラーで、君の地球人への擬態が解けたようだが、平気だったかね」
幸子「はい。同級生に本来の姿を見られましたが、ゴリラ魔法少女だと言って押し切りました」
上司「ゴリラ魔法少女?」
上司「確かに我々は地球のゴリラという生物と姿形が似ているが」
上司「押し切れるものなのかね」
幸子「押し切れました」
上司「押し切れたんだ」
上司「・・・まあいい。その調子で今後も地球の偵察を頼むよ」
上司「我々が地球を侵略する準備が整う日まで」
幸子「ふう」
  通信機を切った幸子はそれを懐にしまい、代わりに変身装置を取り出した。
  幸子が変身装置のボタンを押すと、幸子の姿はゴリラから地球人のそれへと変わった。
幸子「あー、疲れた」
  幸子は首をポキポキと鳴らすと、展望台から、人で溢れる街を見下ろした。
幸子「私だけに限らず、地球では、誰もが秘密を胸に生きている」
幸子「それらの秘密をまとうことで、地球は醜く歪んだ美しいものになっているのだと、私は思う」
幸子「さて」
幸子「魔法少女☆ミカという、人間離れした力を持つあの娘は、果たして地球人だったのか」
幸子「それとも、私と同じ地球外生命体だったのか」
幸子「そもそも生粋の地球人というものがこの世に存在するのか」
幸子「・・・どうでもいいことか」
幸子「数年後には今の地球人など絶滅しているのだから」
  幸子は大きく息を吸うと、人の溢れる街へと歩き出し、人混みに紛れて消えていった。

コメント

  • いやいやたまげましたよ

  • 魔法少女ゴリラすごいなぁ…と思っていたら、まさかの裏切り!笑
    まさかゴリラの方が本物の姿だなんて、誰も思いませんよね。
    通信機がバナナなのがよかったです。笑

  • 魔法少女に変身してゴリラになった…じゃなくてよかった!笑
    そうだったら不憫すぎて…。
    でも…物理系のゴリラと見せかけておいての魔法攻撃!なら有効かもしれないですね笑

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