第2話 復活のババア!?(脚本)
〇旅館の受付
大女将が死んでから三年の月日が経った。
田舎の警察は、大女将を事故死として処理し、詳しく捜査しようとしなかった。
そして、その後の木皿儀旅館は・・・
若女将「・・・いらっしゃいませ。木皿儀旅館へようこそ」
若女将「ここで見聞きしたことは、決して他言しませんよう・・・」
宿泊客A「出たー!! 名物の若女将! SNSに書かれて通り、めっちゃ顔色ワリー!!」
宿泊客B「これなら、マジで出そうだな。謎の死をとげた大女将の亡霊!」
その時、ちょうど宿泊客の視界に入る部屋の障子の向こうで、黒い影がものすごい速さで通り過ぎた。
宿泊客A「うわっ!? 今、障子の向こうでなんか動いたぞ!?」
宿泊客B「お、俺も見た! 黒い人影みたいな・・・! こえぇ、マジで出るぞ、ここ!」
若女将(フフフ。ウケてるウケてる。全部私たちの仕込みなのに、馬鹿な客どもね)
若女将(やっぱり、笹川さんの助言通りにして良かったわ)
若女将(ババア目当ての古参の客は、めっきり減ったけど、オカルト好きの新規の客がどんどん来る!)
若女将(この木皿儀旅館は『泊まれるお化け屋敷』に生まれ変わったのよ!)
若女将(笹川さんと、この私の手で! 死んでくれたババアには感謝だわ!)
若女将(不満を言えば『必ず化けて出る』って言ったくせに、未だに化けて出てこないことかしら。ホント、使えないババア)
その時、木皿儀旅館に笹川が訪れた。
笹川「こんにちは若女将。調子はどうですか?」
若女将「笹川さん! また来てくれたんですか? さあさ、上がってください! 一番いい部屋を準備いたしますわ♪」
笹川「いえ、今日は新規の提案があるんです。若旦那も呼んでくれますか?」
若女将「新規の提案・・・?」
〇旅館の和室
若女将「ええっ!? 大女将の三回忌をイベントにする!?」
若旦那「ど、どういうことですか、笹川さん!?」
笹川「この旅館に来るのは、亡くなった大女将の怨霊目当ての客ばかりですよね?」
笹川「でしたら、大女将の三回忌は絶好のビジネスチャンスですよ!」
笹川「霊媒師やテレビ局、有名なDJも呼んで若者向けのイベントとして、パーッとやりましょう!」
笹川「きっと収益もかなりのものになるはずです」
若女将「素敵! さすが笹川さんね!」
若旦那「そ、そんな罰当たりな・・・」
若女将「なに言ってんのよ。死んだ大女将だって、旅館が繁盛した方がうれしいに決まってるでしょ」
若旦那「う、うーん、そうかな・・・」
若女将「新しい車だって買えるかもしれないわよ」
若旦那「車! そうだね、盛大にやろう!」
若女将(ふふっ、単純バカで助かるわぁ)
仲居A「ねえ、今の聞いた?」
仲居B「うん・・・さすがに、三回忌をイベントにするなんて、やりすぎだよね」
仲居A「本当に大女将が化けて出てきたら、どうするつもりなんだろ・・・」
仲居B「やだ、ちょっと止めてよね・・・!」
〇屋敷の大広間
そして、大女将の三回忌イベント当日。
大広間にはオカルト好きの若者達が大勢集まり、さながらクラブのような雰囲気となっていた。
若女将「ようこそ『大女将の呪い~三回忌は死の香り』へ・・・」
若女将「本日ここにいらっしゃったみなさん、全員地獄生きです。 逃げるなら、今のうちですよおぉぉぉ!?」
DJ「いえーい! テメーら、逃げるなら、今のうちだぜ~!」
宿泊客A「いえ~い!」
宿泊客B「スゲー! 今日はこの間よりもさらに本格的になってるじゃん!」
宿泊客A「ああ! 宿中に貼られてるお札に、大女将の遺影!」
宿泊客A「若女将の態度もこの間の三割増しで不気味だし!」
宿泊客B「それに、あれ見ろよ! もしかして有名な霊媒師のミラクル武本じゃね!? テレビクルーまで来てんじゃん!」
宿泊客A「マジで!? 気合入ってんなー!」
ミラクル武本は、怪しげな呪文を唱えながら、大広間を霊視していた。
ミラクル武本「むむっ・・・! やはりこの宿、呪われておる・・・」
ミラクル武本「あちこちに、怨霊が歩きまわっておるぞ・・・!」
宿泊客A「ひえ~! マジでヤバイかもよ!?」
心霊雑誌のライターも、あちこちで話を聞き回っている。
ライター「すみません、ちょっとお話を・・・」
若女将「ここでのことは、他言無用。守らないと大女将に祟られますよ・・・?」
ライター「おおっ! 噂通りの反応だ! 徹底してるな~!」
仲居B(はあ・・・馬鹿みたい。客も多すぎだし、給料良くなきゃ、やってらんないよ)
宿泊客A「仲居さん。料理のお替り下さーい」
仲居B「はいはい、ちょっとお待ちください」
若女将(フフフ、まさかこんなにお客が来てくれるなんて、ババアも大したもんね)
若女将(いえ、本当にすごいのは笹川さんよ)
若女将(こんなに有名人を集めてくれたんですもの・・・!)
若女将(どこかのぼんくら若旦那よりも、百倍役に立つわ!)
宿泊客B「すみません、ドリンクのお替りいいですか?」
若女将「はい、ただいま!」
〇広い厨房
若女将「ちょっと、イベント会場に持って行くドリンクまだ?」
若女将(・・・って、板長も仲居たちもかなり忙しそうね)
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