最愛の人(脚本)
〇田舎の病院の病室
とある病院の一室に、
その女はいた。
爪紅 栞「・・・・・・」
???「栞? 入るぞ」
爪紅 覚「なんだ、眠ってるのか」
爪紅 覚「・・・仕方ない、今日は帰るかな」
爪紅 栞「・・・ん」
爪紅 栞「あ・・・ お兄ちゃん・・・」
爪紅 覚「ごめんな、起こしちゃったか。 まだ起きてると思ってたんだけど」
爪紅 栞「え、今何時?」
爪紅 覚「8時。 ちなみに夜のな」
爪紅 栞「あー、検査終わって寝ちゃってた・・・ 今日多かったから」
爪紅 覚「・・・そうか」
爪紅 覚「後遺症とはいえ、 お前もいろいろ大変だな」
爪紅 栞「ううん、もう慣れたよ。 ・・・記憶が欠けてるのは辛いけど」
爪紅 覚「そうだな、子供の頃の思い出とか・・・」
爪紅 栞「・・・うん」
爪紅 覚「でも、栞が俺の妹であることは 変わりはないからな」
爪紅 栞「うん。 ありがとう、お兄ちゃん」
爪紅 栞「っていうか、お兄ちゃん仕事終わりでしょ?」
爪紅 覚「ああ」
爪紅 栞「疲れてるのに、 わざわざお見舞いなんて──」
爪紅 覚「全然」
爪紅 栞「いつもの検査入院なんだから わざわざ来なくてもいいんだよ?」
爪紅 覚「大丈夫だって。 それに、俺が栞に会いたくて 来てるだけだからさ」
爪紅 栞「出た、シスコン発言」
爪紅 覚「妹想いと言ってくれ」
爪紅 栞「モノは言いようね・・・」
爪紅 覚「それより、退院は明日だよな?」
爪紅 栞「? うん」
爪紅 覚「じゃ、明日はどこかで食事してから 帰ろうか」
爪紅 栞「迎えに来るの、決定事項なんだ・・・」
爪紅 覚「当たり前だろ。 栞は俺の可愛い妹なんだから」
爪紅 栞「あーもう胸焼け・・・」
爪紅 覚「ははは。 それじゃ、そろそろ帰るかな」
爪紅 栞「ふふっ。 また明日ね」
爪紅 覚「ああ、おやすみ」
爪紅 栞「本当にお兄ちゃんったら・・・」
爪紅 栞「私のこと大好きなんだから」
〇シックな玄関
爪紅 覚「・・・ふぅ」
爪紅 華奈子「おかえりなさい」
爪紅 覚「華奈子・・・ ただいま」
爪紅 華奈子「また栞ちゃんのところ?」
爪紅 覚「ああ、うん」
爪紅 華奈子「覚って本当にシスコンだよね」
爪紅 覚「はは、同じことを栞にも言われたよ」
爪紅 華奈子「ふぅん・・・」
爪紅 覚「何、また嫉妬してるのか?」
爪紅 華奈子「嫉妬っていうか・・・引いてる。 ちょっと異常だなって」
爪紅 覚「異常?」
爪紅 華奈子「だって、しょっちゅう栞ちゃんに 会いに行ってるじゃない」
爪紅 華奈子「いい大人同士で・・・ なんか、変よ」
爪紅 覚「栞は可哀想な子なんだよ・・・ 後遺症にずっと悩まされていて」
爪紅 華奈子「知ってるわよ・・・ 小学校の火事でしょ」
爪紅 覚「ああ」
〇学校の校舎
小学校の火災で多くの児童と教師が死亡。
栞は残り少ない生き残りの1人だった。
〇シックな玄関
爪紅 覚「教師である自分が生徒を守れなかったこと、 当時は随分と苦しんでいたし・・・」
爪紅 覚「いや、今もきっと苦しんでるはずだ。 後遺症と同じくらい、心も・・・」
爪紅 華奈子「あーもう、ごめんって。 別に覚を困らせるつもりはなくて・・・」
爪紅 華奈子「ただ、栞ちゃんが羨ましいっていうか──」
爪紅 華奈子「やだ、これじゃやっぱり嫉妬ね」
爪紅 覚「・・・華奈子」
覚は華奈子を抱き寄せた。
爪紅 華奈子「あっ・・・」
爪紅 覚「不安にさせてごめん。 でも、ちゃんと愛してるから」
爪紅 華奈子「覚・・・」
〇豪華なベッドルーム
あっ・・・
ねぇ・・・
覚、きて・・・
ああ・・・
早く・・・
私、もう──
爪紅 覚「・・・ごめん」
爪紅 華奈子「・・・・・・」
爪紅 華奈子「・・・いいよ、別に。 疲れてるんでしょ」
爪紅 覚「そう、かも・・・」
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