《エデン》

草加奈呼

エピソード31 番外編 ヴァルのモテ期(脚本)

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〇兵舎
  紅蓮が風華と旅立ってから、
  数日後──
モス「おい、頭領が旅に出たらしいな」
ケンタ「ああ、なんでもモステアの王女様に 一目惚れしてついていったらしい」
テリー「お、おい、それじゃあ、まさか・・・」
「ヴァルは頭領に振られた!?」
モス「もしかして、チャンスなんじゃねぇか!?」
ケンタ「今まで、頭領に遠慮していたが・・・」
テリー「俺たちにも春が・・・!?」
モス「お、おい! おまえら、抜け駆けはナシだぜ!」
ケンタ「おう、アタックする時は、3人一緒だ!」
テリー「でも、ひとつだけ懸念が・・・」
「なんだ?」
モス「なるほど、セザックさんか・・・」
ケンタ「ああ見えて28歳だからな」
テリー「結婚を考えていてもおかしくはない」
モス「セザックさんは、頭領のお目付役だし、 仕事柄ヴァルと仲がいい」
テリー「要は、セザックさんが、ヴァルの事を どう思ってるか、だろ?」
ケンタ「だな! 直接確かめに行くべ!」
セザック「え・・・? ヴァルの事をどう思ってるかって?」
セザック「うーん、そうだなぁ・・・」
セザック「まあ、ヴァルはたしかに意外と家庭的では あるし、仕事のパートナーとしても申し分ない」
「えっ、じゃあ・・・」
セザック「好きか嫌いかで言ったら、好きだけど」
「ええっ!?」
セザック「でもまあ、妹みたいなもんかな」
「ほっ・・・」
セザック「で、それがどうしたの?」
「い、いやぁ、なんでもないです!」
セザック「・・・・・・・・・・・・」
セザック「なんか、面白くなってきたなぁ♪」

〇兵舎
  数日後────
マック「はじめまして! 新人クルーのマックです! よろしくお願いします!」
セザック「元気がいいね、よろしく!」
セザック「じゃあ、ヴァル。 彼に仕事を教えてあげて」
ヴァル「はーい」
マック「よ、よろしくお願いします!」
ヴァル「そんな、固くならなくていいよー」
ヴァル「あたいはヴァルキュリア。 ヴァルでいいよ」
マック「は、はい! ヴァルさん!」

〇古い倉庫の中
ヴァル「ここが第一倉庫ね」
ヴァル「まあ、最初は商品チェックと掃除などの 雑用が多いと思うけど、」
ヴァル「慣れてきたら、 船に乗って運搬してもらうよ!」
マック「あの、それって、 他の国にも行けたりするんですか!?」
ヴァル「もちろん、行くよ! でも仕事だから、行けるのは港周りだけで、観光とかはできないけどな」
ヴァル「あ、ヒュートリーなんかは、大きな港町 だから、町並みも綺麗で──」

〇古い倉庫の中
モス「おい、あいつ誰だ?」
ケンタ「新人らしいな」
テリー「俺たちのアイドル、 ヴァルと親しげに喋りやがって・・・!」
「新人のくせに!!」

〇兵舎
モス「おい」
ケンタ「ちょっとツラ貸せや」
マック「ひ、ひえぇ」

〇港の倉庫
モス「おまえ、新人らしいな」
マック「は、はい! マックです!」
モス「おう、俺はモス。 こっちはケンタとテリーだ」
モス「おまえ、ヴァルと親しげに話してたなぁ?」
マック「は、はい。ヴァルさんから、 仕事を教わるように言われたので・・・」
ケンタ「これからは、俺たちが仕事を教えてやるよ。 ヴァルの手を煩わせるこたぁねぇ」
マック「え、えええ、いいのかなぁ・・・?」
「いいんだよ・・・っ!?」
ヴァル「なぁーにが、 俺たちが仕事を教えてやる、だ!」
ヴァル「おまえたちも、まだまだ半人前だろうが!」
「ヴァ、ヴァル!!」
ヴァル「あたいと 頭領代理のやり方に文句があるなら・・・」
ヴァル「かかってきな」
モス「お、おう・・・!」
ケンタ「ヴァルと手合わせか・・・!」
テリー「3人がかりなら・・・!」
マック「あ、危ないですよ、ヴァルさん!」
ヴァル「心配すんなって〜」
ヴァル「あたい、そんじょそこらの男には 負けた事ないから・・・さっ!!」
「ごふっ・・・!!」
モス「や、やっぱつえぇ〜・・・」
マック「す、すごい・・・」
マック「ヴァルさん、カッコいい・・・」
マック「ヴァルさん、すごいです! 強いんですね!!」
ヴァル「あ・・・いやぁ〜」
ヴァル「やっぱり、海の女やってると、男どもに ナメられるからさ〜」
ヴァル「これくらいできないと、 やっていけないんだわ・・・」
ヴァル「・・・・・・」
ヴァル「やっぱり、 女の子はおしとやかな方が・・・ いいよな・・・?」
マック「そんな事ないです!」
マック「おしとやかでも、強くても、」
マック「凛としたヴァルさんは、カッコいいです!」
ヴァル「そ、そんな事言われたの初めてだわ〜!」
ヴァル「あ、あ! ちょっとセザックに 用事あるの思い出した!」
ヴァル「後は、掃除でもしておいて!」
ヴァル「じゃ、じゃあ!」
マック「・・・・・・」
マック「ヴァルさん・・・」

