14.このママではいられない。その4(脚本)
〇荒地
アルバス「あいつらのことだし、 待ち伏せでもしてると思ったんだが・・・」
シタラ「誰もいないね・・・ 本当に、ここで合ってるのかな?」
ソウガ「──ああ、ここで間違いないよ」
シタラ「そ、ソウガさん・・・!」
ソウガ「やあ、こうして話すのは久しぶりだね」
アルバス「おう、ぶん殴って以来だな」
ソウガ「・・・貴様とは会いたくなかったな」
アルバス「こんな所に呼び出して、 いったいどういうつもりだ?」
ソウガ「本当は、カフェでお茶でもしながら 話したかったがね・・・」
ソウガ「これからする話は、 ここでした方が都合が良いんだ」
シタラ「──私の正体のことですか?」
ソウガ「それもあるけど、 もう一つ知って欲しいことがあるのさ」
シタラ「知って欲しいこと?」
ソウガ「まずは端的に言おうか──」
ソウガ「きみの力を貸してほしいんだ 降物で苦しむ人々のために」
アルバス「──ついて来て正解だったな! 怪しげな勧誘始めやがって!」
アルバス「帰ろうぜ、ママ きっと壺だの布団だの買わされるんだ!」
シタラ「心配してくれるのはわかるけど、 もう少し話を聞いてみようよ」
アルバス「・・・ママがそう言うなら」
シタラ「──えっと、それでなんでしたっけ?」
ソウガ「・・・奴がいると、話が進まないな」
〇荒地
ソウガ「きみは降物の名称、使い方がわかる それは間違いないね?」
シタラ「ど、どうでしょう・・・? わかるというか、知ってるというか・・・」
ソウガ「まあ、認識はどうでもいいんだ その能力が重要なんだよ」
ソウガ「僕はね、その力を世のため人のために 使って欲しいんだよ」
シタラ「どういうことですか?」
ソウガ「例えを出そうか きみ、ここがどこかわかるかい?」
シタラ「スポット・・・ですよね」
ソウガ「今はね。けど、昔は違ったんだ」
ソウガ「──ここは、僕の故郷だったのさ」
シタラ「え? ここが、ですか・・・?」
〇黒背景
〇荒廃した市街地
「──ある日突然、 有害な雨と大量の降物が降ってくる」
「スポットシャワーと呼ばれる災害さ」
「そこに町があれば、 まず確実に復興できないダメージを負う」
「建物は崩れ、人は押しつぶされる 作物も雨で枯れてしまう」
「そんな中、僕はたまたま生き残った ケガをして、無事ではなかったけどね」
「しかし、救援なんかは絶対に来ない 例え近くに別の町があってもね」
「降って来た降物が辺り一面にあるんだ なにが起こるかわからない」
「そんな場所に送れる人材なんて、 当時はいなかったんだ」
「子供の足では、 スポットを出ることもできなかった」
「もう終わりだと思った時──」
「手を差し伸べてくれる人がいた」
「その人は降物を恐れもせず、 僕のもとへ駆け寄ってくれた」
「その人こそ──」
〇荒地
ソウガ「我々が敬愛する、聖女様だったんだ」
ソウガ「それ以来、僕は仲間を集め、 スポットを巡っている」
ソウガ「・・・僕のような人を救うためにね」
シタラ「・・・」
ソウガ「きみに知って欲しかったのは、 その能力の有用さだよ」
ソウガ「わかるかな? きみはあの時の聖女様になれる」
ソウガ「その能力を活かして、 我々の活動に協力してほしいんだ」
アルバス「──ロリコン集団のくせに、 ずいぶん立派な勧誘文句じゃねえか」
シタラ「あ、アル・・・?」
ソウガ「そのロリコンというのは やめてもらおうか?」
ソウガ「どう誤解しているかは知らないが、 孤児の保護は活動の一環だ」
ソウガ「そこに他意は──」
アルバス「いくつかの町で聞いたが、 孤児を買う連中がいるらしいな」
アルバス「多額の寄付と引き換えに、 強引に子供を引き取っちまうとかよ」
ソウガ「・・・それは知らなかったな」
アルバス「降物を売ればそれなりの金になる 使い方がわかってるなら、なおさらだ」
アルバス「すでに保護されてる子供を、 金を積んでまで引き取るのはなんでだ?」
ソウガ「・・・さあ、なんでだろうな? その話は我々に関係ない」
アルバス「白を切りやがって・・・!」
シタラ「──ちょっと、アル!」
アルバス「ま、ママ・・・!?」
アルバス「なんだよ・・・? まさか、こいつに協力するとか・・・」
シタラ「そんなことしないよ 大丈夫、私、ちゃんと断れるから」
アルバス「・・・わ、悪い。どうしても、心配で」
シタラ「いいの、ありがとね」
ソウガ「断るって聞こえたけど・・・?」
シタラ「はい。私はあなた達に協力しません」
ソウガ「理由を聞いてもいいかな?」
ソウガ「もし、さっきの孤児の話なら、 あれは根も葉もない言いがかりだよ」
シタラ(確かに、その話も気になるけど・・・)
シタラ「違います というか、もっと当たり前のことです」
シタラ「目的のために手段を選ばない人と、 私は関わりたくありません!」
〇荒地
シタラ「クロシカさんを襲ったり、 私たちを騙して捕まえようとしたり──」
シタラ「あげく人の家に待ち伏せるなんて、 どれも普通じゃありませんよ!」
シタラ「そんなことする人たちに、 協力なんてするわけないでしょう!」
ソウガ「なるほど・・・」
アルバス「──よく言ってくれたぜ、ママ!」
アルバス「おら、どうだ!? なにか反論できるのか?」
ソウガ「いや、正論だ その通りだと言わざる得ない」
アルバス「なんだ、そりゃ・・・」
ソウガ「けど、いいのかな? 助けを待っている人はたくさんいる」
ソウガ「きみはそれを見捨てることになるよ」
シタラ「それなら──」
シタラ「アルと一緒に助けますよ」
アルバス「俺?」
シタラ「どうせアルは、 これからも色んな人を助けるでしょ?」
シタラ「その時、私もできることをするよ」
シタラ「アルが一人で無茶をしないよう、ね?」
アルバス「ママ・・・!」
ソウガ「そうか・・・残念だよ・・・」
シタラ「・・・私の正体については諦めます」
シタラ「さすがに、 協力しないと教えてくれないですよね?」
ソウガ「いや、教えるよ」
シタラ「え? い、いいんですか?」
ソウガ「そのために来てもらったんだ」
〇黒背景
〇荒地
アルバス「──ママ、なんか聞こえないか?」
シタラ「え?」
シタラ(あ、でも確かに聞こえてくる・・・!)
シタラ「というか、近づいてるような──」
〇黒背景
〇荒地
シタラ「・・・車?」
シタラ「あ、あれ? アル? どこに──」
「・・・」
シタラ「アル・・・?」
部下「──いかがですか、隊長」
ソウガ「普通ならば即死だが、 奴は普通ではないからな」
ソウガ「彼女を連れて、すぐにこの場を離れるぞ」
部下「了解しました」
シタラ「アル? 起きてよ、返事をして!」
部下「さあ、こちらへ・・・」
シタラ「大丈夫なんだよね? アルっ!?」
ソウガ「さあ、続きは場所を変えて話そうか」
ソウガ「もっと落ち着ける場所──」
ソウガ「我々の本拠地に案内するよ」