第2話『あ、終わった』(脚本)
〇中規模マンション
── 2週間前 ──
〇タワーマンションの裏口
「は~い」
Amazingからお荷物です!
「ど~ぞ~」
〇シックな玄関
あざっした~!
明智サエコ「・・・」
明智サエコ「買いすぎたな」
明智サエコ「Amazing限定とか 公式の限定とか」
明智サエコ「特典を揃えると Blu-rayかさばるのよねぇ」
明智サエコ「どこ置こう・・・」
明智サエコ「とりま倉庫へ“送る”か」
明智サエコ「・・・よし」
明智サエコ「アニメが装備品で良かったわ」
すいませ~ん
Amazingですけど~
明智サエコ「あれ? ハンコ必要だったかしら?」
〇玄関の外
明智サエコ「どうしま──」
エージェントさん「明智サエコさんですね」
エージェントくん「防衛大臣がお呼びです」
「居留守使うのも いい加減にしてください」
明智サエコ「人違いです」
明智サエコ「ちょぉおいっ!!」
エージェントさん「強制連行します!」
エージェントくん「抵抗しないで下さい!」
明智サエコ「だから人違いだって──」
「荷物受け取ってんだろがッ!!」
〇王宮の入口
〇洋館の廊下
エージェントさん「・・・絨毯がよれるので」
エージェントさん「自分で歩いてもらえません?」
明智サエコ「・・・」
エージェントくん(この人めんどくさいな・・・)
〇城の会議室
「連れて参りました」
明智サエコ「連れて参られました」
防衛大臣「どういう感情で 半ギレなんだね・・・」
防衛大臣「勇者サエコよ」
明智サエコ「拉致られるような 心当たりがないもので!」
防衛大臣「明智一族の末裔として 国防の任を与え、早10年──」
防衛大臣「私は・・・」
防衛大臣「今日初めてキミと会うのだが?」
明智サエコ「・・・どちら様?」
防衛大臣「現・防衛省のトップだ!」
明智サエコ「世界を守るのに忙しくて・・・」
防衛大臣「・・・」
防衛大臣「『ドラゴンハンターR』の アカウントは凍結してもらったからな」
明智サエコ「うぉぉいっ!?」
防衛大臣「VR世界の防衛は頼んでいない!」
明智サエコ「やっと一昨日ランキング入りしたのに~」
防衛大臣「電話しても 書類を送っても 自宅を訪問しても」
防衛大臣「全て無視・・・全く会議に来ない」
防衛大臣「キミはこの国を守る 責任の自覚があるのか?」
明智サエコ「いやぁ・・・」
明智サエコ「次の魔王も現れてないのに 会議なんか・・・」
防衛大臣「現れてからでは ”対策”にならないだろう!?」
防衛大臣「そもそもだね!」
防衛大臣「キミに支給している 『魔王対策準備費』は──」
防衛大臣「国民の血税で賄っているんだぞ!」
防衛大臣「少しは自分の立場というものを 考えたらどうなんだ!」
明智サエコ「うっさいなぁ!!」
明智サエコ「だって日本に モンスターいないんだから!」
明智サエコ「VRで“経験値”積むしか レベルアップの方法ないじゃない!」
明智サエコ「私にだって 自分なりの考えがあるんだから──」
明智サエコ「放っといてよ!!」
防衛大臣「うちの高校生の息子と 全く同じこと言ってるぞ!!」
防衛大臣「キミもう32歳だろう!?」
明智サエコ「いちいち うっさいのよ!」
明智サエコ「お父さん!」
防衛大臣「誰がお父さんだ!」
防衛大臣「・・・『魔王対策準備費』だがな」
防衛大臣「”廃止”が閣議決定した」
明智サエコ「はぁああ!?」
明智サエコ「なんでよ!? お金もらえないなら 次に魔王来たって戦わないわよ、私!!」
防衛大臣「別に構わんよ」
防衛大臣「どうせ勝てないだろうしな」
明智サエコ「そ、そんなことないわよ!」
明智サエコ「私にだって明智の血は 流れてるんだから──」
防衛大臣「たとえキミが “明智一族”だったとしても」
防衛大臣「国民が納得しないのだよ キミのような勇者ではな」
防衛大臣「信頼というのは──」
防衛大臣「“積み重ね”なのだよ」
防衛大臣「見たまえ」
明智サエコ「なにを偉そうに──」
防衛大臣「監視カメラの画像だ」
防衛大臣「サブカルの祭典に ”まんま”で参加しているとの通報だ」
明智サエコ「知り合いの刀剣師が 参加されていたので ちょっと武器の調達を──」
