後宮教室

雛夢

第1話 後宮教室(脚本)

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雛夢

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〇おしゃれな教室
  桜の舞う季節、高校三年生になった梢は新たなクラスメイトに囲まれていた。
内田梢「内田梢(うちだこずえ)です。よろしくお願いします」
  それぞれが趣味や好きなものなどを付け加えて自己紹介する中、梢は名前だけを言い放ち、椅子に座る。
  梢の隣に座っていた羽井瑠花(はねいるか)が、にこやかな笑顔を梢に向けた。
羽井瑠花「私たちまた一緒のクラスだねっ」
内田梢「・・・ああ、まあね」
先生「そこ、静かに! 仲良くなるのは明日からでも遅くないから」
羽井瑠花「あっ、すみません」
先生「はいじゃあ今からテスト用紙を配るので、裏返しのまま待っててね」
先生「・・・全員に渡ったかなー? じゃ、始め」

〇おしゃれな教室
  梢の通う色之川高校は名門と名高い女子高で、各地から優秀な女生徒が集まっている。
  梢も例に漏れず、将来のために勉学に励む生徒の一人だった。
生徒「はいはーい! カラオケ行く人ー?」
内田梢「・・・・・・」
  初日のテストが終了し、騒がしいクラスメイト達を横目に、梢は黙々と帰り支度を始めていた。
羽井瑠花「梢! テストどうだった?」
内田梢「それなり」
羽井瑠花「あ、その反応は結構よかった時のやつだ! 私にはわかる!」
内田梢「瑠花こそ、機嫌が良いように見えるけど」
羽井瑠花「ふっふっふ・・・東大目指す者同士、梢には負けたくないからね。 コソ勉してきたんだ〜」
内田梢「へえ・・・」
羽井瑠花「あ、梢はカラオケ行かないの?」
内田梢「興味ない」
羽井瑠花「そっかぁ・・・ま、梢らしいか。また明日ね~」

〇おしゃれな教室
  翌朝。教室に入った梢は、複数の刺すような視線に晒されていた。
内田梢「・・・?」
内田梢(なんでみんな私を見るんだ・・・?)
  黒板には昨日のテストの順位が張り出されている。
内田梢(あれ、2位か・・・。満点だったと思うんだけどなぁ・・・)
内田梢(1位は辻村蒼さん(つじむらあおい)? ・・・誰だろ?)
生徒「辻村さん、満点なんてすごーい」
辻村蒼「いや、たまたま勉強してたところだっただけです・・・」
内田梢(ああ、あの子か・・・見たことない生徒だな)
羽井瑠花「・・・・・・」
内田梢「ああ、おはよう瑠花」
羽井瑠花「話しかけないでくれる?」
内田梢「え?」
内田梢(行っちゃった・・・なんなのあの態度)
内田梢(みんな、昨日とは別人みたい。 何が起きてるのかさっぱり──)
辻村蒼「あの、すみません」
内田梢「・・・なに?」
辻村蒼「辻村蒼といいます。内田梢さん、ですよね」
内田梢「そうだけど」
辻村蒼「少し話したいことがあって・・・ホームルームの後、一緒に来てくれませんか」
内田梢「・・・? まあ、いいけど」
先生「みなさん、ホームルームをはじめますよ」
先生「テストの順位は確認しましたね」
先生「皆さんもうご存じかと思いますが、今年の色之川高校三年六組は『後宮教室』です」
内田梢(『後宮教室』・・・?)
先生「『後宮教室』は、自分の息子に優秀な女性と結婚して欲しいと願う良家の方が」
先生「ふさわしい最高のパートナーを探すために作られたクラス」
先生「後宮教室でトップの成績を取った人が、晴れてその良家に嫁ぐことが決定します」
内田梢(は? 一体なんの冗談?)
先生「今年はそのシステムを創設した、わが高校理事長のご子息のパートナー選びとあって」
先生「今までにない熾烈な争いが予測されています」
先生「皆さん、頑張ってテストの順位を上げてくださいね」
  まるで冗談のような話に驚いているのが自分だけであることに、動揺を隠せない梢。彼女はふと、蒼からの視線に気づく。
内田梢(ああ、辻村蒼がしたい話ってこのことか)

