シアワセの村

はやまさくら

良き隣人(脚本)

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〇農村
  次の日、僕は鹿山家の畑で
  野菜の収穫作業を手伝った。
  匡利さんに穀潰しと言われて、
  腹が立ったので、
  家の手伝いをすることにしたんだ。
貴石(たかし)「ええと、 このくらい色づいたら食べ頃だって、 ハナちゃん言ってたよな・・・」
貴石(たかし)「採れたてのトマト、マジで美味しそう! いっただきま~す!」
嗣昭(つぐあき)「豪勢な食べっぷりだね」
貴石(たかし)「んっ・・・! けほっ、けほっ・・・」
嗣昭(つぐあき)「ああ、すまない。驚かせてしまったかな?」
嗣昭(つぐあき)「こんにちは、君が鹿山家のお客人だね。 噂には聞いてるよ」
貴石(たかし)「は、はじめまして! 僕、久城 貴石(くじょう たかし)と 申します」
嗣昭(つぐあき)「私は皆川 嗣昭(みなかわ つぐあき) だよ」
嗣昭(つぐあき)「こちらは妻の芽衣子(めいこ)、 そして息子の大翔(ひろと)だ」
「はじめまして、久城さん」
嗣昭(つぐあき)「この村は良いところだろう? 気に入ってくれたかい?」
貴石(たかし)「ええ、とても。 水や空気が綺麗だし、 何より野菜が美味しいですね」
嗣昭(つぐあき)「綺麗な雪解け水で育てられた 野菜だからね。 都会の野菜とは違うさ」
貴石(たかし)「どおりで野菜の味が濃いわけだ」
嗣昭(つぐあき)「よかったら、 ウチの野菜もお裾分けしようか?」
貴石(たかし)「えっ、いいんですか!」
嗣昭(つぐあき)「ナスとピーマンが 一度に大量に実っちゃってさ、 ちょうど処分に困っていたんだよ」
貴石(たかし)「僕、ナス大好きです! 焼いても煮ても、 もちろん揚げても最高ですよね!」
嗣昭(つぐあき)「そうだね。 ハナちゃんに作ってもらうといいよ。 ・・・ピーマンはどうする?」
貴石(たかし)「実は僕、 あまりピーマンは好きじゃなくって・・・」
ヒロト「あはは、ボクと同じだね」
貴石(たかし)「うっ・・・」
嗣昭(つぐあき)「心配しなくても、 ハナちゃんなら美味しく調理してくれるよ」
貴石(たかし)「そうですよね。じゃあ、頂きます!」
嗣昭(つぐあき)「良かったら、ウチにも遊びにおいで」
嗣昭(つぐあき)「この村には若い人が少ないからね。 君とヒロトは年が近いし、 良い話し相手になると思うんだ」
ヒロト「えっ、ボクはまだ中学生だよ?」
ヒロト「近いと言っても、 5つは離れているだろうし・・・ 貴石さんの迷惑になるよ」
貴石(たかし)「迷惑なんかじゃないよ。 よし、今からヒロト君の家に 遊びに行こうか?」
ヒロト「えっ、本当に!?」
メイコ「貴石さんは今、 鹿山家のお手伝い中でしょ?」
嗣昭(つぐあき)「仕事を放り出して遊び回っていたら、 匡利君に叱られるぞ」
貴石(たかし)「・・・そうでした」
メイコ「うふふ、お仕事が一段落したら、 是非いらしてください」

〇実家の居間
ヒロト「貴石さん、一緒にゲームやりません?」
貴石(たかし)「おっ、いいね。・・・って、 随分と懐かしいゲーム機だなぁ」
ヒロト「そうですか?」
  ヒロト君が取り出してきたのは、
  一世代前のゲーム機だった。
  ゲームマニアの間では
  評判の良いハードだが、
  既に新型へ移行しており、
  現役機ではない。
ヒロト「ボク、これしか持ってないんです」
貴石(たかし)「いいんじゃない? ソフトは何を持ってるの?」
ヒロト「ええと・・・」
  僕たちは往年の名作アクション、
  「ダンガンマン」を一緒にプレイした。
  たしか僕が小学生の頃に
  流行ったゲームだ。
ヒロト「えいっ・・・このっ・・・・・・!」
貴石(たかし)「ヒロト君、力入れすぎだよ」
ヒロト「でも、このボスを倒さないと 先に進めない!」
貴石(たかし)「僕がコイツを抑えるから、 ヒロト君は後から大砲で攻撃してくれる? コレは協力プレイなんだからね」
ヒロト「・・・うん、分かった!」
ヒロト「やったぁ~! 初めて面クリアしたぞ~!」
貴石(たかし)「おめでとう!」
ヒロト「これも貴石兄ちゃんのおかげだよ」
メイコ「随分と盛り上がっている様子ね。 少し休憩したら?」
貴石(たかし)「ありがとうございます、メイコさん」
メイコ「いえいえ、こちらこそ助かるわ。 この後、ヒロトに勉強を 教えて下さるんでしょ?」
貴石(たかし)「ええ、夏休みとはいえ、 遊んでばかりではダメですからね」
貴石(たかし)「僕、家庭教師のバイト経験があるので、 教えるのは得意ですよ」
ヒロト「ボクは別に・・・ 遊ぶだけでいいんだけどな・・・」
メイコ「ダメよ。まだ夏休みの宿題が 終わってないんでしょ?」
ヒロト「・・・はーい」

