エピソード1(脚本)
〇荒廃したセンター街
──人喰い。
その名の通り、人を喰らうモノ。
何故発生したのか、何故人を喰らうのか。
その一切は謎に包まれている。
青蘭「居たぞ」
陽菜乃「視認しているわ。早く武装して」
青蘭「ああ・・・・・・?あれ、子供か?」
そこには、人喰いに追われている子供達が居た。
陽菜乃「禁止区域に入ったあの子達が悪い」
陽菜乃「いいから早く武装しなさい」
青蘭「分かった分かった」
隣に居た青年が剣に姿を変えた。
陽菜乃「さっさと片付けましょう」
そう呟き・・・・・・娘─陽菜乃は地面を強く蹴った。
子供「ぁ・・・・・・」
子供「い、妹に手を出すな!」
「フタリマトメテクッテヤル」
子供「ひっ」
陽菜乃「邪魔よ」
???「ギャァアアッ」
「!?」
人喰いと子供の間に割り込み、人喰いを斬りつける陽菜乃。
子供「え・・・・・・もしかして、狩人?」
陽菜乃「聞こえなかった?邪魔だから、どっかに行ってて」
子供「う、うん」
子供達は慌てて物陰に隠れる。
青蘭(結局助けるんだよな)
陽菜乃「・・・・・・変な事考えてないでしょうね」
青蘭「さぁ?ほら、さっさと片付けるんだろ?」
陽菜乃「・・・・・・そうね」
そう返すと、彼女は武器である青蘭を構え直した。
???「カ、カリウド・・・・・・!?」
陽菜乃「ええ。貴方を狩らせて貰うわ」
???「ギャァアアアアッ」
人喰いは抵抗する間もなく、陽菜乃に斬り倒された。
陽菜乃は他に人喰いが居ないのを確認すると、青蘭を地面に突き刺す。
青蘭「おいおい、扱い悪いな」
陽菜乃「別にいいでしょ。直ぐにそうやって戻れるのだから」
子供「あ、ありがとう」
陽菜乃「ここは立入禁止区域よ。何故ここに居るの」
彼女達が居るのは人喰いの襲撃に遭い、荒廃した街だった。
子供「あのね、お母さんを探しに来たの」
妹らしい少女がそう陽菜乃を見上げながら言った。
子供「えっと、怖い人がいっぱい来たときに、お母さんがにげてって言って、そのあと迷子になっちゃった」
少女の言葉に、その母親がどうなったか察した。
兄の方も俯いている事から、分かっていないのは幼い妹だけの様だ。
青蘭「居る訳ないだろ。というか、その状況なら母親は人喰いに・・・」
陽菜乃「青蘭」
咎める様に名を呼ばれ、青蘭は口を閉じた。
子供「?」
陽菜乃「その先は言っては駄目」
青蘭「そうなのか?」
特に気にしてなさそうな青蘭の姿に、陽菜乃は溜め息を吐いた。
父親「お前達!」
「お父さん!」
男性が現れると、子供達が駆け寄った。
父親「どうしてここに居るんだ!」
男性は子供達の姿に安堵の息を吐き、直ぐに厳しい表情になる。
父親「ここに立ち入るなと言ってあるだろう!」
子供「ごめんなさい」
子供「だって、早くお母さんをさがさないと泣いちゃうっと思って」
妹の言葉に悲しそうな顔をし、彼はその頭を撫でた。
父親「・・・・・・梨沙、子供達を頼む」
梨沙「ええ、任せて」
子供「お母・・・・・・さん?」
子供「違うよ」
梨沙「・・・・・・さ、ここから離れましょ?」
父親「すまない、雛芥子」
雛芥子、というのは陽菜乃の狩人としての名前だ。
青蘭「あ、フウリンソウ先輩の子供だったんだ」
陽菜乃「風鈴さん、ちゃんと見ておかないと駄目じゃない」
父親「全くもってその通りだ・・・・・・本当に申し訳ない」
陽菜乃「・・・・・・人喰いに襲われかけてた」
父親「!」
父親「重ね重ね申し訳ない。子供達を助けてくれてありがとう」
子供達を連れ、男性は立ち去った。
陽菜乃「・・・・・・周辺を見回るわよ」
青蘭「了解」
そして、二人も荒廃した街へ歩き出した。
〇おしゃれな受付
人喰いに対し、人々は無力だった。
ただ逃げ惑い、喰われるしかなかった。
狩人と武器が現れるまでは
武器とは、自我を持ち、人の形を取れ、人喰いを倒すモノ。
武装と呼ばれる武器形態になり、契約を交わしたパートナーの狩人に扱われる事で威力を発揮する。
狩人は武装状態の武器を扱うだけでなく、契約により引き出された能力で人喰いを狩っていく。
契約の内容はパートナーとなった狩人と武器しか知らない。
黄花「あら、二人とも。お帰りなさい」
陽菜乃「ええ」
青蘭「ただいま、オウカ先輩」
