幸せは家族のかたちをしていない

白星ナガレ

Ep.1 家族のかたち(脚本)

幸せは家族のかたちをしていない

白星ナガレ

今すぐ読む

幸せは家族のかたちをしていない
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
「ねえ、素敵なネックレスだね~」
  あっ、ちょっと、引っ張らないで!
  あっ、あぁぁ・・・
  私のネックレス・・・!
「あ~・・・ ごめんごめん」
「友だちだもん、許してくれるよね?」
  ・・・
「ね?」
  ・・・
  ・・・うん
「ありがと~!」
「これからもよろしくね、さ・な・え🖤」

〇黒
  くだらない私の、つまらない人生
  これからも、ずっと続くと思ってた
  あなたに出会うまでは──

〇観覧車のゴンドラ
和樹「早苗、俺と・・・」
和樹「俺と、結婚してください」
  ──はい・・・!
和樹「よかった・・・ はは、そんなに泣くなよ!」
和樹「これからは、二人で・・・」
和樹「幸せな家庭を築いていこう」

〇黒
  これからも、

〇観覧車のゴンドラ
和樹「なぁ、ここ、覚えてる?」
早苗「うん・・・ もう13年前ね」
和樹「風夏も、もう中学生だな」
早苗「そうね」
早苗「あなたと結ばれて、 すぐに風夏を授かって・・・」
早苗「私、一生分の幸せを 使い切ったかと思ったわ」
和樹「はは、なんだそれ」
和樹「これからもきっと、ずっと幸せだよ」
和樹「ここから見える景色は ずいぶん変わってしまったけど──」
和樹「僕らはこれからも変わらないよ」
和樹「ずっと、幸せな家族だ」
早苗「ふふ、そうね・・・」
和樹「早苗、これ・・・」
早苗「えっ・・・」
早苗「ありがとう!」
和樹「開けてみて」
早苗「わぁ・・・素敵!」
和樹「これからもずっと、よろしくね」
和樹「早苗」
早苗「うん、ありがとう・・・ よろしくね、和樹」

〇黒
  ずっと、

〇おしゃれなリビングダイニング
風夏「あっ・・・おかえり! お父さん、お母さんっ」
和樹「ただいま、風夏」
早苗「ただいま 風夏、なんだか今日は楽しそうね」
和樹「あ、テレビ始まっちゃう」
  ”クイズ侍、はじまるよ~!”
早苗「なにかいいことでもあった?」
風夏「う、うん! あのね、演劇の先生が──」
早苗「演劇・・・?」
  ”一人、二人、三人斬り!”
早苗「早苗、あなたまた──」
早苗「女優を目指すのはやめなさいって 何度も言ってるでしょう!?」
風夏「で、でも、お母さん・・・私・・・」
早苗「あなたみたいな、おとなしくて 優しい子が・・・」
  ”さぁて、今日は何人斬りだ~!?”
早苗「あんな世界でやっていけるわけない!」
和樹「早苗、そんな風に・・・」
早苗「・・・私は・・・」
早苗「私は、風夏のためを思って──」
  ”発表は、CMの後!”
  ”サラつや、しなやかな髪へ”
  ”女優のKASUMIさんも愛用!”
早苗「カスミ・・・!?」

〇大きな木のある校舎
「私のことはカスミって呼んで! ね、早苗!」

〇おしゃれなリビングダイニング
早苗「カスミ・・・CMなんか出て・・・」
和樹「早苗?」
和樹「さ、早苗!」
風夏「テレビが・・・」

〇黒
「ふざけるな・・・」
「ふざけるなっ・・・」
「ふざけるな!」

〇おしゃれなリビングダイニング
和樹「早苗!」
早苗「あ・・・私・・・」
早苗「ごめんなさい・・・」
和樹「いいから、今日はもう休んで」
風夏「お母さん・・・手、大丈夫・・・?」
早苗「風夏・・・」
早苗「お母さんの言うこと ──わかってくれた・・・?」
風夏「・・・」
風夏「・・・」
風夏「うん、お母さん・・・」

〇ホテルの部屋
和樹「早苗・・・」
早苗「・・・さっきはごめんなさい」
早苗「──でも、風夏は・・・」
早苗「風夏はどうして、女優なんか──」
早苗「あいつと同じ道なんか──!」
和樹「早苗!」
和樹「落ち着いて・・・」
早苗「・・・」
早苗「ごめんなさい、私・・・」
早苗「テレビも壊しちゃったし・・・」
早苗「風夏もきっと、びっくりしたわよね・・・」
早苗「・・・お母さん、失格かな・・・」
和樹「大丈夫だよ、早苗」
和樹「何があっても僕らは家族だ」
和樹「これからもずっと、 それだけは変わらないよ」
早苗「・・・うん」
早苗「明日、風夏にも・・・ ちゃんと謝るわ」
和樹「そうだね、今日はもう寝よう」
和樹「おやすみ、早苗」
早苗「・・・おやすみ、和樹」

