人気俳優殺人事件(脚本)
〇個人の仕事部屋
古里 剛三郎「事件だ」
古里 剛三郎「おい、起きろ」
神谷 涼「うわっ!あれ?ごr」
古里 剛三郎「あ?」
神谷 涼「・・・いえ、なんでも。何か御用ですか?古里警部」
古里 剛三郎「また事件だ。名探偵様に寝てる暇なんてないようだな」
神谷 涼「またですか」
古里 剛三郎「お前は毎度一日、いや数時間で事件の謎を解き明かしちまう。警察は楽できて、名探偵様様だ」
神谷 涼「最近じゃあ世間からは即日解決、即日探偵なんて呼ばれてますよ。修理業者かなにかのキャッチコピーじゃないんですから」
古里 剛三郎「即日探偵、いいじゃないか。それにしても、なんで毎回そんな簡単に真相がわかるんだ?」
神谷 涼「まあ、推理力、ですかね。探偵ですから」
古里 剛三郎「推理力ねえ。企業秘密ということか。まあ今回も頼むよ」
〇車内
神谷 涼「それで、今回はどんな事件なんです?」
古里 剛三郎「被害者は桜庭光司32歳。先ほど遺体が発見された」
神谷 涼「超人気俳優じゃないですか!!他殺ですか!?」
古里 剛三郎「ああ、刃物で胸を一突き。即死だ」
古里 剛三郎「有名人の事件だ、週刊誌にかぎつけられる前にさっさと解決したいんだよ。今回も頼んだぞ、名探偵」
神谷 涼「ええ、すぐに事件の真相を解き明かしてみせますよ、即日探偵の名にかけて」
神谷 涼(抜群の推理力があるわけでも、FBI級の諜報力があるわけでもない俺が名探偵と呼ばれるには理由がある。それは──)
若手刑事「まもなく現場に到着します」
神谷 涼「ああ、運転ありがとうございます」
若手刑事「いえいえ、名探偵の神谷さんにお会いできて光栄です。あの、後でサインいただいてもいいですか?」
神谷 涼「ええ、もちろんです」
古里 剛三郎「まったく、こいつのサインなんてもらってどうするんだ」
若手刑事「妹が即日探偵の大ファンなんです!見せて自慢します!」
若手刑事「まあほんとは、行きつけのバーのミサちゃんだけど」
神谷 涼(俺が名探偵と言われる所以──それは他人の心の声が聞こえてしまうこの力だ)
神谷 涼(どんなトリックを使おうと、心の声さえ聞けば一発だ。何も考えずに生きている人間なんていないからな、犯人なら尚更だ)
古里 剛三郎「──」
神谷 涼(ゴリ警部は例外だがな。動物とかも心の声が聞こえないし、そういうことだろう)
若手刑事「即日探偵のサインをエサに、ミサちゃんと・・・ぐふふ」
神谷 涼(・・・心の声が聞こえていいことなんてあまりないが、探偵をやる上ではあってよかった力だ)
若手刑事「到着しました」
〇高級マンションの一室
古里 剛三郎「ここが現場となった、被害者の自宅だ」
古里 剛三郎「いつも通り関係者を集めた。早速話を聞くか?」
神谷 涼「ええ、お願いします」
神谷 涼(俺の力は関係者と対峙してようやく、真価を発揮するからな)
古里 剛三郎「第一発見者でマネージャーの笠井陽子さん」
笠井 陽子「マスコミ対応に、出演先への謝罪回りに、あーもう携帯叩き割りたい」
神谷 涼(・・・大変そうだな)
笠井 陽子「刑事さん、この方は?」
古里 剛三郎「こいつは探偵の──」
神谷 涼「探偵の神谷涼と申します」
笠井 陽子「名探偵の?頼もしいです」
笠井 陽子「なんだっけ、即席探偵?」
神谷 涼(カップラーメンか)
古里 剛三郎「被害者の所属事務所社長、後藤孝之さん」
後藤 孝之「桜庭亡き今、うちの事務所も終わりだ。この探偵でもスカウトしてみるか」
神谷 涼(動物ふれあい番組ぐらいしか出ないぞ?)
