子供の宿題

鍵谷端哉

読切(脚本)

子供の宿題

鍵谷端哉

今すぐ読む

子供の宿題
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇明るいリビング
  夜。テレビを見ていると、子供が走って来る。
子供「ねえ、お父さん。宿題の、この問題がわからないから教えて」
父親「んー? 宿題? なんの教科だ?」
子供「国語~」
父親「国語か。お父さんは算数の方が得意なんだけど・・・」
父親「まあ、いいか。いくらなんでも小学生の問題が解けないわけないからな。どれどれ、どの問題だ?」
子供「これー」
父親「ふむふむ。えーと・・・」
父親「小学生のAくんはある日、お母さんから、全部の果物が百円のセールがあるので、スーパーに買い物を頼まれました」
父親「Aくんはお母さんから1万円を受け取って、隣町の坂木商店へ向かいました・・・」
父親「いやあ、小学生に1万はもたせすぎだろ」
子供「そうなの?」
父親「お母さんから1万円渡されたこと、あるか?」
子供「ううん。1000円までかな」
父親「だろ? てか、1万って、どれだけ買わせる気だよ」
父親「しかも隣町だと? これは親としてダメだろ」
子供「お父さんなら、一緒に来てくれる?」
父親「当たり前だろ。というか、車で送ってやるよ」
子供「わーい、ありがとー」
父親「ふふ」
父親「・・・っと、いけないいけない。問題は、と」
父親「Aくんはお母さんから受け取ったメモを見ます」
父親「すると、じゃがいも」
父親「ニンジン」
父親「たまねぎ」
父親「鶏肉と書いてありました」
父親「あー、これは晩飯、カレーだな」
子供「シチューかもしれないよ?」
父親「父さんはカレーの方がいいな」
父親「・・・で、なになに?」
父親「にんじんは1本、40円で・・・・・・おお安いな!」
父親「・・・3本と書いていました。んー。にんじん、3本は入れ過ぎだろ」
子供「僕はニンジン好きだよ」
父親「いや、いくら好きでも3本は入れ過ぎだって」
父親「・・・それから、たまねぎは1袋って書いてありましたが、バラでしか売ってませんでした」
子供「・・・どうしよう?」
父親「んー。大体、1袋、3つくらい入ってるから、3つ買えばいいんじゃないか?」
子供「そっかー」
父親「そこでAくんは110円のたまねぎを2つカゴに入れました」
父親「あー、惜しいな。3つだよ、3つ」
子供「Aくん、怒られるかな?」
父親「まあ、このくらいは大目に見てくれるだろ。父さん、たまねぎ、あんまり好きじゃないし」
子供「よかったー」
父親「えーっと、ちょっと、問題文が長いな。ここで一旦、整理するか」
父親「まず、最初にAくんはお母さんから1万円をもらってる」
子供「うん」
父親「そこから、40円のにんじんを3本、110円のたまねぎを2つカゴに入れた、と」
父親「ここまででいくらかかるか、わかるか?」
子供「えーっと・・・」
子供「340円!」
父親「よーし、よし、いいぞ。じゃあ、次の行だ」
父親「えーっと、次に鶏肉を買おうと思い、お肉コーナーに行くと、560円のバックに、2割引きのシールが貼ってました」
父親「・・・2割引き? 2割引き!?」
父親「いやいや、小学生の問題にやり過ぎだろー」
子供「2割引きって、どうやるの?」
父親「0.8をかけるんだけど、これは難しいから、父さんがやってやる」
父親「えーっと、448円だな」
子供「448円・・・」
父親「ここまでで、全部でいくらだ?」
子供「えーっと、340円に448円だから、788円?」
父親「おお、凄いな」
父親「よし、じゃあ、最後はじゃがいもだ」
父親「Aくんがメモを見ると、じゃがいもも1袋と書いてありましたが、やっぱり、バラでしか売ってませんでした」
父親「・・・って、おい! この店、やる気なさすぎだろ!」
子供「そうなの?」
父親「バラしかないって、なかなかないぞ。逆に袋しかない場合の方が多いくらいだ」
子供「ふーん・・・」
父親「・・・まあ、いいか。えーと、Aくんは60円のじゃがいもを適当にカゴに入れました」
父親「・・・いや、適当って」
子供「5個とかかな?」
父親「Aくんはお会計を済ませると、お釣りは8852円でした・・・」
父親「ええー! おいおいおいおい! 連立方程式かよー!」
子供「れんりつほうていしき?」
父親「こうやって、わからない値があって、お釣りから、じゃがいもを何個買ったかを計算する方法だ」
子供「へー、そんなことできるんだ?」
父親「いやあ、連立方程式なんて久しぶりだな」
父親「えーと、にんじん、たまねぎ、鶏肉の合計が788円で、これに60Xを足した価が、Y、と」
父親「で、10000万からYをひくと、8852、と」
父親「で、Yの値が1148とわかる・・・。これを上の式に当てはめて」
子供「お父さん、何書いてるか、わかんない・・・」
父親「で、こことここを消去させて・・・」
父親「わかった! 6個だ!」
子供「6こ? なにが?」
父親「じゃがいもの数だよ。Aくんは6個買ったんだよ」
子供「お父さん、すごーい!」
父親「へへへ。まあ、これくらい、余裕だよ余裕」
父親「・・・で、ここに6と書けば・・・って、あれ?」
父親「ここで問題です? りんごは1個、何円でしょうか?」
子供「・・・」
父親「わかるかーーーー!」
  終わり。

コメント

  • お子さんの問題文にツッコミを入れながら数学的思考で読み解こうとする父親、そして「そもそも国語の問題だよね!?」とツッコミたくてウズウズする読者側、この2段構造は楽しいですね!

  • くすっとしました😊
    あれ!? リンゴどこー!? と遡りましたがリンゴがなく……。
    あとがき見てなるほど! と思いました。

  • とても楽しい親子の会話で途中笑いました! こんなお父さんだと子供もきっと聞きやすいですよね。私は勉学から離れてかなりたつので、中学生の数学とか解けないかも!と焦りました。

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