黄花「風鈴君と梨沙ちゃんから聞いているわ。お疲れ様」
多くの狩人が在籍している特殊武装組織カサドル。
その拠点であるホーム。
狩人としての仕事を受発注している受付に立っている女性が二人を出迎えた。
青蘭「ありがとね、オウカ先輩」
陽菜乃「・・・・・・どうして、黄花が受付に?」
黄花「子供達の事といい、最近禁止区域に立ち入る人が多いでしょ?」
黄花「禁止区域に入る為には、ここの受付で許可証を貰わないといけない」
青蘭「けど、実際に部外者が入り込んでる」
陽菜乃「それで、受付の子達が呼び出されてるって事?」
黄花「ええ、そういう事」
陽菜乃「それなら呼び出されてる、だけでいいじゃない」
黄花「あら、情報は大切よ。特に私達はベテランの部類なのだから、アンテナは常に張ってないと」
青蘭「俺はまだ半年だよ、オウカ先輩」
黄花「そうね。でも、半年だとは思えない程の実力よ」
青蘭「そりゃ、俺は引き継ぎだし」
陽菜乃「・・・・・・もういいかしら。部屋に戻らせて貰うわ」
黄花「ええ・・・・・・あ、今回の事で呼び出しがあるかもだから、端末は持ち歩いてね」
陽菜乃「ええ」
青蘭「じゃあね、オウカ先輩」
黄花「ええ、また」
〇廊下の曲がり角
カツカツ・・・
青蘭「おい、あんまり先行くなよ」
青蘭「おーい、ヒナってば」
陽菜乃「・・・・・・」
陽菜乃の足がピタリと止まった。
陽菜乃「“ヒナ”って呼ばないでって言ったわよね」
青蘭「悪い悪い。つい癖で」
陽菜乃「・・・・・・」
悪びれた様子の無い青蘭に、陽菜乃は溜め息を溢した。
陽菜乃「今の私と貴方は狩人と武器のパートナー。 それを忘れないで」
青蘭「悪かったって、ごめん」
陽菜乃「・・・・・・分かったならいいわ」
青蘭(何で呼んじゃ駄目なんだ? ケジメの為って言ってたけど)
陽菜乃は青蘭をジッと見詰める。
陽菜乃「今、レベルはどれくらい?」
青蘭「18って所だな」
武器にはレベルというものが存在している。
人喰いを倒したり、パートナーと共に経験を積む事でそのレベルは上がっていく。
陽菜乃「そう」
青蘭「普通は一年かけて二桁に行くんだろ?」
陽菜乃「関係ないわ。貴方には少しでも早くレベルを上げて貰わないと」
青蘭「何を焦ってんだか」
陽菜乃「・・・・・・貴方、焦りなんて理解してるの」
青蘭「ん?焦ってるんじゃないのか?」
陽菜乃「・・・・・・もういいわ。貴方に言っても無駄だもの」
武器は自我はあっても、感情が無い。
レベルが上がる事で感情を理解し、宿していくのだ。
陽菜乃「今日はもう休む。だから、ついて来なくていい」
青蘭「分かった。お休み」
陽菜乃「・・・・・・お休み」
小さく返すと、陽菜乃は部屋へと入っていった。
それを見届けてから、青嵐も隣室に入っていく。
〇可愛らしい部屋
陽菜乃「・・・・・・はぁ」
自室に入った陽菜乃は、ベッドに倒れ込んだ。
陽菜乃「・・・・・・ちょっとだけ笑ってた。それだけでも、そっくりね」
そう呟き、卓上の写真を見た。
そこに写っているのは、男女が笑顔で並んでいる姿。
男の方は灰銀の髪に赤い瞳で、女の方は赤く長い髪に緑の瞳だ。
陽菜乃「やっぱり兄弟だね・・・・・・紅蓮」
〇可愛らしい部屋
「お・・・・・・おき・・・・・・お・・て・・・・」
陽菜乃「・・・・・・ん・・・・・・」
「おい・・・・・・起きろ・・・ば、おー・・・・・・ったく・・・」
陽菜乃「ん・・・・・・ぅん・・・・・・」
青蘭「いい加減起きろって・・・・・・ヒナ!」
陽菜乃「!ぐれ・・・・・・ん・・・・・・?」
青蘭「何寝ぼけてんだ?つーか、やっと起きたのかよ」
陽菜乃「・・・・・・青蘭、何で貴方が部屋に居るのよ」
青蘭「?ヒナ、ノが起きないから、起こしに来たんだよ」
陽菜乃「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
青蘭「早く支度しないと遅刻するぞ。今日は登校日だろ」
陽菜乃「・・・・・・出て行きなさい」
青蘭「?」
陽菜乃「早く出て行きなさい」
青蘭「わ、分かった。ロビーにいる、からな」
分からなくとも、怒りのオーラを感じた青蘭は直ぐに部屋を出た。
陽菜乃「・・・・・・最悪。そういう所までそっくりなんだから」