電波と宇宙の間に(脚本)
〇高い屋上
真(放課後。学校の屋上で空に向かって祈りを捧げる少女。その姿は儚く神秘的でそして綺麗だった。それは一目惚れという奴だろう)
真(彼女の名前は羽村美夜。電波系ということで、学校では噂になっていた)
真「なあ、羽村。お前はいつも、何を祈ってるんだ?」
美夜「・・・祈ってるんじゃないわ。交信してるの」
真「交信? なにとだ?」
美夜「宇宙人」
真「・・・そ、そっか。羽村はすげーな」
美夜「ううん。全然、すごくない」
真「そんなことねえって。普通は、宇宙人と交信なんて、できないだろ?」
美夜「同じ」
真「・・・なにがだ?」
美夜「私もまだ成功したことない。だから、他の人と同じ」
真「そ、そっか・・・。でもさ、こういうのは諦めないことが重要だと思うぜ」
美夜「うん」
真「・・・羽村は、宇宙人と交信が成功したら、どんな話をするんだ?」
美夜「・・・あ」
真「どうした?」
美夜「考えてなかった。何を話そう・・・?」
真「考えてなかったのかよ。で、でもまあ、今、気付いてよかったんじゃないか?せっかく繋がってもフリーズしたら勿体ないもんな」
美夜「そうね・・・。ありがとう。考えてみる」
真「お、おう・・・」
美夜「・・・・・・」
真「・・・・・・」
美夜「決めた」
真「何にしたんだ?」
美夜「好きな人を聞く」
真「・・・宇宙人のか?」
美夜「違う。私の」
真「・・・お前の好きな人を、宇宙人に聞くのか?」
美夜「そう」
真「・・・それはクイズ的なことか? 本物なら知ってるとか、そういう感じの」
美夜「ううん。違う。私もわかないから、聞いてみるの」
真「・・・お前にもわからないのに、答えられないだろ」
美夜「そんなことない。宇宙人は凄いの。きっと、答えてくれる」
真「そ、そっか」
美夜「これで、交信できても、困ることはなくなった。それじゃ、交信する」
真「が、頑張れよ」
美夜「・・・・・・」
真「なあ、羽村。他に方法って試してみたのか?」
美夜「他の?」
真「ああ。今までその方法で交信に成功したことないんだろ? それなら別の方法にした方がいいんじゃねーの?」
美夜「・・・盲点だった。確かに、そうね」
真「他にはどんな方法があるんだ?」
美夜「・・・わからない」
真「知らないのかよ・・・」
美夜「どうしよう?」
真「うーん。そうだなぁ・・・。あ、いいこと思いついた」
美夜「なに?」
真「あーいや、その・・・準備があるからさ。明日、教えるよ」
美夜「うん。わかった」
〇高い屋上
次の日の放課後。
真「お待たせ。ほら、これが昨日言ってた、いいこと思いついたってやつ」
カチとスイッチを入れるとノイズ音が響く。
美夜「・・・トランシーバ?」
真「このトランシーバは自由にチャンネルを設定できる奴みたいなんだ。もしかしたら宇宙人と繋がるチャンネルがあるかもしれないぞ」
美夜「ありがとう。うん。頑張ってみる」
カチっとスイッチを入れて、チャンネルのバーを細かく調整している美夜。
美夜「・・・・・・」
真「気に入ってくれたみたいで、何よりだ」
美夜「・・・・・・」
真「そこまで夢中か。すごいな」
美夜「・・・・・・」
真「じゃ、じゃあ。俺、そろそろ帰るな」
美夜「・・・・・・」
真「・・・凄い集中力だな」
〇教室
真がガラガラと教室のドアを開く。
放課後なので誰もいないので、静か。
真「このくらいの距離なら届くよな」
真が机に座り、トランシーバーのスイッチを入れる。ザザザというノイズ音が響く。
しばらくした後、プツという繋がる音。
真「来た・・・」
通話ボンタンを押す真。
真「我は・・・宇宙人だ」
美夜「あ、繋がった」
真「我は宇宙人。何でも聞きたいことを言え」
美夜「えっと・・・」
真「・・・・・・」
美夜「・・・・・・」
真「な、ないのか?聞くこと」
美夜「うん・・・。ない。困った」
真「あれ、どうしたんだよ?好きな人を聞くってやつ」
美夜「あれは解決したからいいの」
真「・・・解決?」
美夜「うん。わかったから、もういいの」
真「・・・え? わかったって・・・」
美夜「好きな人、わかったの」
真「だ、誰なんだ? それ?」
美夜「えっとね。宇宙人」
真「ええ!宇宙人なのか!?」
美夜「うん。本人がそう言ってる」
真「・・・そっか。宇宙人か。まあ、ずっと交信したかった相手だもんな」
真「じゃ、じゃあ。何か願い事はないか? 宇宙人はすげーからな。大体・・・・・・いや、叶えられる範囲で叶えてやるぞ」
美夜「ううん。いい。願いごとも叶ったから」
真「叶った?」
美夜「うん。ついさっき」
真「そっか・・・。宇宙人と話すこと、か。確かに叶っているな」
美夜「あのね」
真「うん?なんだ?」
美夜「私、いろいろお話したい」
真「お、おう。いいぞ! 宇宙人・・・我のことだな? わかる範囲で答えてやるぞ」
美夜「今日、売店でね・・・」
真「えらい、個人的な話だな・・・」
〇高い屋上
真「よお、羽村。昨日はどうだった? 宇宙人と繋がったか?」
美夜「うん。つながった」
真「そっかそっか。よかったな」
美夜「うん。ありがとう」
真「今日も、話すのか?」
美夜「うん。話したい」
真「そっか。じゃあ、俺は邪魔だろから、帰るな」
真は歩き出すが、ピタリと立ち止まる。
真「そういえば、良かったな。願いが叶って。宇宙人と話すことが願いだっただろ?」
美夜「ううん。こっちは叶わなかったけど、新しい願いは叶った・・・」
真「新しい願い?」
美夜「うん。好きな人といっぱい話すこと」
真「・・・好きな人・・・ああ。宇宙人か。そうか。じゃあ、今日もたくさん、願いを叶えろよ」
美夜「うん。ありがとう」
真「じゃあな」
歩き去る真。
〇教室
ガラガラと教室のドアを開ける真。
放課後なので誰もいないので、静か。
真が机に座り、トランシーバーのスイッチを入れる。
ザザザというノイズ音が響く。
しばらくした後、プツという繋がる音。
真「我は・・・宇宙人だ」
終わり。
真の気遣いがすごくいいですね!
美夜も気づいていて気づかないフリをして、くすぐったい恋でした😆
2人のやりとりが少しじれったくもあり、でも彼女の想いを真摯に受け止める彼が愛おしく感じました。こうして大好きな人と繋がられるって素敵ですね。
声を他の方に頼んで入れるとどうなるか、拝見できて良かったです。そうか、『・・・』は声の台詞になるのか、という発見があり、面白かったです。
宇宙人のやり取りも普通にかわいくていいですね。