〇黒
  続くと思ってた
  今日も、明日も、明後日も
  当たり前に朝が来て
  当たり前に幸せな私たちは
  当たり前に一緒にいる
  そう、そんな日々が──
  これからも、ずっと続くと思ってた

〇おしゃれなリビング
「ママ~」
早苗「・・・」
「ママぁ~?」
早苗「・・・」
芽衣香「ママってば! 聞こえてるなら返事してよね!」
早苗「・・・ママじゃないもの」
芽衣香「ママはママでしょ! も~・・・いつまでそうしてるの?」
早苗「・・・」
芽衣香「あれ? ママ、そのネックレス・・・」
早苗「なに?」
芽衣香「ねえ、素敵なネックレスだね~」
早苗「ちょっと、触らないで──」
「あっ!」
早苗「・・・」
芽衣香「ご、ごめん・・・」
芽衣香「でもさ、娘だもん、許してくれるよね?」
早苗「・・・!」

〇教室
「友だちだもん、許してくれるよね?」

〇おしゃれなリビング
早苗「許すわけないでしょ・・・?」
早苗「あんたなんか、娘じゃない!」
芽衣香「・・・私はママの娘だよ?」
芽衣香「ね、ママ、これちょーだい?」
早苗「返して!」
芽衣香「どうせもう壊れちゃってるよ?」
芽衣香「すごーい・・・綺麗な石!」
早苗「返しなさい!」
早苗「な、なにするの・・・」
芽衣香「へへっ」
早苗「あっ、あぁぁ・・・」
芽衣香「あははっ!」
芽衣香「ね、割れちゃったね~!」
芽衣香「綺麗な石だったのに・・・粉々!」
芽衣香「あははははははっ!」
早苗「あんた──」
早苗「ふざけるな・・・ なんであんたなんかに・・・」
早苗「大切だったのに・・・」
芽衣香「・・・いったぁ~・・・」
芽衣香「わかってないな~・・・」
芽衣香「顔はダメでしょ、顔は」
芽衣香「でも、許してあげる」
芽衣香「私のママだから特別だよ?」
芽衣香「だからママも許してよ・・・」
芽衣香「ね?」

〇教室
「ね?」

〇おしゃれなリビング
早苗「だから、許すわけ──」
正宗「おいおい、何の騒ぎ?」
芽衣香「パパ! ママが怒るの!」
正宗「おいおいサキエ・・・またかよ」
正宗「あ、サチエだっけ? ・・・まぁ、どっちでもいいや」
正宗「許してやれよな~」
正宗「なんたって 俺たちは家族なんだからさ」
正宗「まあ仲良くやってこうぜ」
芽衣香「ね! パパも、こう言ってるし!」
芽衣香「これからもよろしくね、マ・マ🖤」
早苗「・・・!」

〇教室
「これからもよろしくね、さ・な・え🖤」

〇おしゃれなリビング
早苗「あんた、いちいち似てるのよ・・・」
芽衣香「え?」
早苗「家族? ママ? ふざけないで・・・」
早苗「私はあんたのこと 殺してやりたいくらいだわ」
正宗「おいおいおい そんな怖いこと言うなって」
早苗「あんたもよ」
早苗「私におままごとを押し付けるなら あんたも殺してやる」
正宗「は~、こわっ ちょっと頭冷やせよ、サチコ」
正宗「行こうぜメイコ ママを少し一人にしよう」
芽衣香「いいけど私はメイカだってば、もう!」
早苗「・・・」

〇黒
  私の幸せな日々も、私の幸せな家族も
  奪われたのは、突然だった──

〇飾りの多い玄関
早苗「はい」
スーツの男「土岐さん・・・」
早苗「え? えぇ、確かにうちは土岐ですが」
スーツの男「となると、土岐 早苗さんで 間違いありませんね?」
早苗「はい、私ですが・・・」
スーツの男「あなた方は対象なので 今すぐ離れてもらいます」
早苗「えっ? 何の話ですか?」
スーツの男「だから、あなた方ご家族は 選ばれたんですよ」
早苗「何に・・・?」
スーツの男「わかりやすく言いますと──」
スーツの男「家族ガチャに」
早苗「家族・・・ガチャ・・・」

次のエピソード:Ep.2 協力者

コメント

  • 怖いなと思いました。シミのように消せない過去と、どう向き合えばいいんでしょう? 更に、展開が、気になります。

  • おお…最後にすごい展開が飛んできた。設定が面白いですね。何がどうなって、ああなったのか、続きが気になります!

  • 長年寄り添った完璧な夫婦の図から、次々と幸せがはぎとられていくような描写に引き付けられました。早苗がどんどん暴走していく様が、これから見ものですね。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