防衛大臣「やってんな」
防衛大臣「その言い訳でイケると思えるのは ある意味“勇者”だがな」
防衛大臣「国民の血税で 薄い本を買う勇者が許されると?」
明智サエコ「私は!!」
明智サエコ「“納得”よりも“共感”を大切にしたい!!」
防衛大臣「どの立場でのポリシーなのかね!?」
防衛大臣「こちらとしても “明智”には感謝している」
防衛大臣「例えば──」
防衛大臣「キミに子供でも出来れば 後継者としての支援も検討しよう」
防衛大臣「年齢も年齢だろうに」
防衛大臣「就職するなり、婚活するなり──」
防衛大臣「真面目に人生を考えたまえ」
明智サエコ「そんな・・・」
防衛大臣「あと、いつまでパジャマなんだ」
〇王宮の入口
『魔王対策準備費』は──
“軍事兵器”の開発費へ
補填させてもらう──
明智サエコ「いまさら働くなんてムリ・・・ 履歴書に住所しか書けん・・・」
明智サエコ「それに結婚・・・? 子育て・・・?」
明智サエコ「ふざけんなって・・・ いまさら──」
「おい聞いたか?」
「さっき防衛大臣が 愚痴ってたんだが・・・」
エージェントさん「あの勇者 やっぱりクビだってよ」
エージェントくん「仕方ないですよ あの人では・・・」
エージェントさん「でもな~ ”新型兵器”の維持費、聞いたか?」
エージェントさん「アニメのBlu-ray集めてる女のが まだコスパ良いと思うぞ」
エージェントくん「とはいえ 有事の際に役立たずでは・・・」
エージェントさん「前の勇者は真面目だったのになぁ “アレ”のお兄さんだっけか」
エージェントくん「知らないんですか?」
エージェントくん「真面目すぎた反動なのか 倒した魔王が“どストライク”で 一目惚れしたって話です」
エージェントくん「そのまま結婚しちゃったんですよ だから後継者の騒ぎに・・・」
エージェントさん「サイコパスの家系なのか・・・?」
エージェントくん「しかも──」
エージェントくん「離婚するって噂です」
エージェントさん「えっ、それ・・・」
エージェントさん「魔王どうなんの?」
エージェントくん「さぁ・・・」
エージェントさん「まさか復活しないよな?」
エージェントくん「大丈夫じゃないですか 一回倒してるんだし・・・」
「知らんけど」
明智サエコ「ヒデ兄、離婚すんの・・・?」
明智サエコ「なんも聞いてないんだけど・・・」
明智サエコ「子供・・・!」
明智サエコ「そういや 赤ちゃんの時に抱っこしたな」
明智サエコ「たしか──」
〇黒
そうだ『リカちゃん』だ──
〇東京全景
やぁ~だぁぁあああっ!!
〇荒廃したセンター街
明智リカ「怖いよぉぉおお~っ!!」
明智リカ「めっちゃ撃ってくるアイツ~!!」
明智リカ「ずっと笑顔でー!!!」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「クォンタムブラスター起動」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「ユーシャーエネルギー圧縮開始」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「リコイルダンパー作動 サスペンションスパイク射出 バレルロック完了」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「チャンバー圧力正常 ガトリング機構回転開始──」
── STAND BY ──
── やれ
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「FIRE!!」
〇荒廃した街
明智リカ「痛い痛い痛い! たすけてぇ~!!」
明智リカ「めーでー! めーでー! めーでー!」
はいはい
こちらサエコ
明智リカ「おばさん助けてぇー!!」
おば・・・!
『サエちゃん』って呼んで!
明智リカ「サエちゃんどこいるの~!?」
明智リカ「ネコ型ロボットに コロされるよぉ!」
“機動兵装”ね!
その呼び方はマズいわ、業界的に!
近くに“お堀”は見える?
