第八話 『魔法』(脚本)
〇ホテルの部屋
栄田 栞里「そんな・・・駿の会社が あの婚活アプリを運営してたなんて!」
栄田 栞里「でも、そんなこと! どこにも書いてなかったのに・・・」
堀田 晴臣「確かに会社概要などには記載がありません」
堀田 晴臣「ですが、株式はご覧になりましたか?」
栄田 栞里「株式?」
〇超高層ビル
堀田 晴臣「そう。会社が資本金を用意するために 発行する株式のことです」
栄田 栞里「あまり難しいことは・・・ 一般的なことならわかりますけど」
堀田 晴臣「では、ある会社の株を大量に持つと 何が出来るかわかりますか?」
栄田 栞里「株式会社は経営の方針を株主たちの 意向に従うことになっているから」
栄田 栞里「経営に意見をすることが 出来るようになる・・・とか?」
堀田 晴臣「その通り。 実際、半数以上の株を所有すれば」
堀田 晴臣「経営を掌握することが出来るのです」
〇ホテルの部屋
栄田 栞里「で、でも駿は、アーバンサテライトは 企業コンサル会社だって・・・」
堀田 晴臣「ええ、そこですよ。 あの会社の恐ろしいところは」
〇事務所
堀田 晴臣「栄田は成長しそうな上場企業に コンサル会社として入ります」
栄田 駿「────」
中小企業職員「────」
堀田 晴臣「そしてその企業に光るものがある場合 別会社を使って株を大量購入するのです」
〇寂れた雑居ビル
堀田 晴臣「企業が成長すれば株の価値も上がる」
〇オフィスビル前の道
堀田 晴臣「価値の上がった株を売り、 まとまった資金を得る」
〇渋谷フクラス
堀田 晴臣「また別の中小企業の株を買い、 その企業を自社で育て、株式を売る」
〇超高層ビル
堀田 晴臣「そうやって栄田は 巨額の資金を得てきたのです」
堀田 晴臣「そしていくつかの会社の株は 所有したままにしておき」
堀田 晴臣「自分の手札として使えるように 残しました」
〇店の入口
堀田 晴臣「それが、あの婚活会社であり」
〇高級住宅街
堀田 晴臣「あの不動産会社だったのです」
〇ホテルの部屋
栄田 栞里「ちょ、ちょっと待ってください!」
栄田 栞里「確かにそうやれば、 どんどんお金を増やせる、けど・・・」
栄田 栞里「でもルール違反じゃないかしら? 企業情報を知ってて、その株を買うなんて」
堀田 晴臣「ええ、その通り。内部情報を知る者が その株を買うことは禁じられています」
栄田 栞里「あ! そのルール、私知ってます!」
〇野球場の観客席
栄田 栞里「オフサイド取引! そうですよね!」
〇野球場の観客席
堀田 晴臣「インサイダー取引ですね・・・」
栄田 栞里「あ、そうでしたっけ・・・あはは」
〇ホテルの部屋
堀田 晴臣「・・・ええと、つまりですね」
堀田 晴臣「栄田駿は自分の手札の婚活会社で あなたとマッチングし、」
堀田 晴臣「自分の不動産を使って偽の実家を 作り上げたのです」
栄田 栞里「・・・・・・」
栄田 栞里「・・・お話はわかりました。でも」
栄田 栞里「そこまでして私を騙して結婚して 彼に何のメリットがあるのでしょう?」
堀田 晴臣「現時点ではなんとも言えません」
堀田 晴臣「彼の戸籍が手に入れば、 糸口が見える可能性はあります」
堀田 晴臣「恐らく彼の過去に、あなたに執着するに 至った理由があるのでしょう」
栄田 栞里「駿の・・・本当の、過去に・・・」
〇商業ビル
〇オフィスのフロア
栄田 駿「はい、栄田・・・ああ、梶か」
梶 弘樹「すみません、取締役。 まさか変装して逃げ出すとは・・・」
栄田 駿「君ともあろう者が珍しいね」
梶 弘樹「バックに堀田がついていたことを 失念していました」
〇ビジネスホテル
梶 弘樹「幸い奥様が駆け込んだと思われる ホテルを見つけました」
梶 弘樹「探偵は、見つけたら処分して よろしかったですよね?」
栄田 駿「ああ、構わない」