〇階段の踊り場
  ホームルームの後、梢が蒼に連れて来られたのは、人気の少ない北階段の踊り場だった。正面に立つ蒼が、話をはじめる。
辻村蒼「今年の三年六組が『後宮教室』なの、知っていましたか?」
内田梢「知らなかった」
辻村蒼「ああやっぱり・・・」
辻村蒼「基本的に後宮教室に入るのは、優秀かつ後宮教室入りを希望する生徒なのですが・・」
辻村蒼「梢さんのように特に優秀な生徒は、勝手に入れられる事例もあるようです」
内田梢「そんな勝手な・・・」
辻村蒼「昨日三年六組のクラスメイトたちで親睦会があって、みんな『後宮教室』について知ることになったのですが」
辻村蒼「梢さんの姿はなかったもので」
内田梢(瑠花の態度が豹変したのは、そういうわけか)
辻村蒼「巻き込まれたくなければ、成績を落とした方が良いです」
内田梢「やっぱりね。そういう魂胆か」
辻村蒼「え?」
内田梢「自ら成績を落とせって言いにきたんでしょ?」
辻村蒼「そうです。昨日のテストで2位を取りましたよね?」
内田梢「うん」
辻村蒼「上位は狙われやすいんです」
内田梢「狙われる? うちのクラスにはスナイパーでもいるの?」
辻村蒼「冗談じゃなくて! 本当に危険だから、言ってるんです!」
内田梢「大袈裟だなあ。結婚争いだかなんだか知らないけど、どうぞ勝手にやってくださいって言ってるの」
内田梢「私はただ、東大の理学部に行きたいだけ。そのためには、成績を落とすわけにはいかない」
辻村蒼「それは確かに大事なことですが・・・でも、後宮教室所属になってしまったからには、周囲は放っておいてくれません」
内田梢「詳しいね、成績1位の辻村蒼さん。 もしかして、私に越されるのが怖いの?」
辻村蒼「違う、君はわかってない・・・!」
内田梢「・・・まあ、あなたがどう思ってるかはどうでもいいことなんだ」
内田梢「私は何を言われても、成績を落とすつもりはない」
内田梢「じゃ、そういうことだから」
辻村蒼「ちょ、ちょっと待ってください!」

〇おしゃれな教室
  梢と蒼が教室に戻ってくると、教室中のあちらこちらでヒソヒソ話が始まった。
内田梢「あー、もう・・・」
  梢はため息をつきながら黒板の前に出た。
  蒼は梢の後ろ姿を訝しげに見つめ、席に座った。
内田梢「すみません! 改めて自己紹介させてください」
  梢のその一声で、騒がしかった教室がしん、と静まり返った。
内田梢「えーっと、どうも。成績2位の内田梢です」
辻村蒼「・・・・・・」
内田梢「私は将来、東帝大学の星川教授の元で数学を研究したいと考えています」
内田梢「そのために、今からたくさん勉強して良い成績を残し、推薦入試を受けるつもりです」
内田梢「そして今日、競争相手になり得るみんなが勉強を頑張る理由を聞いて、私はとても安心しました」
生徒ら「は・・・?」
内田梢「『ああなるほど、このクラスでなら、きっと私が一位だな』と思ったからです」
内田梢「私は必ず成績トップを勝ち取ります。あしからず」
  梢の発言で、教室内がざわめく。クラスメイトから梢に対しての敵意が明確なものとなった瞬間だった。
辻村蒼「なんてことを・・・」
  蒼が頭を抱えている。そこでチャイムが鳴り響いた。
  少し遅れて、先生が入ってくる。生徒達は慌てて自分の席へと戻っていった。
先生「はーい、それじゃあ授業を・・・」
先生「内田さん? 教壇で何してるの?」
内田梢「あー、若気の至りを尽くしてました」

〇おしゃれな教室
  昼休み。
  次の体育の授業に向けて、生徒達が着替え始めていた。
内田梢「次、体育かぁ・・・」
辻村蒼「・・・・・・」
内田梢「ん・・・?」
  こそこそと教室から出ていった蒼を、梢は見逃さなかった。

〇体育倉庫
佐野「こちらに」
辻村蒼「佐野さん、ありがとう」
  人気のない体育倉庫に転がり込んだ蒼は、背の高い黒スーツの男と話し込んでいた。
佐野「どうでしょう、うまくなじめそうですか?」
辻村蒼「バレては・・・ないと思うけど」
佐野「ふむ、では別の問題が?」
辻村蒼「いや・・・まあ、大丈夫。潜り込むことには成功したから、あとは上手く立ち回れれば・・・」
辻村蒼「自分の結婚相手同士の争いに自分が参加するなんて、まるで御伽話──」
佐野「・・・!? しっ!」
辻村蒼「え?」
佐野「・・・うかつでした」
  入り口のドアが開き、体育倉庫内に差し込んでいた一筋の光が大きくなる。
内田梢「はあ、そういうことか」
辻村蒼「こ、梢さん、尾けてきたんですか・・・」
内田梢「後宮教室とかいう馬鹿げたシステムを使うだけに留まらず、自ら潜入して品定めでもするつもり?」
内田梢「辻村蒼。まさかあなたが御曹司本人だったなんてね」

次のエピソード:第2話 運動着風シンプルコーデ

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