後宮教室

雛夢

第2話 運動着風シンプルコーデ(脚本)

後宮教室

雛夢

今すぐ読む

後宮教室
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇体育倉庫
  梢は蒼を睨む。辻村蒼が、後宮教室で嫁探しをしている御曹司本人であることを知ったからだ。
辻村蒼「これは・・・その、事情があるんです」
内田梢「女装して女子校に忍び込んでいい事情があるわけ?」
辻村蒼「う・・・」
内田梢「憧れの御曹司が将来のお嫁さんの品定めのためにクラスに潜入してるとは、みんな夢にも思ってないだろうね」
佐野「違います、おぼっちゃまは──」
辻村蒼「佐野、自分で言うよ」
佐野「はい・・・」
内田梢「何、言い訳でもあるの?」
辻村蒼「僕は、後宮教室システムを破壊したいと思っています」
内田梢「え?」
辻村蒼「三年前、父に言われました」
辻村蒼「『お前にふさわしい結婚相手を俺が見つけてきてやる』と」
辻村蒼「そこで初めて、後宮教室の存在を知ったんです」
辻村蒼「僕の相手もそこで選出されることを聞かされました」
内田梢「・・・・・・」
辻村蒼「もちろん抵抗しましたが、父は僕の話を一切聞きませんでした」
内田梢「つまり、自分は被害者だと言いたいの?」
辻村蒼「違います。品定めなどという不純な動機で潜入したわけではない、ということを言いたいんです」
内田梢「ふうん・・・」
辻村蒼「梢さん、お願いがあります」
内田梢「何? このことは黙っていろって?」
辻村蒼「僕に協力して欲しい」
内田梢「は? 協力?」
辻村蒼「はい。一緒にトップを目指しましょう」
辻村蒼「梢さんは進学のために、僕は後宮教室のシステムを壊すためにトップを取る。 目指すところは同じです」
内田梢「1位は私がもらうけど」
辻村蒼「二学期の期末テストまでの成績によって、最終審査に残る二人が決まりま」
内田梢「なるほど、それまでの協力関係ってことね」
辻村蒼「はい、そうです」
内田梢「私、協力なんていらないんだけど・・・勉強は一人でするし」
辻村蒼「そうもいかないと思います」
内田梢「どうして?」
辻村蒼「成績優秀者でありながら、あんな挑発するようなことを言っておいて、みんなが放っておいてくれるはずありません」
内田梢「ひょっとして、人気者になっちゃう? それはちょっと面倒臭いなあ」
辻村蒼「妨害されるってことですよ! みんな後宮教室のトップを取りにきます」
辻村蒼「梢さんはもっと危機感を持つべきです!」
辻村蒼「・・・過去の後宮教室では、成績優秀者に対するいじめが横行したらしいです」
辻村蒼「自殺や退学する生徒もいたとか・・・噂レベルではありますが」
内田梢「・・・・・・」
辻村蒼「事の重大さが理解できましたか?」
内田梢「・・・ぷっ、あはははっ!」
辻村蒼「笑いごとじゃないですっ!」
内田梢「潜入とか、協力とか、妨害とか、まるで巨悪と闘うヒーローみたいだね。 ああ、えっと、今はヒロインかな」
辻村蒼「・・・もう知りません」
内田梢「あはは、わかったわかった。蒼が男だってことは黙ってるよ」
辻村蒼「え?」
内田梢「私は勝手にトップを目指すからさ。蒼もどうにかしたいなら、頑張ってみたら?」
内田梢「私も、いけすかないシステムだとは思うし」
辻村蒼「はい! 梢さんは僕のことを黙っていてもらえば大丈夫です!」
辻村蒼「梢さんに何かあれば、全力で手助けします」
内田梢「いらないってば」
辻村蒼「今回は僕の結婚相手を選出するための後宮教室です」
辻村蒼「誰にも、悲しい想いをしてほしくありませんから」
内田梢「ふうん・・・」

〇おしゃれな教室
  翌日。
内田梢「おはよー、瑠花」
羽井瑠花「・・・・・・」
内田梢(無視か・・・『話しかけないでくれる?』って言ってたっけ)
内田梢「・・・ん?」
  登校した梢が見たのは、自分の机の上に乗った花瓶だった。
内田梢「え、何これ」
桜田「ふっ・・・くく・・・」
  教室のどこからかせせら笑う声がした。
  梢は声のした方向を横目で確認する。
内田梢(あー、あいつか・・・えっと、桜田(さくらだ)・・・下の名前忘れちゃったな)
  その時チャイムが鳴り、先生が入ってきた。
  梢は慌てて机の上の花瓶を隠す。
辻村蒼「す、すみません。遅れました」
  先生よりも少し遅れて入ってきた蒼が、深々と頭を下げる。
先生「次から気をつけなさい。時間に余裕を持って家を出るこ・・・」
先生「なぜ上履きを履いていないのですか?」
  蒼の履いている花のワンポイント柄の靴下に注目が集まった。
辻村蒼「あの・・・無かったので・・・」
先生「遅刻の言い訳にせず、忘れたなら忘れたと正直に言うことです。 来客用のスリッパを借りてきなさい」
辻村蒼「あ、はい・・・」

〇おしゃれな教室
  数日後。体育の授業前に、蒼が梢の元へとやってきた。
辻村蒼「ぼ・・・わたし着替えてきます」
内田梢「後を尾けられないようにね」
辻村蒼「そんなことをするのは梢さんぐらいで・・・あれ・・・?」
内田梢「ん?」
辻村蒼「体操着が・・・え? どこいったんだろ」
内田梢「んー、ああ・・・私のも無いや」
桜田「ぷっ・・・ダッサ。スポーツテストの日に体操着忘れるとか、成績ガタ落ちじゃん」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第3話 べたつく踊り場

成分キーワード

ページTOPへ