第6話 これは最後のシンデレラS01(脚本)
〇電気屋
シンデレラS01「・・・・・・」
シンデレラS01「っ!!」
ビストライト「思い出した? お嬢さん」
エラ「おまえは、おまえ、おまえは」
エラ「ビストライト!!! おまえのせいでわたしの身体はーー!!」
ビストライト「わーーーまってまってまって止まって!」
ビストライト「怒んないで! 落ち着いて! とにかく静まってくれ頼むよ」
ビストライト(お前をまた爆発させるわけにいかないんだ――この前の二の舞いだけは! ぜったいに避ける!)
ビストライト(なにせ、シンデレラS01の身体はもう一体しか残っていない――目の前にいるこの子だけ)
エラ「はっ? わたし、身体がある・・? もとに戻っている?」
エラ「爆発したはずじゃ・・・直前の記憶もあるのに、なぜ? あれは夢だったのか?」
ビストライト「そ、そうそうそう! そうだよきっと!たぶん!」
ビストライト(今はそういうことにしておこう・・・)
ビストライト(シンデレラS01の7番さん、ごめん。あとで君の身体はちゃんと返すから。俺がなんとかするから・・・)
ビストライト(た・・多分)
エラ「馬鹿な。機械人形が夢を見るはずないだろう! 機械は眠らないのだから!」
ビストライト「そうかな~、でも今まで気を失ってたでしょ」
エラ「はっ・・・そういえば・・・時間が経過している」
エラ「わたしは今までなにをしていたのだ?」
ビストライト「あの、ほら、君が探している博士──」
エラ「! ミメイの情報が手に入ったのか?」
ビストライト「う、そうなんだ。だからさ、悪い話じゃない。情報を共有したい」
エラ「ミメイ・・・ミメイ・・・!」
ビストライト(しまった、刺激を与えてしまったか? でも名前を出さないと話が進まないし)
エラ「・・・いいだろう」
ビストライト「ほ、ほんと?」
エラ「怒りにこの身を支配されたら、ミメイを殺す前にわたしの身体が爆発してしまう」
エラ「それでは目的を果たせない。わたしは常に冷静でいなければいけないのだ」
ビストライト「そうだ、その通りだよ、エラ」
ビストライト「偉い! 学んで賢くなったんだね!」
エラ「なんだその言い方は、ばかにしているのか!?」
ビストライト「パソコン殴らないで! 壊れる!!」
〇電気屋
エラ「つまり・・・わたしのマイクロメモリのデータを、このコンピュータにコピーしたと」
エラ「で、パスワードがわからないと」
ビストライト「なんていうかさ~、その・・・ミメイ博士には並々ならぬこだわりがあるでしょ。君ならわかると思って」
エラ「わたしもわからない」
ビストライト「えぇ・・・」
エラ「こんなもの英数字の組み合わせだ。「1」から順に入れていけばいい」
ビストライト「文字数もわからないんだよ? これ3回間違えるとロックかかるし」
エラ「ファイルを無限にコピーしろ」
エラはパソコンと一体化したような素早い手付きで作業を始めていた。
ファイルは軽いテキストデータだ。一瞬で同じものを量産できた。
ビストライト「パスコードかけてあるファイルなのに、こんなにコピーして、大丈夫なの?」
エラ「大したセキュリティではない。単に、家族に見られたくない日記に鍵をかけるような簡単なものだ」
エラ「どんなに間違えても大丈夫だ」
エラ「わたしは英数字を1から試していくから、おまえは可能性がありそうなパスワードを推理して片っ端から試せ」
ビストライト「まーじか・・・」
エラ「文句があるか?」
ビストライト「やるよ、やります」
ビストライト(少なくとも瓦礫の処理をするよりはマシだ。1年もかからないだろうしね)
〇商店街
あっという間に暗くなってしまった。
〇電気屋
ビストライト「エラは疲れないだろうけど・・・やっぱりキツイなぁ、この作業」
エラ「ブツブツ言っていないで働け」
ビストライト「人間は寝ないと死んじゃうんだよ!」
エラ「こちらはおまえが消えても問題ない。あとはわたしだけでできる」
ビストライト「俺もミメイ博士を探してるんだってば」
エラ「・・・」
ビストライト(それにしても、「家族に見られたくない日記に鍵をかける」、ねえ・・・)
ビストライト(ミメイ博士なら、他者がぜったいに開けられないロックをすることもできただろうに)
ビストライト(まるで、誰かに見つけてほしがっているようにわざわざ脆弱なロックをかけた)
エラ「聞こえなかったのか?おまえがいなくてもいいと言った」
エラ「わたしは一人でも作業を続ける。おまえは帰るなり寝るなりなんなり勝手にしろ」
ビストライト「あのさ・・・君も少し休憩しなよ」
エラ「わたしに休憩は必要ない」
ビストライト「まあまあ、そう言わずに。聞きたいことがあるんだ」
ビストライト「不思議なんだ。君がミメイ博士のこと、容姿も覚えてないっていうの」
エラ「容姿だけではない。なにも覚えていない」
ビストライト(彼女は首の後ろの――リセットボタンを押されたんだ。だからミメイ博士の記憶を消して、戦場へ行った)
ビストライト「なら、どうしてミメイ博士を殺したいの?」
エラ「──」
本当はエラを刺激しない方がいい。わかっていた。けれど、聞かずにはいられなかった。
エラ「おまえは勘違いしている」
エラは語り始めた