二十一話 別れ(脚本)
〇黒背景
黒沼 晶「・・・」
黒沼 晶「ここは、どこだ・・・?」
黒沼 晶「暗くて何も見えないな・・・」
──晶
黒沼 晶「ん? 誰だ・・・?」
よく頑張ったな。
これまでずっと苦労をかけてすまなかった
黒沼 晶「この声は・・・莉呑・・・!?」
黒沼 晶「り、莉呑! そこにいるのか!?」
神野 莉呑「ああ。 私はここにいるよ、晶」
黒沼 晶「久しぶりだな。 会えて良かった・・・」
黒沼 晶「でも、お前に会えたってことは・・・ そういうことなんだよな」
黒沼 晶「俺、死んじまったのか」
黒沼 晶「なぁ莉呑、俺は・・・」
黒沼 晶「俺は上手く、やれたのか? お前を、苦しみから解放できたのか?」
神野 莉呑「・・・ああ、君はずっと上手くやってくれたよ」
神野 莉呑「私のことは気にしなくていい。 私は君と出会えて十分幸せだったんだ」
神野 莉呑「今は、君の幸せが私の幸せだ。 だから・・・」
神野 莉呑「これからは、君は自分の人生を生きるんだ」
黒沼 晶「莉呑、それはどういうことだ!? 俺は死んだんじゃないのか!?」
神野 莉呑「こんな私のことは、もう忘れてしまっても構わない」
神野 莉呑「これで・・・本当にさよならだ もう二度と話すこともできない」
神野 莉呑「でも・・・これでいいんだ」
黒沼 晶「待ってくれよ、どういうことなんだよ莉呑・・・!!」
黒沼 晶「頼む、行かないでくれ・・・!!」
〇車内
黒沼 晶「行くな・・・莉呑・・・!!」
黒沼 晶「はっ・・・!?」
渋屋 杏「晶!!」
渋屋 杏「良かった、良かった・・・!! 目が覚めたのね!」
黒沼 晶「渋屋・・・」
黒沼 晶「俺、生きてるのか・・・?」
渋屋 杏「縁起でも無いこと言わないの、ちゃんと生きてるわよ!」
渋屋 杏「雛先生は、晶がギャラジーとして目覚める可能性もあるって・・・!」
渋屋 杏「本当に・・・心配だったんだから・・・!」
黒沼 晶「・・・心配かけたな」
黒沼 晶「きっと、もう大丈夫だ」
黒沼 晶(なんだか、家に帰ってきたような気分だ)
黒沼 晶(そうか。 生きている限り、俺の居場所はここなんだな)
黒沼 晶(さようなら、莉呑。 でも、何があってもお前のことは忘れない)
黒沼 晶(次会う時は、良い土産話をいっぱい持っていくからな)
黒沼 晶「そういえば、俺たちは車に乗ってどこに向かっているんだ?」
黒沼 晶「この道・・・リベリオンじゃねーよな?」
渋屋 杏「あ、えーと・・・ね・・・」
日谷 紗枝「今、黒沼さんは指名手配犯として政府に追われているので、逃げているのです」
黒沼 晶「あー、なるほど・・・」
黒沼 晶「って、ええええぇぇぇ!?」
黒沼 晶「ど、どうしてなんですか!? 俺はギャラジーを倒したんですよね!?」
黒沼 晶「まさか、眠っている間にギャラジーの体が暴走していたとか・・・!?」
渋屋 杏「そ、そうじゃないのよ!」
渋屋 杏「その・・・黒沼が眠っている間に、私がギャラジーの残党を全部倒したの」
渋屋 杏「でも、リベリオンのギャラジー反応が一箇所だけ消えなくて・・・」
渋屋 杏「それが、晶だったの」
渋屋 杏「政府は暴走の恐れがあるとして、研究所に監禁もしくは処分を命じたの」
黒沼 晶「な、なんで起きて早々、しかも体中ボロボロで痛いのにこんな目に・・・」
渋屋 杏「でも大丈夫よ、安心して」
渋屋 杏「今はリベリオンの研究員が一丸になって、晶を守っているの」
渋屋 杏「絶対に、私たちが晶を守りきるわ!」
黒沼 晶「そうなのか。 みんなが守ってくれてるのか・・・」
黒沼 晶「それは心強いな。 ありがとう、杏」
渋屋 杏「!」
渋屋 杏「・・・どういたしまして」
黒沼 晶「あれ? でもどうして紗枝さんが俺を逃してくれてるんですか?」
黒沼 晶「紗枝さんはリベリオンの中で、一番政府に近い人ですよね?」
黒沼 晶「こんなことして大丈夫なんですか?」
日谷 紗枝「大丈夫なはずがないでしょう。 多分私は解雇されますよ」
日谷 紗枝「ですが・・・ 私には確信を持っていることがあるのです」
日谷 紗枝「黒沼さんのギャラジーによる暴走は、決して起こりません」
黒沼 晶「え?」
日谷 紗枝「黒沼さんが打ったのは、ギャラジー化した莉呑さんから作られた薬です」
日谷 紗枝「私と姉さんは、莉呑さんの意志がギャラジーの暴走を止めてくれると信じてみたのです」
日谷 紗枝「黒沼さんがギャラジーに侵されるのを、莉呑さんがただ見ているだけなはずがない」
日谷 紗枝「正直、一か八かでしたが・・・ その腕を見て、上手くいったものと解釈しています」
黒沼 晶「確かに、ギャラジー化していた腕が前より小さくなってる・・・?」
渋屋 杏「莉呑さんが、助けてくれたのね」
黒沼 晶「・・・!!」
黒沼 晶(じゃあ、さっき夢の中で莉呑と出会ったのは・・・)
黒沼 晶(あいつ・・・ 最後の最後まで、俺を守ってくれたんだな)
黒沼 晶(──本当にありがとな、莉呑)
黒沼 晶「でも、本当に色々考えてくれてたんですね。 沙耶さんも、紗枝さんも」
日谷 紗枝「勿論、決して個人的な感情によるものではありません」
日谷 紗枝「これは根拠に基づいた人道的な判断であることを理解しておいてください」
渋屋 杏「良かった、いつも通りの紗枝さんって感じがする」
日谷 紗枝「そ、それはどういう意味ですか!?」
日谷 紗枝「まずい、政府の人間が来ます! みなさんシートベルトを閉めてください!!」
日谷 紗枝「全力で逃げ切ります!!」
「は、はいっ!!」
黒沼 晶「あ、あれ?」
渋屋 杏「紗枝さん、一体何を・・・」
日谷 紗枝「口を閉じて、どこかに捕まってください!」
渋屋 杏「え、ええええ〜!?」
渋屋 杏「きゃああああああああ!!」
日谷 紗枝「よし、2台は動けなくなりました。 あと3台ですね」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)