真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

03/三人目の立候補者(脚本)

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〇学校の部室
沖谷ナナコ「みーぽーん、新しい服持ってきたよー」
  丁度良いところで戻ってきたのは、宮浦先生ではなく生徒二人だった。
  みーぽんというのは、星木ミウのミとほを取った彼女のあだ名みたいなものだろう。
  すると片方の生徒が、僕の方を見ながらわざとらしく口を押えた。
沖谷ナナコ「・・・・・・ショコちゃんショコちゃん、もしかして私達、お邪魔しちゃった感じでは?」
  「え、いや、お邪魔って・・・・・・」
沖谷ナナコ「だって、ハックがみーぽんのこと押し倒したんでしょ?」
  「違うよ!」
  ハックというのは、コハクのハクを取った僕のあだ名みたいなものだろう。
沖谷ナナコ「じゃあ、ハックがみーぽんのこと脱がせたんでしょ?」
  「違うよ!」
  するとショコちゃんと呼ばれた方の生徒が、持ってきたタオルでみーぽんさんの髪を拭きながらこっちを睨んだ。
白津ショウコ「ちょっと二人ともー、遊んでないでみーぽんの着替え手伝ってよ」
星木ミウ「もー、これくらい一人でできるってば・・・・・・」
  口ではそう言いながらも、みーぽんさんは椅子に座ったまま、なすがままにしているように見える。
  ショコちゃんさんはそのまま、みーぽんさんの髪を慣れた手つきで結んでいく。
白津ショウコ「みーぽん、何でも一人でやるのは良くないんだよ?」
星木ミウ「うーん・・・・・・」
白津ショウコ「ナコちゃん、そこのカーテン閉めてー」
沖谷ナナコ「いえっさー」
  ナコちゃんと呼ばれた生徒が、空き教室のカーテンを閉めて回り始めた。
  「えっと、あの、僕は何をすれば・・・・・・?」
白津ショウコ「え、あ、えっと、ハックは・・・・・・」
  「・・・・・・」
星木ミウ「・・・・・・」
白津ショウコ「・・・・・・早く、廊下に出る!」
  我に返ったショコちゃんさんとみーぽんさんが、冷ややかな視線を僕に向けた。
  「あ、はい!」
白津ショウコ「それから、他の男子が来ないように見張っててよ!」
  「あ、はい!」
  僕はそそくさと廊下に出た。

〇学校の部室
  その後ミウさんが着替えを終えてから、僕は三人に先に帰ってもらうことにして掃除を再開した。
  後片付けを手伝ってもらわなかったのは、一人でやる方が気を遣わずに済むので楽な気がしたからだ。
星木ミウ「じゃあまあ、お互い頑張ろうね」
  「・・・・・・そうだね」
  最後に社交辞令を交わしてから、ミウさんと生徒二人は帰っていった。

〇学校の部室
  宮浦先生も結局その日は、教頭先生に呼ばれたとかで戻ってくることは無かった。
  職員室へ行く前に、偶然教室に残っていた生徒二人にミウさんの着替えとタオルを託したらしい。
  しかしこうなってしまうと、もう正直引き下がれないところまで来てしまった気がする。
  とは言えいずれにせよ、僕が勝てるわけがないことに変わりはない。
  僕が選挙で負けてしまえば宮浦先生にはどうしようもないし、ミウさんに恨まれるようなことも無いだろう。
  そう思って軽い気持ちで引き受けた次の日、まさかの三人目の立候補者が現れていた。

〇学校の部室
  「・・・・・・また、先生がそそのかしたんですか?」
宮浦先生「うん。半分諦めかけてたんだけど、何か急に立候補してくれることになったんだよ」
  七月二日、放課後。新生徒会室予定地、現よくわからない物置部屋にて。
  昨日に引き続き教室の掃除をしていたところ、宮浦先生から予想外の名前が告げられた。
  壊れて首の回らない扇風機が、また耳障りな音を立て始めた。
  今日も窓の外には、いつも通り雄大な入道雲がそびえ立っている。
  「でも、あの人こそ先生の手に負えるんですか?」
  久野フミカ。一年生の時からその圧倒的なカリスマ性でこの学校を牛耳ってきたマドンナ的存在。
  男女共に人気があり、文武両道なため先生達にも人気がある、僕の幼馴染である。
  改めて考えてみると、生徒会長に立候補していなかったのが不思議なくらいの凄い人だ。
宮浦先生「無理無理。あの迫力、話しかけるのすら緊張したもん」
  久野はこの学校の近くにある、久野神社の長女でもある。
  そのため年末年始には、神社で彼女の巫女服姿を一目見ようと長い行列ができるとか。
  勿論わざわざ年末年始に出かける程の行動力は、僕には無い。
  「じゃあ何で誘ったんですか」
宮浦先生「立候補者が増えれば増える程、票が分散すると思って」
宮浦先生「俺の本命は勿論、虎丸ただ一人だよ」
宮浦先生「頼んだよ、虎丸!」
  「えぇ・・・・・・?」
宮浦先生「それに星木さんと久野さんに共通するあの噂、虎丸も知ってるでしょ?」
  「・・・・・・まあ、はい」
宮浦先生「そう」
宮浦先生「あの二人、悪魔が憑いてるらしいんだよ」
  「・・・・・・」
宮浦先生「・・・・・・」
  僕も都市伝説は好きだが、ここまで特定された個人的なものには、正直ちょっと興味が薄れてしまう。
  「まああの二人は、敵も味方も多いでしょうから」
  根も葉もない、ただの嫉妬から生まれたであろう噂話。
  僕が好きなのはそういうのじゃなくて、神とか宇宙人とか人類滅亡とか、人智を超えた壮大な都市伝説だ。
  人を陥れようとするような黒い噂は、人間味があり過ぎて僕の好みじゃない。
  当の本人は、気にすらしていないのかもしれないが。

〇コンビニのレジ
久野フミカ「ねえコハク・・・・・・何で生徒会長なんか立候補したの」
  七月二日、夜の十時前。校則違反のバイト中。
  僕はバイト先のコンビニで、同じく校則違反を現在進行中の生徒会長立候補者、久野本人にこう質問された。

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