川みたいな池みたいなの!
明智リカ「あっちに見えるよ!」
お堀に沿って右の方向へ
ぐるーっと逃げて!
私のいる場所の近くまで来たら
すぐ合流するから!
明智リカ「いま絶対ゲームセンターいるよねぇ!?」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「TARGET逃走 皇居沿いに秋葉原方面へ ENERGY残量40%──」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「追跡を継続シマスカ?」
皇居を背に逃げるとは
なかなかに小賢しいヤツだ
追跡を継続しろ
ただし攻撃はするな
万が一にも
皇居へ誤射したら事だ
対象の拘束を試みつつ
エネルギー20%以下で即撤退しろ
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「Yes,sir!」
〇商業ビル
〇霧の立ち込める森
〇滝つぼ
── GET READY! ──
サーペント「フハハハ!」
サーペント「よく来たな! 愚かなニンゲ──」
せーいっ!
サーペント「あいたぁ!」
サーペント「ちょ、まだ喋っ──」
そぉぉい!!
サーペント「だから待てって! お前なんなん──」
でぇぇええいっ!!
サーペント「うぎゃぁああ!!」
── DESTRUCTION! ──
〇ゲームセンター
明智サエコ「ふぅ・・・」
明智サエコ「まさか実機でアカウントを 作り直すハメになるとは」
明智サエコ「ていうか」
明智サエコ「どうせクビにするなら BANする必要なかったじゃないの!」
明智サエコ「どうやって私を特定したんだ あのチョビ髭大臣め・・・!」
明智サエコ「アイツもう『チョビ』って呼ん──」
「ねーねー! プリ撮ろーよ!」
「はぁ? 昨日も撮ったじゃんかよ~」
嫌いなタイプの高校生「いいじゃ~ん ほらほら!」
明智サエコ「・・・」
明智サエコ「── チッ」
〇電器街
──私だって
幸せになれると思ってた
〇SHIBUYA SKY
えっ──
別れたいって・・・
他に好きな人が出来た?
意味わかんない
そんないきなり──
待って!
なんで!?
どうしてよ!?
ちゃんと・・・
話してよ・・・
〇女性の部屋
どうして・・・
全部ブロックされてる
『明智』『勇者』『彼女』
検索──
えっ
ウソ・・・なにこれ・・・
〇SNSの画面
『明智と付き合ってるオトコ発見』
『勇者って就活しなくていいもんな』
『資産目当てキモい』
『一般社会に来んな』
『夜とか激しそうー』
写真・・・晒されてる・・・
なんで・・・
なんでよ・・・
なにが勇者・・・
〇黒
私の”幸せ”は
誰が守ってくれるの?
〇電器街
サエちゃ~んッ!!
どこいるのォ~!?
明智サエコ「待ってたわ! すぐそっちに行く!!」
〇繁華街の大通り
明智リカ「サエちゃぁあん!!」
明智サエコ「リカちゃーん!」
明智サエコ「そぉいやぁ!」
明智リカ「サ、サエちゃ・・・」
明智リカ「なん・・・で」
明智サエコ「うふふ」
明智サエコ「足に力が入らないでしょ?」
明智サエコ「これが勇者の力よ! 魔王の娘ー!!」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「対象発見」
機動兵装ノブナガMARK Ⅱ「行動不能な模様」
明智サエコ「私が捕らえたわ!」
明智サエコか
明智サエコ「どう?」
明智サエコ「これで『魔王対策準備費』の 廃止は撤回せざるを──」
明智サエコ「なに・・・? この音・・・」
???「おい」
〇黒
勇者…そういうシステムだったのか!
いや〜引き続きやりたい放題&規模がでかくて楽しいです。勇者の血筋や魔王の子供が人並みの悩みを抱えている描写、アクションシーンとのコントラストがあって良いですね!
勇者と魔王は表裏一体。
どちらも象徴であり偶像であり、自称無害な一市民にとっては人格の持たない記号でしかない。
とはいえ、サエコの横暴さ自堕落さが許容されるかは別の話。血税がまわされるにしても、限度はあるでしょう。
ええええーっ!いいところで(つД`)ノ
続きがめっちゃ気になるので、また、無理なく更新をお待ちしておりますーっ!←結局ねだっている