〇兵舎
ヴァル(わー! わー! わー!)
ヴァル(び、びっくりしたー!)
ヴァル「そ、そうだよ、びっくりしたんだよ!」
ヴァル「このドキドキは・・・ びっくり、したんだよ・・・」

〇古い倉庫の中
  数日後────
ヴァル「えーっと、あとは、 これと、これと・・・」
マック「あれ・・・? あそこの荷物、グラついて・・・」
マック「ヴァルさん、危ない!!」
ヴァル「えっ?」
「わわっ!?」
ヴァル「いたたた・・・」
マック「ヴァルさん・・・大丈夫ですか?」
ヴァル「だ、大丈夫・・・」
ヴァル「・・・わぁ!」
マック「あっ、すみません・・・!」
ヴァル「あー、ごめん。 積荷がぐらついてたのか・・・」
ヴァル「ありがとう」
マック「い、いえ! ヴァルさんが無事で良かったです!」
マック「この間、僕も助けてもらったので、 これでおあいこですね!」
ヴァル「ふふっ・・・」
マック「あはは・・・」
マック「いたっ・・・!」
ヴァル「えっ? ケガしたのか!?」
マック「い、いえ、大丈夫です・・・」
ヴァル「ダメだよ! 仕事中のケガはちゃんと見せて!」

〇兵舎
マック「いたたたた・・・」
ヴァル「うわー。めっちゃ赤くなってるよ」
ヴァル「シップ貼っておくから、酷くなりそうだったら、ちゃんと病院で診てもらってね」
マック「はい・・・」
マック「はぁ・・・。僕も、ヴァルさんみたいに カッコよく助けたかったです」
ヴァル「な、何言ってんだよ。カッコいいっていうのは、手段じゃなくて心意気だろ?」
ヴァル「マックは あたいを助けてくれたじゃないか」
マック「そう、ですけど・・・」
ヴァル「もっと自信もちなよ! 『僕がヴァルさんを助けたんだぞー!』 って!」
マック「・・・・・・」
マック「あ、あの、ヴァルさん!」
ヴァル「な、なに?」
マック「今度、僕とデートしてください!」
ヴァル「え・・・・・・」
ヴァル「ええええええええっ!?」

〇兵舎
ヴァル「なんか・・・そういうわけで・・・」
マック「僕たち、お付き合いすることに なりました!」
セザック「・・・・・・・・・・・・」
セザック「ま、まあ、いいけど、 仕事に支障が出ないようにね・・・」
セザック「あの・・・ヴァル・・・ 頭領のことは・・・」
ヴァル「頭領・・・? あー、紅蓮!」
ヴァル「いいのいいの! きっとあいつも忘れてるだろうし!」
マック「頭領・・・?」
ヴァル「ああ、うちの頭領、ちょっとワケありで ・・・旅に出てるんだよね」
セザック「ヴァルは、 頭領の事が好きだったんだもんね!」
ヴァル「ちょっ・・・セザック、やめてよ!」
マック「へえー。妬けちゃうけど、ヴァルさんが 好きになった人なら、きっと素敵な人なんでしょうね!」
ヴァル「素敵・・・?」
ヴァル「うーん、素敵とはちょっと違うけど、 頼りになるヤツ・・・・・・」
ヴァル「あ、あれ・・・?」
ヴァル「紅蓮のいいところが思い出せない!」
セザック「えっ?」
ヴァル「ちょ、ちょっと待って! さすがになんかあるだろ!?」
ヴァル「あいつにも、いいところが!」
ヴァル「今までは、好きな人の思い出補正が かかってただけ!?」
マック「ヴァルさん、落ち着いて!」
セザック(坊ちゃん・・・)
セザック(ヴァルは、今日も元気です・・・)
  番外編 おわり

次のエピソード:エピソード32 番外編 カートと魔術

コメント

  • えっ、それはひどくないかい!?😂いいところ思い出してあげて!不屈のゴキブリスピリッツとか(あれ?いいとこ……ろ?)
    モブトリオにも邪魔者消えた扱いされてるし😂
    紅蓮、完全失恋の傷心帰還じゃなくて良かったね……そうなってたらもう相手はセザックしかいないよ。
    ともかく、結果的にはみんな幸せそうでなによりです。

  • ヴァル報われてほしかったんで、幸せな日々を過ごせていてよかった~(^▽^
    そして、マック・モス・ケンタの並びに笑いましたw テリーは商品名でしょうかww

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