〇実家の居間
メイコ「すっかり暗くなってしまったわ」
貴石(たかし)「ええ、そろそろお暇しないと」
嗣昭(つぐあき)「そうだな、ハナちゃんが首を長くして、 君の帰りを待っているはずだぞ」
ヒロト「えっ、そうなの? 兄ちゃんとハナ姉ちゃんって そういう関係?」
貴石(たかし)「違うよっ! 確かにお世話にはなっているけど・・・」
嗣昭(つぐあき)「そうだな、「今は」まだ違うな」
貴石(たかし)「もう、からかわないで下さいよ・・・」
嗣昭(つぐあき)「いやいや、私は本気だよ。 この村には若い人が少ないと話しただろ?」
嗣昭(つぐあき)「君がハナちゃんの婿として、 来てくれるんなら大歓迎だ」
貴石(たかし)「いやっ、その・・・。 ほらっ、ハナちゃんの気持ちも 尊重しないと・・・」
嗣昭(つぐあき)「ということは、 君自身はまんざらでもないんだね?」
貴石(たかし)「・・・彼女は良い子だと思います、ハイ」
嗣昭(つぐあき)「素直でよろしい」

〇農村
嗣昭(つぐあき)「夜道は危険だから、鹿山家まで送るよ」
貴石(たかし)「確かに・・・。見事に真っ暗ですね」
嗣昭(つぐあき)「この村には電灯も満足にないからね。 まぁ、田んぼと畑ばかりだから 仕方ないんだけど」
貴石(たかし)「でも、鹿山家の明かりは見えてるし、 さすがに大丈夫ですよ」
嗣昭(つぐあき)「貴石君、君は田舎をなめている。 明かりも持たずに歩いたら、 イノシシに襲われかねないぞ」
貴石(たかし)「ええっ! それは怖いな・・・」
嗣昭(つぐあき)「それに私は少し君と話がしたい」
貴石(たかし)「僕と・・・話を・・・?」
嗣昭(つぐあき)「ああ、匡利君のことだ」
嗣昭(つぐあき)「彼は妹に構い過ぎている。 そう思わないか?」
貴石(たかし)「・・・僕もそう思います」
嗣昭(つぐあき)「以前から私は ハナちゃんを自由にしてやれ、と 匡利君に忠告しているんだけどね」
嗣昭(つぐあき)「一向に聞き入れてくれないんだ」
嗣昭(つぐあき)「匡利君の ハナちゃんに対する執着は異常だよ」
嗣昭(つぐあき)「以前にも同じようなことがあったんだ」
嗣昭(つぐあき)「村に遊びに来た大学生グループがいてね、 その中の一人がハナちゃんと 随分仲良くなったんだけど・・・」
嗣昭(つぐあき)「ある日、忽然と姿を消したんだ。 ・・・グループ全員がね」
貴石(たかし)「姿を・・・消した・・・」
嗣昭(つぐあき)「彼らとは私も仲良くしていたんだが、 挨拶もなく村を出て行くような 連中じゃなかった」
嗣昭(つぐあき)「つまり、誰かの意思で消されたんだ」
嗣昭(つぐあき)「彼らの二の舞になってほしくない」
貴石(たかし)「・・・それは僕も嫌です」
貴石(たかし)「で、嗣昭さんはどうしたいんですか?」
嗣昭(つぐあき)「ハナちゃんを連れて、 ここから逃げてくれないか?」
貴石(たかし)「匡利さんが許すわけない」
嗣昭(つぐあき)「ああ、だから私たち2人で 彼を拘束しよう。 その間にハナちゃんを連れ出して欲しい」
嗣昭(つぐあき)「君もハナちゃんを助けたいだろう?」
貴石(たかし)「・・・はい」
嗣昭(つぐあき)「よし、では共同戦線といこう。 私が匡利君を呼び出すから、 貴石君はこれで・・・」
貴石(たかし)「・・・・・・」
嗣昭(つぐあき)「これでハナちゃんを救えるんだ」

次のエピソード:生き証人

コメント

  • 畑作業と旧式のゲーム、田舎ののどかな空気感でいっぱいですね!そんな癒されるような雰囲気から一転、、、匡利さんがハナさんに執着する理由が気になります!

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