古里 剛三郎「被害者の恋人で女優の三枝美希さん」
三枝 美希「別れ話こじれてたし、ちょうど良かったわー。泣く演技には自信あるし」
神谷 涼(三枝美希結構好きだったのに。女って怖いな)
古里 剛三郎「撮影中の映画の共演者、江藤星矢さん」
江藤 星矢「俺が殺ったってバレるかな」
神谷 涼(はい、犯人特定)
神谷 涼(あとは証拠だ。いくら犯人が分かろうと、いきなり犯人はお前だなんて言ったら狂人扱いされる)
神谷 涼「死亡推定時刻は?」
古里 剛三郎「それが、昨夜の大雨で大規模な土砂崩れが発生してな。死傷者が多くて、まだ遺体を解剖にまわせていない」
古里 剛三郎「死後硬直の状態からすると、昨夜の20時から22時とのことだ」
神谷 涼「ちなみにその時間、江藤さんはどちらに?」
江藤 星矢「お、俺ですか?撮影でスタジオに・・・トラブルでてっぺん超えちゃって」
古里 剛三郎「裏は取れてる。江藤さんを含め、全員アリバイがある」
神谷 涼(アリバイトリックか?)
江藤 星矢「昔演った刑事ドラマのトリックが上手くいったな。冷房で死体を冷やして、死亡推定時刻を早めて──」
神谷 涼(あっさり白状したな)
神谷 涼「ところで、寒くありません?エアコンつけていいですか?」
笠井 陽子「あ、リモコンどうぞ」
神谷 涼「ありがとうございます。あれ?なんでこんな真冬に冷房になってるんですかね?」
江藤 星矢「さ、桜庭くんが暑がりなのでは」
神谷 涼「16度は低すぎません?タイマーで切った跡がありますね」
古里 剛三郎「もし犯人がエアコンで死体を冷やしていたとしたら、死亡推定時刻を早められるな」
神谷 涼「江藤さんの昨日の撮影はどちらで?」
三枝 美希「ここの近くのスタジオです。私もいました。でも、江藤くんも私も撮影が終わった0時過ぎまでずっとスタジオにいました」
神谷 涼「撮影後は?」
江藤 星矢「た、タクシーで帰りました」
神谷 涼「領収書とかありますよね?古里警部、タクシー会社に確認を」
古里 剛三郎「ああ」
古里 剛三郎「確認が取れた。昨夜2時、この付近で江藤さんを乗せたそうだ」
神谷 涼「撮影は0時過ぎに終わったんですよね?2時までこの近くで何を?」
江藤 星矢「俺を疑ってるんですか?俺がやったなんて証拠ないじゃないですか!」
江藤 星矢「あれ、ジャケットのボタンどこいった?」
神谷 涼「慰留品は?」
古里 剛三郎「ソファの下からボタンが見つかった」
神谷 涼「このボタン、江藤さんのジャケットのものと同じですね。それに、被害者のものと思われる血痕が付いてます」
古里 剛三郎「決まりだな」
江藤 星矢「あいつに汚い手で主演の座を奪われて、彼女もとられて──」
神谷 涼(動機まで教えてくれるのか)
神谷 涼「もう僕、帰っていいですか」
古里 剛三郎「おう、今回も早かったな」
後藤 孝之「あの、即席探偵、よかったらうちの事務所に──」
神谷 涼「結構です、それと、即日探偵です」
最高です。人の心を読める能力は凄い!これなら即日犯人を当てられるね。しかし、警察は頼りないですね。探偵に依存していては。
とても楽しく内容が展開されていて最後まで一気に集中して読ませて頂きました。発想がとても面白かったです。また違う事件もあれば読んでみたいです。
結構吹きました。素直に面白かったです。事件現場とかで重要参考人の心の声が読めるとあっさりって感じになるんですね。コナン君とは別の面白さがって今後も見てみたいと思いました。