エピソード13 虚実(脚本)
〇地下の避難所
羽原 貞治「兄貴!!本当に兄貴なのか!?」
羽原 豊「ああ、俺だよ豊だよ・・・」
羽原 豊「貞治・・・デカくなったな・・・」
羽原 貞治「兄貴・・・」
羽原 貞治「ゴメン!! 俺兄貴を最後まで信じられなかった」
羽原 貞治「あの時・・・辛かった兄貴を・・・」
羽原 豊「もういい・・・いいんだ貞治・・・」
羽原 豊「俺のために無期異世界転生までして追いかけてくれたんだよな」
羽原 豊「ありがとう」
羽原 貞治「兄貴・・・」
幹部 ラミィ「感動の再会もいいけど、状況説明しなくていいの?」
羽原 豊「ああ、そうだな!!ラミィ!! すまん、つい・・・」
羽原 貞治「そ、そうだぜ兄貴!! これは一体どういうことなんだよ!!」
羽原 豊「・・・実は」
〇黒背景
おい・・・おい!!熊井!!
無理矢理飲ませられるか!?
お前にはまだ死なれちゃ困るんだよ
熊井総理大臣「・・・んっ!?こ、ここは・・・!?」
〇上官の部屋
熊井総理大臣「ココは!?ヒュメリは!?ヒュメリはどうなった!?」
安藤 竜の姿「女王は死んだよ」
熊井総理大臣「貴様は先程の竜!?」
熊井総理大臣「ナツレの民・・・いや・・・」
熊井総理大臣「女王が言っていた能力とやらを使った転生者・・・か!?」
安藤 竜の姿「ちっ、そういうところは勘が回るんだな・・・」
熊井総理大臣「私を・・・どうする気だ!?」
安藤 竜の姿「なに・・・俺の質問に答えてもらうだけさ」
安藤 竜の姿「お前にさっき飲ませた薬は嘘をつけなくする薬・・・」
安藤 竜の姿「嘘に塗れたお前にはお似合いの薬だ」
熊井総理大臣「な!?」
安藤 竜の姿「質問する」
安藤 竜二「お前の目的はなんなんだ!?」
安藤 竜二「クソ親父!!」
熊井総理大臣「お、お前・・・竜二か!?」
熊井総理大臣「生きていたのか!?」
安藤 竜二「いいから答えろ!!」
熊井総理大臣「・・・私の目的は決まっている」
熊井総理大臣「全ては・・・」
熊井総理大臣「日本国民を守るため!!」
熊井総理大臣「そして・・・」
熊井総理大臣「お前の母親、美花の仇を取るためだ!!」
安藤 竜二「なんだと!?」
安藤 竜二「どういう事だ!?」
熊井総理大臣「全ては7年前・・・」
〇地下室
私が内閣総理大臣に就任してしばらくして
奴・・・ヒュメリが現れた
ヒュメリ女王「おお!!なんじゃあココは!? コトワリとやらが言っていた世界とやらか」
警官「な、なんだ貴様!? どこから入った!! ココは国会議事堂だぞ!!」
ヒュメリ女王「おー、なんじゃあこやつは? この世界の生き物かぁ!!」
ヒュメリ女王「面白そうじゃ!!散策するかのう!!」
警官「と、止まれ!!」
ヒュメリ女王「邪魔じゃい!!」
警官「グギュッ」
ヒュメリ女王「なんじゃなんじゃ!!少し押しただけじゃぞ!! 脆い生物じゃのう!!」
警官「ぐ・・・ぐ・・・」
警官「ぐぁぁぁぁ!!」
ヒュメリ女王「ツッ!!なんじゃこやつらも能力は持っとるんか!?」
〇上官の部屋
「総理!!」
熊井総理大臣「どうした!?血相変えて!!」
後藤防衛大臣「国会議事堂内に不審者が!!」
後藤防衛大臣「早く避難しましょう!!」
熊井総理大臣「なんだと!?」
ヒュメリ女王「おうおう!!ココにも2匹!! 発見じゃあ!!」
熊井総理大臣「ア、アンタは一体!?」
ヒュメリ女王「ワシはナツレの女王のヒュメリじゃ」
ヒュメリ女王「なんじゃ貴様!?ここは立派な部屋じゃのう!?」
ヒュメリ女王「この軟弱な種族の王か!?」
後藤防衛大臣「総理!!逃げてください!!」
ヒュメリ女王「カッ!!」
後藤防衛大臣「ひいっ」
熊井総理大臣(火器の類を持っているようには見えない)
熊井総理大臣(それに奴が持っているのは・・・)
熊井総理大臣(紛れもない・・・人間の腕だ!!)
