〇手
ケンイチ「泥に足を取られて動けない！」
ニュクス「どんどん沈んでいく・・・！」
ヴォロディームィル（あと少し魔力が回復すれば 召喚獣を喚べるが・・・間に合わねぇ!!）

〇骸骨
ヒカリン「心配せんでも溺死はせんよ？ 【腐蝕】で分解されるのが先やから」
ヒカリン「氷の道が・・・!?」

〇氷
オータ「グンマァ！」
スノー「ケンイチ君！お待たせ！」
ケンイチ「オータ！スノー！」
ヒカリン「飛んで火にいる何とやら・・・」
オータ「グンマァ!!」
ヒカリン（投擲？【腐蝕】を凝縮すれば一瞬でボロ屑や）
ヒカリン「硬ぁっ!?」
ヒカリン「なんや・・・何を投げたんや・・・」
オータ「スノーの生成したあずき味の棒アイス、 とても硬イ」
スノー「みんな早く馬に乗って！」
ケンイチ「ヴォロえもんも乗れ！」
ヴォロディームィル「俺様に指図すんじゃねぇよ」
ヴォロディームィル「なぁ？テメェらは俺様を許せねぇだろ？」
オータ「ケガ人をなぶる、グンマァの矜持に悖ル」
スノー「もたもたしないの！早く乗る!!」
ヴォロディームィル「ちっ・・・」
ニュクス「スノー、オータ」
ニュクス「すまない、僕は・・・」
スノー「クラスのみんなにも謝らなきゃね」
ニュクス「ああ・・・約束する」
ヒカリン「お土産を忘れとるでー？」
ヒカリン「みんなコレが欲しいんやろ？」
ヒカリン「――【射出】」
ニュクス「下がって！」
ニュクス（ダメだ！捌ききれない！）
オータ「グンマァ!!」
ニュクス「そんな・・・僕をかばって・・・？」
ケンイチ「オータ！」
スノー「お腹に金塊が突き刺さって・・・」
ヴォロディームィル「引き抜いたら内臓がこぼれ落ちるぞ」
ニュクス「オータを馬に乗せて走れ！」
ニュクス「スノー！後ろの氷を解け！ ヒカリンを振り切る！」
スノー「任せて！」
ケンイチ「がんばれオータ！死ぬな！」

〇沖合
　　六階層
ケンイチ「どうしよう、馬じゃ海を渡れない」
スノー「氷の道を作るにはまた魔素を集めないと」
ケンイチ「天井が砕けていく・・・！」
ヴォロディームィル「崩落で津波が来るぞ！」
ケンイチ「ヴォロえもん～！ なにか召喚獣だしてよ～！」
ヴォロディームィル「しょうがないなぁ、ブリ太くんは」
ヴォロディームィル「ってだれが二十二世紀ネコ型ロボだ！」
（ノリボケツッコミ！）
ヴォロディームィル「魔力はギリ溜まったぜ。 【召喚】――ロック鳥」

〇沖合
ケンイチ「デカっ!?」
ヴォロディームィル「こいつなら馬ごと掴んで飛べるぜ」
ヒカリン「あと一歩なのに全滅―― 最高にガッカリやな？」
ケンイチ「ヒカリン・・・！」
スノー「しつこい！」
ヒカリン「これまで散っていった弱者の群れや。 強者に見向きもされなかった、 その無念が勝ち組の足元を掬うんや」
ヒカリン「弱者の絶望を思い知れ──」

〇牢屋の扉
弟「僕はダメな子なんだ」
弟「努力が足りないからだってパパに言われた」
弟「僕みたいな奴は生きる価値ないんだって」
弟「ご飯もお風呂もお布団も全部我慢して 頑張ったんだよ」
弟「でも足りないんだって」
弟「もう──」
弟「努力・・・できない」
弟「ごめんね」
弟「兄ちゃんみたくなれなくて ──ごめんなさい」

〇沖合
ヒカリン「才能で昇りつめた勝ち組の転落劇、 その不幸だけが弱者を慰めるんや」
オータ「それは・・・違う」
ケンイチ「しゃべっちゃダメだ！傷が広がる！」

〇病室のベッド
オータ「俺は弱い。 無力を嘆き、不幸を呪い、強者を羨み ・・・妬んだ」

〇沖合
オータ「だがケンイチから教わった」
オータ「パンツ一枚あれば、人は何者にでもなれる」
オータ「ケンイチとの日々が俺を強くした」
ケンイチ「オータ・・・」
ヒカリン「くっさい三文芝居やなぁ！」
ヒカリン「そないなセリフ吐けるんはハナから そーゆー強さ持っとる奴だけや！ 弱者を騙るなボケ！」
ニュクス「ニュクス・──」
ケンイチ「パンイチ・──」
ヒカリン「!?」
ヒカリン「三文芝居に友情ごっこかい!!」
ヴォロディームィル「隙だらけだぜぇ？」
ヴォロディームィル「行け！ロック鳥!!」
ケンイチ「ヴォロえもん!?」
ヒカリン「なんやヴォロっち・・・ 情にほだされたんか？」
ヴォロディームィル「ああ？」
ヴォロディームィル「細目のニヤケ野郎は腹黒だからぶっ潰す って昔っから決めてんだよ！」
ヒカリン「偏見やないかー!!」

