エピソード1(脚本)
〇田舎の教会
私の名前はカタリナと申します。
教会に仕える普通の新米シスター。
・・・・・・のはずだったのですが。
冒険者A「カタリナ様! 聖水を売ってください!」
冒険者B「聖女様ー! ぜひ聖水をー!」
今日も、私が働いている教会に人が押し寄せてきます。
彼らは冒険者。
危険な魔物を討伐してくれる、立派な方々です。
カタリナ「ど、どうぞ。 私が清めた聖水です」
私は平常心で、彼らに聖水を渡します。
私の聖水が評判になったのは、つい最近の話です。
口コミで徐々に広まり、今ではたくさんの人が来るようになりました。
それはいいのですが・・・・・・。
少し恥ずかしいです。
なぜ恥ずかしいか?
それは言えませんけど。
彼らは、普通の水を私が魔力で清めたものだと思っているはずですから。
冒険者B「ありがてえ! カタリナ様の聖水は、何にでも効くんだよな!」
冒険者A「道にまけば魔物が近寄ってこなくなるし、武器にかければアンデッド系の魔物を瞬殺できる!」
冒険者B「傷口に塗れば、たちどころに治る! そうだ、飲めば体調が良くなったりするんじゃないか?」
冒険者A「確かに。 さっそく試して──」
冒険者の方々が、私の聖水が入ったビンを傾け、口にしようとします。
カタリナ「ダ、ダメーー!!! それだけはダメです!!!」
私は必死に彼らを止めます。
冒険者B「お? おお、どうしたんですかい? 聖女様」
冒険者A「聖水は飲んだら有害なのですか?」
特に有害なものは入っていないはずですが、とにかく飲んではダメなのです。
主に、私の精神衛生上の理由で。
しかし、事情を正直に話すわけにもいきません。
カタリナ「え、ええ。 道にまいたり武器にかけるのはいいですが、飲むのだけはやめてください」
本当は、道にまいたりするのもやめてほしいのですが。
しかし、教会の運営費を稼ぐために、聖水を売ること自体をやめるわけにはいきません。
いったいどうしてこうなってしまったのか。
私は過去に思いを馳せます。
あれは、ある日の深夜のこと。
尿意を覚えた私は、トイレに向かいました。
その途中で、低級ゴーストに襲われ腰を抜かしました。
実際には大したゴーストではなかったのですが、未熟な私にとっては恐怖が大きかったのです。
そして、私の聖水が不意に漏れてしまいました。
ゴーストに襲われた恐怖で、私のダムが決壊してしまったのです。
話はそれで終わりません。
ゴーストが突然苦しみだし、霧散したのです。
その後自分なりに検証し、私の聖水には本物の聖水と同様の効果があるらしいことがわかりました。
私はお金を得るために悪魔に魂を売り渡し、私の聖水を聖水として売ることを決心しました。
とても恥ずかしいですが、教会の運営費を稼ぐためには仕方ありません。
教会で預かっている孤児たちに不自由な思いはさせたくありませんし。
こういった事情を知らない冒険者の方々は、私の聖水を本物の聖水だと思われています。
まあ、検証の結果、効果は同等なので大きな問題はありませんが・・・・・・。
冒険者B「へへっ。 そういうことなら、カタリナ様の聖水を飲むのはやめておきますぜ!」
冒険者A「ああ。 ビンに入れたまま、使わずに大切に保管することにしよう」
大切に保管されるのも、それはそれで恥ずかしいのですが。
ああ。
こんな恥ずかしい思いを、いつまですることになるのでしょうか。
残念ながら、教会の運営費はまだまだ不足しています。
なんとしても、この秘密だけは漏らすわけにはいかないのです。
なるほどなるほど.....そういうオチなのか........って、聖水ってそっちね!それね!はいはいはい!勇者がそれに気づかないのも逆にスゴ!!
今年読みはじめた読み切りの中では一番面白かったです。
聖水ってあの聖水か、、