熊井総理大臣(コイツの正体が何であれ・・・)
熊井総理大臣(まず話をせねば!!)
熊井総理大臣「ヒュメリ女王といったか?」
熊井総理大臣「私は内閣総理大臣の熊井だ」
熊井総理大臣「少し話をしようではないか」
ヒュメリ女王「ほぅ、なかなか肝がすわっておるようだ」
ヒュメリ女王「よいだろう」
〇城の会議室
そこで私はナツレという世界、ヒュメリ女王以下の種族、ゲートの存在
そして、女王が人間を喰らった時に美味に感じた事を聞いた。
女王の力は凄まじく、何らかの交渉をしない限り、多大なる被害が想定される・・・
そう思った私は・・・
熊井総理大臣「ヒュメリ女王・・・ 一つ提案なのですが」
ヒュメリ女王「なんじゃ熊井!?」
熊井総理大臣「日本には死刑や無期懲役という犯罪を犯した者を罰する刑罰があります」
熊井総理大臣「この刑罰を新たに制定する刑罰に置き換えて」
熊井総理大臣「安定的にそちらに人間を送り込むというのはどうでしょうか?」
ヒュメリ女王「なかなか面白い事を思いつくのう熊井」
ヒュメリ女王「だがワシらがそんな悠長に待つ理由が無いと思うんじゃが」
熊井総理大臣「女王、その肩の傷・・・」
熊井総理大臣「先程ケガされてますね?」
ヒュメリ女王「お!?そうじゃそうじゃ!! なんじゃったんじゃアレは!?」
熊井総理大臣「おそらくそれは銃で撃たれたものです」
熊井総理大臣「女王以下ナツレの民がこちらで暴れるとなると」
熊井総理大臣「我々も国民全員が銃を持って対抗することになります」
ヒュメリ女王「うーむ、それは面倒じゃあ。ワシはなんとでもなるが、ほかの連中は死者が出るかもしれん」
熊井総理大臣「私の提案する方法であれば、こちらの世界は静かなまま」
熊井総理大臣「女王たちは狩りと食事を邪魔されることなく楽しめます」
ヒュメリ女王「・・・悪くない提案じゃな」
熊井総理大臣「ですので、ココは一つ、手打ちといきましょう」
熊井総理大臣「大丈夫です。我が国には犯罪者などいくらでもいるのですから」
ヒュメリ女王「ま、貴様の言う通りかもな」
ヒュメリ女王「よかろう、そのかわり早々にその制度とやらを整えるのじゃぞ」
熊井総理大臣「ええ、もちろんです」
熊井総理大臣「そうですね、刑の名前は・・・」
熊井総理大臣「『無期異世界転生』・・・とでもしますかね」
ヒュメリ女王「なんじゃそれは!?滑稽じゃのう!!」
〇上官の部屋
安藤 竜二「ちょ、ちょっと待てよ!!」
安藤 竜二「全国民が銃を持つとかはハッタリだろうけどよ・・・」
安藤 竜二「自衛隊でもなんでも投入して女王を討つべきだったんじゃねぇのか!?」
熊井総理大臣「たしかにお前の言う通り・・・あらゆる兵器を用いれば奴は討てたかもしれん」
熊井総理大臣「だが、それは多くの無関係な国民の死と引き換えになる」
熊井総理大臣「最悪のケースの場合、他国から危険因子ありと判断され」
熊井総理大臣「この国にふたたび核が落ちる可能性もあった」
熊井総理大臣「それに向こうの戦力も不明だったからな」
熊井総理大臣「私はあらゆるリスクを天秤にかけ」
熊井総理大臣「交渉を図ったのだ」
安藤 竜二「でも、そのせいで多くの人間が犠牲に・・・」
熊井総理大臣「無論」
熊井総理大臣「その責任は感じている」
熊井総理大臣「天秤にかけたとは言ったが私は選んだのだ」
熊井総理大臣「一部の人間を地獄に送る事を・・・」
熊井総理大臣「私自身許されるとは到底思っていない」
熊井総理大臣「その報いはいつか受ける」
熊井総理大臣「だが、それ以上に優先すべきは内閣総理大臣として多くの国民の命を守るという事!!」
熊井総理大臣「ただ、それだけだった」
安藤 竜二「でも、それだったら羽原の兄貴とか!!」
安藤 竜二「ここ2年くらいの軽い罪での無期異世界転生は」
安藤 竜二「どう説明つけるんだよ・・・!!」