〇森の中の沼

〇炎
ケンイチ「ーー【開門】！」

〇SNSの画面
「ダンジョンがクリアされた!?」
中年男「どうせ三天だろぉ？」
男子A「違ぇよヒカリンチャンネル見てみろ！」
剣闘士A「クリアパーティ・・・「グンマァ」？」
女冒険者「それってまさか裸族パーティの・・・？」
会長「あいつはワシが育てた」
「やったねパンイチ君！」
「グンマァーー!!」
ヒーラー「じゃあ三億円は・・・？」

〇児童養護施設
　　最終話　パンイチ冒険者ケンイチ
オータ「心配かけタ。もう大丈夫ダ」
スノー「よかった・・・」
オータ「ヒカリンとヴォロドィームィルは？」
ニュクス「あの崩落だ、生きてはいまい」
スノー「それ生存フラグ・・・」
オータ「賞金だガ、俺が受け取るわけニハ・・・」
ニュクス「なっ!?」
ケンイチ「えっ？今のなに??」
スノー「ケンイチ君！」
オータ「ケンイチ・・・！」
ニュクス（そうか！ ケンイチ君はずっとあのブリーフ一枚で 激戦をくぐり抜けてきたのか！）
ニュクス「装備品の耐久限界だ！」
ケンイチ「え？何？どういうこと？」
パンツくん「ケンイチ・・・」
ケンイチ「パンツくん!? 自動応答機能が復活したの!?」
パンツくん「いや・・・じゃが最後くらい許されるじゃろ」
ケンイチ「最後？何言ってるの？」
パンツくん「ケンイチ・・・お別れのときじゃ」
ケンイチ「・・・・・・!?」
パンツくん「耐久限界を迎えた装備品は消滅するのじゃ」
ケンイチ「そんな・・・！ ニュクスの回復魔法は!?」
ニュクス「すまない・・・アイテムは治せない」
パンツくん「そういうことじゃ」
ケンイチ「パンツくん・・・ホントに限界なのか!?」
パンツくん「【腐蝕】を受けた時点でとうに限界じゃった」
ケンイチ「いやだパンツくん！ パンツくんと別れるなんて・・・！」
パンツくん「泣くなケンイチ。 もうおまえは立派な冒険者じゃろう」
ケンイチ「ダメだよパンツくん！ パンツくんがいなきゃ、俺は・・・！」
パンツくん「最下層まで攻略できたのは 一人の力でないことを・・・ もうわかっておるじゃろ？」
ケンイチ「ーー・・・・・・！」
パンツくん「忘れるな・・・おまえは一人じゃない」
ケンイチ「パンツくん・・・」
パンツくん「なんて顔をしておる？ 儂を安心して旅立たせておくれ」
パンツくん「最後は笑顔でさよならじゃよ」
ケンイチ「────・・・・・・」
ケンイチ「わかった・・・」
ケンイチ「パンツくんが・・・いなくても 前を向いて生きていくよ」
パンツくん「ああ・・・ケンイチと過ごした日々こそが 何ものにも代えがたい最高の黄金じゃった」

〇白
パンツくん「さらばじゃ・・・ケンイチ」
ケンイチ「さようならパンツくん」
ケンイチ「大丈夫だよ。 俺はもう一人じゃない」
「────！」
「アウトォーーーー!!」

〇学校の校舎

〇教室

〇学校の校舎

〇学校の屋上
小枝ゆき「なぁに？改まって話って」
朝日ケンイチ「お、覚えてるかな・・・」
朝日ケンイチ「全部片付いたら伝えたいことがあるって」
小枝ゆき「ん・・・」
小枝ゆき「覚えてるよ」
朝日ケンイチ「だから・・・その・・・」
朝日ケンイチ「俺は・・・ずっと・・・」
朝日ケンイチ「ゆきちゃんのことが・・・」
朝日ケンイチ「す・・・す・・・」
朝日ケンイチ「すきっ・・・！」
小枝ゆき「ケンイチ君・・・」
十七夜月シン「それ僕にも言ったよね？」
小枝ゆき「!?」
小枝ゆき「どういうことなの・・・？」
朝日ケンイチ「ち、違うんだ・・・」

〇綺麗な港町
ヒカリン「こにゃにゃちわー」
ヒカリン「今日は北米サーバーの新ダンジョンで イキっとる海外勢に一泡吹かせたいと 思いまーす」
ヒカリン「うん？ヒーローインタビューしろって？ 前のダンジョンで黄金持ち帰った奴に？」
ヒカリン「そんなんやるわけないやろ？ ハッピーエンドなんて ワイのチャンネルらしくないわ」
ヒカリン（難病の子が賞金で高額医療を受けて 登校できるようになりました、 なんて話はなぁ）
ヒカリン「ほな今日も対よろ～」

〇学校の校舎

〇教室

〇学校の校舎
十七夜月シン「今日はケンイチ君の家に集合！」
「おー！」

〇古いアパート

〇古いアパートの部屋

〇神社の出店

〇花火

〇古いアパート

〇古いアパートの部屋