一つ目の願い 〜私の弟になって!〜(脚本)
〇公園のベンチ
田中 優奈(・・・はぁ)
日も暮れた公園には人っ子一人居ない。
暗い顔をした女性‐ユウナはため息をつきながら、何やら考え事をしているようだ。
田中 優奈(お客さん・・・全然来ないなぁ・・・・・。 今日も、あまり売れなかったし・・・・・・)
田中 優奈「・・・お店、閉めるべきかなぁ・・・・・・」
ユウナが暗い顔のまま、ポツリと呟くと・・・・・・
「なんのお店?」
と言う問いが返ってきたのだが、どうやらユウナは気付いていないようで、なんでもない事のように「お菓子屋よ。」と答えている。
「ふ〜ん・・・。 どんなお菓子を作ってるの?」
田中 優奈「そうねぇ・・・色々作ってるわ。 今はクッキーしか持ってないけ・・・ど・・・?」
そこでようやくユウナは、自分が誰と会話しているのかを疑問に思ったのか、辺りを見回している。
田中 優奈「えっ?!」
ようやく見つけた声の主は・・・
可憐な少年だった。
〇公園のベンチ
少年はニコニコと人懐っこい笑顔を見せている。
田中 優奈「えぇっと・・・。ぼ、ボク?どこから来たの?お母さんは?こんな遅くに1人で外に出たらダメよ?」
???「・・・・・・僕は、子供じゃないよ?」
少年は少し不満そうに頬をプクゥと膨らませている。その姿がより一層子供っぽく見え、ユウナはクスリと笑う。
???「僕はね?夢を司る神様だよ!何か悩みがあるんじゃないの?僕に出来る事なら叶えてあげるよ?」
田中 優奈「ふふふ・・・あなたは神様なのね? でも、大丈夫よ。自分でなんとかするから!」
???「・・・やはり、この姿では信じてもらえぬか・・・・・・」
すると、少年の顔から表情が消えた。
無表情になった少年の顔は、どこか神秘的な美しさを持っていた。
だがすぐに、少年は先程と同じ様にニコニコと人懐っこい笑みを浮かべる。
???「ふふふ・・・まぁ、仕方ないさ。 人間に対してそこまで高望みはしないさ」
その笑顔とは裏腹に、その言葉は、とても冷たいものだった。
???「ただ・・・・・・」
そう言うと、一瞬にして少年の姿が消え、代わりに少年のいた場所には浮世離れした、美しさを持つ青年がたっていた。
???「この姿なら、信じてもらえるかな?」
そう言って青年は、少しいたずらっぽく笑った。
〇公園のベンチ
???「初めまして、私の名はアイリス・インフィニティクラウン」
田中 優奈「あっ、えっ?!ええっと、私は田中 優奈と言います・・・じゃなくて!」
マイペースに挨拶をするアイリスに、つい普通に挨拶をしてしまったが、目の前の異常現象は認められなかったようだ。
田中 優奈「さっきの子は?えっ?どこに行ったの??」
アイリス・インフィニティクラウン「あはは!僕だよー、さっきの姿じゃ信じてくれなかったからね。この姿なら、どうかな?」
田中 優奈「いやいやいや・・・!!そういう事じゃ・・・というか、それなら何であの姿に??」
ユウナの問にアイリスはキョトンとしている。
アイリス・インフィニティクラウン「いや、僕はね、周りの強い願いに反応して姿が変わりやすいんだよ。で、君が癒しが欲しい!って強く願っていたからね?」
アイリス・インフィニティクラウン「可愛いは世界を救う!って事で、ポンッ!と」
田中 優奈「ええ・・・・・・」
ゴリ押しだ。アイリスは力技でユウナをどうにか納得させた。
アイリス・インフィニティクラウン「それで、願いは?」
田中 優奈「えっ!・・・それって、本当に叶うの・・・・・?というか、いいの?どんな願いでも・・・」
アイリス・インフィニティクラウン「お任せあれ!対価しだいだけど・・・完璧に叶えたげるよ!」
さて、皆さんは「どんな願いも一つだけ叶えよう」と言われたらどうするだろうか?ユウナはちょっと考え、意を決してこう言った。
田中 優奈「私の・・・・・・・・・」
田中 優奈「私の・・・弟になって!!」
・・・・・・・・・
アイリス・インフィニティクラウン「・・・ん?なんて?」
田中 優奈「さっきの可愛い姿で、私の弟になって!」
アイリス・インフィニティクラウン「なんでやねん!・・・えぇー・・・マジかぁ・・・・・いや、良いんだよ?良いんだけど・・・ねぇ?」
田中 優奈「それじゃあ・・・!!」
アイリス・インフィニティクラウン「う、うん。叶えてあげるよ・・・そのとち狂った願い」
こうして、どこにでも居るような凡人ーユウナはカミサマの弟を手に入れたのであった。
めでたしめでたし!!
アイリス・インフィニティクラウン「・・・・・いや、めでたしめでたし!じゃ、ねぇーわ!!どこがよ!?」
色々と思い詰めているところで突然願い事を尋ねられて、出した回答が弟になってというのは誰もが想像しないですよね。愉快な出会いからどのように物語展開するのか楽しみになりますね。
可愛い男の子が声かけて来たら警戒などせずに話してしまう。神様に願い事を叶えると言われたら何を願うものだろう?ちょっと意外だったけどわかる気がした。
主人公が彼を見た時、本能で縁深いものを感じたんですかねえ。なにわともあれ、彼女にとって救いの一手になること間違いなしなように感じました。