熊井総理大臣「羽原・・・」
熊井総理大臣「羽原豊か・・・」
安藤 竜二「知ってるのか!?」
熊井総理大臣「ああ・・・」
熊井総理大臣「忘れもしない」
熊井総理大臣「美花が殺された日・・・」
熊井総理大臣「彼も現場にいたのだ」
〇華やかな広場
ヒュメリ女王が現れて一年
私は死に物狂いで無期異世界転生に向けた法改正と世論作りに勤しみ
なんとか1人目の転生者が打ち出せそうな所まで来た
その間ヒュメリをなんとかなだめながらな・・・
だがあの日
ヒュメリ女王「熊井!!遅いぞ!! そろそろ約束の刻じゃぞ!!」
熊井総理大臣「女王!!もう少し、もう少しお待ちください!!」
ヒュメリ女王「もう待てんぞ、ワシもギリギリじゃ」
ヒュメリ女王「ん!?」
安藤 美花「竜一!?」
熊井総理大臣「美花!?どうしてここに!?」
美花とはもう何年も前に別れていたが
定期的に連絡はとっていた
だが、この一年無期異世界転生のために全く連絡が出来ていなかった
安藤 美花「何って竜一が心配で・・・」
安藤 美花「ア、アナタ誰!?」
ヒュメリ女王「なんじゃあコイツは!?」
ヒュメリ女王「今のワシの前に立つんじゃないぞぉ!!」
安藤 美花「キャァァァァァ」
熊井総理大臣「なっ!?」
ヒュメリ女王「ふぅー、スッキリしたわい」
ヒュメリ女王「ん?熊井、先ほどこやつの名を呼んでいなかったか?知り合いか!?」
熊井総理大臣(ヒュメリ・・・)
熊井総理大臣(貴様ァァァァ)
私の胸中は怒りで煮えたぎっていた
だが、私がここで怒りにまかせて襲い掛かれば
全てが台無しになってしまう
私は怒りを殺して
熊井総理大臣「なぁに気のせいですよ」
熊井総理大臣「女王の気が少しでも紛れたのなら良かった」
ヒュメリ女王「ふっ、そうか」
ヒュメリ女王「さて、そろそろゲートから帰ろうかのう」
熊井総理大臣(今に・・・見てろよ)
羽原 豊「い、今のは!?」
熊井総理大臣(まずい、目撃者か!?)
熊井総理大臣「君!!」
羽原 豊「は、はい!! て・・・熊井総理!?」
熊井総理大臣「君が今見たこと今は説明出来ないが他言無用で頼む」
熊井総理大臣「もし、万が一警察が来てもただの誤解だ」
熊井総理大臣「君は無関係だと伝えるだけでいい」
熊井総理大臣「分かったね?」
羽原 豊「え、ええ」
熊井総理大臣「よし、では早く帰るんだ」
羽原 豊「はい!!」
〇地下の避難所
羽原 貞治「兄貴は安藤の母親が殺された現場にいたのか!?」
羽原 豊「ああ」
羽原 豊「熊井総理が言うように、これは並大抵の事じゃないと思った俺は」
羽原 豊「当時子供だった貞治にも真実を伝えず」
羽原 豊「沈黙を守った」
羽原 貞治「でも、おかしくないか!?」
羽原 貞治「あの事件ってたしか刺殺だったってニュースで・・・」
羽原 豊「・・・」
羽原 豊「実は熊井総理の意思に反して事実を改竄し」
羽原 豊「俺を嵌めようとした人物がいる」
羽原 貞治「え!?」
〇華やかな広場
熊井総理大臣(美花・・・)
熊井総理大臣(いつか仇は取るぞ)
???「熊井・・・」
熊井総理大臣「ああ、スマン」
熊井総理大臣「色々あって呆けてしまった」
熊井総理大臣「俺は女王を送ってくる」
熊井総理大臣「事件の後始末まかせるぞ」
熊井総理大臣「柏木検事総長」
柏木検事総長「わかった」
柏木検事総長「任せておけ」
熊井総理大臣「すまんな」
柏木検事総長「羽原豊・・・」
柏木検事総長「彼には供物になってもらおう」
オヤジが黒幕に!?
そんな奴があの能力だらけ。まずい、まずいですね、これは。
お、オヤジぃいいぃぃい!!!!!
前回も地団駄を踏まされて、今回も踏まされるとは!!!!!
こんなどんでん返し、聞いておりません!!!!!(当たり前)
総理、保身を図るセコい人物ではないと思っていましたが、なんて高度な政治的決断…