第8章第1節 『コミック・マルシェ108開幕!』(脚本)
〇大きい展示場
展示場は人々でごった返している。
電光掲示板に表示される。
『コミック・マルシェ108』
西暦20XX年、夏。
お台場はオタの熱気に包まれた!
第108回、夏のコミック・マルシェ。
通称、夏コミマ。ついに開・催!
そしてそのコミマに──
〇展示場
只野男志「俺が、キターーーッ!!」
只野は手作りの黒い剣を掲げて叫ぶ。
あたりは様々な作品のコスプレイヤーた
ちであふれかえっている。
只野男志「みんなクオリティ高いなぁ。 本物みたいだ。 やっぱコミマは最高だぜ!」
〇コミケの展示スペース
ポスターには『真・アーサー王伝説 第四章』と記載されている。
〇コミケの展示スペース
帽子を被り眼鏡をかけ、変装した玖珠絵
がサークルスペースに座っている。
『サークル Xかりばぁ』
背後のポスターにはエクスカリバーを持った美少女騎士のイラストが描かれている。
ポスターには『真・アーサー王伝説 第四章』と記載されている。
狩場玖珠絵「はぁ。 今回も無事、参加できてよかったわぁ。 一時はどうなることかと──」
只野男志「新刊ください!」
狩場玖珠絵「げっ!」
只野男志「どうしました、Xかりばぁさん? 顔ふせちゃって」
狩場玖珠絵(こいつだけには、ヲタバレするわけにはいかない。後で何言われるか・・・)
狩場玖珠絵「あ、その・・・人見知りで・・・」
只野男志「あー。わかります。俺もナイーブで。 よく薄幸の美少年って言われます」
狩場玖珠絵(薄幸の美少年に謝れ! クソザコ!)
只野男志「あ。それはそれとして、新刊」
本には『真・アーサー王伝説 第四章』と記載されている。
狩場玖珠絵「せ、千円です。ありがとうございました!」
只野男志「いやぁ、直接買えて感無量です! いつも通販だったんで」
狩場玖珠絵「は・・・はぁ」
只野男志「いいですよね。アーサー王伝説。 まぁアーサー王が美少女って、昨今では定番ですけどねぇ~~」
只野男志「でもXかりばぁさんの本は時代考証がガチで。なかなかいい線いってますよ!」
狩場玖珠絵(こいつ、何様? 読者様か!? さっさとどっか行け、しっ、しっ!)
只野男志「それだけじゃなくて、実はアーサー王はムー大陸の戦士の転生体だったとか」
只野男志「実は僕も同じこと考えたことあって。 運命感じちゃいます」
狩場玖珠絵(感じねーよ!)
只野男志「・・・っていうか、ん? あれ? どこかでお会いしたこと、ありません?」
狩場玖珠絵「き、気のせいです」
只野男志「えー? そうですか?」
狩場玖珠絵(の、覗き込むなぁ!)
オタク「あの、新刊ください」
只野男志「あ、すいません。 いやぁ。まだ語り足りないなぁ。 後でまた来ますね」
狩場玖珠絵(二度と来ンなァ!)
〇展示場
周囲には様々なコスプレイヤーたち。
そこにマルスと女眷属がいる。
女眷属「マルス様、このような催し物にご興味があったのですね」
マルス「じょ、情報収集だ!」
マルス「俺様はこの世界を支配する王になる男。 愚かな人間どもの文化も知っておかねばならん」
女眷属「運命の戦士(ドゥーム・チャンピオン)を倒す作戦は、思いつきました?」
マルス「う。それは、その、だな。 ここにそのヒントが何か無いかと・・・だな」
女眷属「現実逃避してる場合ですか。 デフレエル様がデュランダルに敗れた今、貴方しかいないのですよ」
マルス「う・・・うるさいっ」
只野男志「おぉ、クオリティ高いコスですね! なんのキャラですか?」
マルス「・・・気安く話しかけるな。人間」
只野男志「あぁ、なりきり系ですか。OKOK」
マルス「なりきり・・・?」
只野男志「失礼いたしました。 貴方様のご尊名を伺ってもよろしいでしょうか?」
マルス「げははは。その態度、気に入った。 俺様は偉大なる王となる男、マルスだ」
只野男志「マルス? ・・・どの?」
マルス「うむ。マルス“どの”と呼ぶことを許す」
只野男志「いえ、どの作品のマルスかなって。 ゲームですか?」
マルス「ゲームか。 確かに俺様は、愚かな人間共を支配し、世界を闇に染めるゲームに興じている」
マルス「げはははははっ」
只野男志(あ。これあれだ。 なんかのテンプレ悪役キャラだ)
只野男志(つかコイツ、なりきりすぎて、話通じないイタい奴だ)
女眷属「人間。貴様は名乗らないのか」
只野男志「え? 俺?」
女眷属「マルス様に失礼であろう」
只野男志「あ~~。 その、俺は、版権キャラじゃなくてオリキャラなんですけど」
マルス「名乗れ。不敬であろう」
只野男志「・・・漆黒のデュランダルです」
マルス「は? ・・・いま、なんと?」
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