シンデレラ深夜未明

らいら

第5話 name:エラ(脚本)

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〇商店街
  ふたりは旧式のパソコンを探し、商店街にやってきた
  商店街と言ってもほとんど人はいない。シャッター街である
ビストライト「君と同じ種類の機械人形は、この町に他にもいる?」
シンデレラS01「いいえ、見たことありませんね」
シンデレラS01「多くは戦場で破損したのかと」
ビストライト「君はあれなの? 自分の心臓に自爆装置があること知ってるわけ?」
シンデレラS01「ああ、そのことですか。もちろんですよ。怒りで起動することもわかっています」
ビストライト「解除しようとは思わないの?」
シンデレラS01「この装置は発動しませんよ。私たち機械に感情はありませんから」
ビストライト「いやでも、ふいに暴発しないか不安にならない・・・?」
シンデレラS01「雇うと決めたのは人間です。何らかの誤作動で爆発したとしても人間側の責任でしょう」
ビストライト(同じ型のはずなのに、全く違う。あの子には感情があった)
ビストライト(共通していることはなんだ? 作られた時の記憶がない、ミメイを覚えていないことだ・・・)
ビストライト「・・・そういえば君、名前なんていうんだ?」
シンデレラS01「そんなものはありません」

〇電気屋
  町に唯一あった中古電気屋を見つけた。
ビストライト「店あいてるのに、誰もいないな・・・」
シンデレラS01「人口が極端に少ないですしね。無人販売所ですよ」
シンデレラS01「このお店には、ガラクタのようなものしか置いていません。誰も粗大ゴミを持っていかないでしょう」
ビストライト「粗大ゴミね。今の俺にとってはお宝だよ」
  大事に持っている「ピンク色のマイクロメモリ」を、旧型パソコンに挿した。
  パソコンはメモリを認識し、鈍い音を立てる。
  読み込みが開始された。
シンデレラS01「そんな真剣に、なにを調べているのですか?」
ビストライト「ここにミメイ博士の居場所の手がかりがあるはずなんだ」
シンデレラS01「ミメイ博士、そこまで必要な人物なのですか?」
シンデレラS01「他にも天才と呼ばれる工学者はいます」
シンデレラS01「ミメイ博士が失踪したからといって、さほど問題はないと判断されますが。いわばあの方は「過去の人」です」
ビストライト「・・・君は製作者への恩とか仇とか、その他諸々の感情はないのか?」
シンデレラS01「はあ?」
ビストライト「とにかく、俺はシンデレラS01の自爆装置を解除したいんだよ」
  読み込みが終わり、ようやくデスクトップにフォルダが立ち上がる。データが表示された。
  テキストデータがふたつに、ネットブラウザのショートカットのアイコンがひとつ。
ビストライト「なんだこれ?」
  ネットブラウザのアイコンをクリックする。と・・・
  インターネットブラウザの地図が表示された。この町を示している
ビストライト「居場所の情報!?」
シンデレラS01「この赤く点滅している丸・・・この電気屋ですね」
ビストライト「ここに君がいるからだな」
シンデレラS01「私の体内にGPS発信機がついていたとは」
ビストライト「シンデレラS01シリーズの居場所がこれでわかるってことか!」
シンデレラS01「しかし、見てください。私しか活動している者はいないようです。ほら」
ビストライト「赤い点滅は・・・7番とある。君のことか」
シンデレラS01「ええ。シンデレラS01、識別番号007 私のことです。光っているのはこれだけ」
ビストライト「・・・テキストファイルを見よう」
  ひとつめのテキストファイルを開いた。
  製品情報 シンデレラS01識別番号001 name:エラ
  製造年月日:星歴3019年
シンデレラS01「エラ? 名前? 自分で付けたのでしょうか」
ビストライト「待て、これ30年以上も前じゃないか。最新の技術の機械人形なのに」
シンデレラS01「メモリも旧式ですし、メモリと本体製造年の時期は合致しますね」
ビストライト(30年以上前、ミメイ博士はまだ子供のはずだ。別の人物が作っているのか・・・?)
ビストライト「ああもう、考えてもわからない、次のファイル見よう」
  もうひとつのテキストファイルをクリックする。
  ポップアップでメッセージが表示された。
  ”パスワードを入力してください”
ビストライト「なんだって!?」
シンデレラS01「そうとう重要なデータなのでしょう」
ビストライト「パスワード・・・君パスワードわかる?」
シンデレラS01「世界で最も使われているパスワード1位は「123456」だそうです。そして2位は「123456789」」
ビストライト「いやそんなパスワードにしないだろ機械工学者だぞ」
ビストライト「あてずっぽうで入力するか?」
  「CINDERELLA」
  
  と入力してエンターキーを押す。
シンデレラS01「シンデレラ、ですか。そんな単純なパスワードにしないでしょう」
ビストライト「わかってるよ!ほんの試しだよこれは」
  メッセージが表示された。
  ”パスワードはあと2回間違えたらシステムロックがかかります。”
ビストライト「げぇ、厳しすぎる・・・!」
ビストライト(「エラ」なら、わかるんじゃないか? ミメイ博士が設定したパスワードが)
ビストライト「なあ、あんた。悪い、少しの間、身体を貸してほしい」
シンデレラS01「はい? なにをする気です?」
ビストライト「シンデレラS01はもう君ひとりしかいない。「エラ」の声を聴くためには――その身体を使うしかないんだ」
シンデレラS01「なんだ、そんなことですか」
シンデレラS01「構いませんよ。何度も言ったように私に感情はありません。この機械の身体がどう利用されようと、問題ない」
シンデレラS01「ただしオーナーに露見した場合、あなたが損害賠償を請求されるかもしれませんが」
ビストライト「・・・あ、はい」
  データをパソコンにコピーし、「エラ」のマイクロメモリを手に取った。
  シンデレラS01に設置されているマイクロメモリを抜き取ると、彼女はただの人形のように直立したまま静止した。
  エラのマイクロメモリをセットする。
シンデレラS01「・・・」

次のエピソード:第6話 これは最後のシンデレラS01

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