〇オフィスのフロア
悠「柊チーフ。今日はオレ、定時で上がるので よろしくお願いします」
柊「別にいいよ。 ・・・おっ？　まさかデートか？」
悠「違います！ 今日は《ＭＫカフェ》のオフ会なんです！」
　　何気なく発言したオレの言葉を聞いて、
　　突如、周囲の同僚たちがどよめき始めた。
同僚「へぇ～、いいなぁ。 俺もリアルのサングリアさんや青月さんに 会ってみたいよ」
柊「ＳＮＳで実況希望！」
同僚「むしろ、おれたちも参加させて!!」
　　いやいや無理だから！
　　実況なんてする暇ないし、
　　ギルドと無関係な人を
　　オフ会に呼んだことなんてないし！
　　オレは愛想よく笑って、
　　全てを華麗にスルーすることにした。
　　今日の披露宴オフ会には
　　青月さんも参加する。
　　どういった形であれ、
　　彼女に会えるのは嬉しいな。
　　それにようやく生身のトワにも
　　会えるんだ！
　　コンビを組んでもう３年にもなるし、
　　積もる話がたくさんある。
　　しかし、今まで頑なにオフ会への参加を
　　拒否していたトワが顔を出すなんて・・・
　　一体どういう風の吹き回しなんだろう？

〇渋谷駅前
　　予告どおり、
　　オレはさっさと仕事を切り上げて
　　急いで電車に飛び乗った。
　　オフ会は18時からだ。
　　17時には職場を出ることができたけど、
　　のんびりしていると遅刻してしまう。
　　オレは急ぎ足で駅の構内を駆け抜け、
　　飲食店が立ち並ぶ界隈を
　　脇目も振らずに突き進んだ。

〇居酒屋の座敷席
サングリア「皆！　新婦の《†悠†》さんが来たよー！」
ギルメン「へぇー、 悠くんって結構可愛い顔してるんだね」
ギルメン「何かイメージと違う～。 悠くんは筋金入りのオタクだから、 もっとヤバイ容姿の人かと思ってた！」
　　オレを見て、初対面の女性参加者たちが
　　口々に好き勝手な感想を言い合っている。
　　ヤバイ容姿って!?
　　オレ、一体どういうイメージを
　　抱かれてたんだ・・・
悠「トワはもう来てるの？」
サングリア「トワさんは仕事の関係で 少し遅れるんだって」
サングリア「『先に始めといて』って言ってたし、 もう始めちゃいましょう！」
　　オレは強制的にテーブルの真ん中の席に
　　座らされた。
　　隣の席はまだ空席だ。
　　おそらくトワが座る予定の席なんだろう。
　　席に着きながら、
　　オレは軽く周囲を見回し、
　　憧れの青月さんの姿を探した。
　　彼女はテーブルの端っこの席に
　　ちょこんと座っていた。
　　そして青月さんの隣には、
　　初めて見る顔の男性プレイヤーが陣取り、
　　彼女と親しげに談笑している。
悠（えっ？ ・・・えぇっ!? えええええぇぇぇぇっー！）
　　あの人は誰？
　　かなり青月さんと親しそうだけど・・・
　　少なくともオレは知らない人だ。
　　しかもレベルが高い！
　　ネトゲのオフ会では
　　あまり見ないタイプだ。
　　むしろ、リア充たちの合コンの方が
　　似合いそうな感じなんだけど・・・