梶 弘樹「ひゅー♪」
梶 弘樹「兵隊、使わせてもらっても?」
栄田 駿「許可しよう」
梶 弘樹「ありがとうございます!」
梶 弘樹「実は取締役ならそう言うと思って 呼んじゃってるんですよね」
栄田 駿「全く血の気の多い部下だな、君は。 ・・・掃除はしっかりな」
梶 弘樹「アイサー! 取締役! 行くぞ、君たち」
「・・・・・・」
〇ホテルの受付
ホテルの従業員「おかえりなさいま・・・せ?」
梶 弘樹「やあ。大勢で失礼するよ」
梶 弘樹「僕はこういう者なんだが」
ホテルの従業員「け、警察の方でしたか どのような御用向きでしょう?」
梶 弘樹「ああ、実は殺人事件の重要参考人を 探していてね」
梶 弘樹「先ほど白いジャケットに緑色のスカーフの女性がここへ来なかったかい?」
ホテルの従業員「白いジャケットに緑色の・・・」
〇ホテルの受付
ホテルの従業員「あ! いらっしゃいました!」
〇ホテルの受付
ホテルの従業員「508号室の長底様です!」
梶 弘樹「いい記憶力だ。 君のような職員はこのホテルの誇りだろう」
ホテルの従業員「あ、ありがとうございます」
梶 弘樹「案内してもらえるかな?」
ホテルの従業員「は、はいっ」
〇ホテルの部屋
堀田 晴臣「ああ、失礼。お客さんが来たようですね」
栄田 栞里「お客さん?」
堀田 晴臣「あなたの追っ手ですよ。 急いでここを出ましょう」
栄田 栞里「あ、はいっ」
〇エレベーターの中
梶 弘樹「いいホテルだね。 エレベーターは一機?」
ホテルの従業員「はい、客室から通じるものはこれのみと なっております」
梶 弘樹「階表示がないのも好感がもてるね」
ホテルの従業員「ありがとうございます! お客様のプライバシーに配慮したそうです」
梶 弘樹「なるほど」
ホテルの従業員「あの・・・」
梶 弘樹「ああ、彼らも警察だよ。 どうにも人相が悪くて申し訳ない」
梶 弘樹「ほら、君たち。笑顔笑顔!」
ホテルの従業員「う、うう・・・」
梶 弘樹「なんか・・・申し訳ない。 彼らに笑顔は向いてなかったみたいだね」
〇マンションの共用廊下
ホテルの従業員「五階に到着しました」
梶 弘樹(確かに五階のようだな・・・)
梶 弘樹「僕らが来るまで、誰もホテルからは 出てないと言ってたよね?」
ホテルの従業員「ええ、交代前ですので間違いありません 508のお客様は御在室のはずです」
梶 弘樹「ありがとう。 じゃあ君は、一旦フロントへ戻ってくれ」
梶 弘樹「彼女は武器を所持している可能性がある 君を巻き込みたくないんだ」
ホテルの従業員「は、はいっ。失礼します ・・・お気をつけて!」
〇ホテルの部屋
栄田 栞里「堀田さん! 行かなくていいんですか? 追っ手が来てるって話でしたよね?」
堀田 晴臣「え? ああ、大丈夫ですよ 頃合いは見てますので・・・」
〇マンションの共用廊下
梶 弘樹「いいか、君たち。 まず僕が、このマスターキーで扉を開ける」
梶 弘樹「奴らが不意をつかれた拍子に男の方を撃て」
梶 弘樹「女は撃つな。取締役の奥様だからな」
梶 弘樹「合図を待て。 3・・・2・・・1・・・今だ!」
〇ホテルの部屋
堀田 晴臣「そろそろ行きましょう。 合図しますよ? 3、2、1・・・はいっ」
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頭脳戦の応酬にワクワクが止まりませんが、駿……殺しも容認しているんですね😱何が彼にそこまでさせるのか。引き続き気になります!
もはや堀田さんが主人公に見えてきました。死なないでほしいなあ。。
ワンフロア貸切、お見事でした。
ぎゃあああ、所長ーっ! にーげーてー!!Σ(゚口゚;
いや、ラストはともかくお見事です。どうなることかと見入ってしまいました。頭脳派オジサマ、かっこいい……!
そして駿、さすがやで……。