〇ゴシップボックス_ゴシップボックス・内（ライティング白）
田中あい「五億円・・・」
青木谷さち「どうして、そんな金額」
室井秀明「レバリッジって知ってるか？」
薬師寺透「まぁ、名前だけは」
室井秀明「要は、他人の資本を使って自己資本よりでかい金額の資産を扱うやり口のことなんだが・・・それでしくじった」
青木谷さち「でも、五億って・・・どんなしくじり方したの」
室井秀明「オリンピックで民泊が間違いなく当たるっつうから、都心で民泊向きの不動産漁ってたんだ」
室井秀明「それなりに買い集めたところで・・・このコロナ騒ぎだ」
室井秀明「ソシャゲ風に言えば、爆死だな。大爆死だ」
薬師寺透「ひえぇ・・・」
田中あい「投資って怖いですね・・・」
青木谷さち「コロナのせいで投資が焼け付いた話はよく聞いたけど・・・こんなに身近に被害者がいたなんてね」
薬師寺透「でも・・・会社は、ドルドラは大丈夫なんですか？」
室井秀明「個人資産の話だから、まだ表には出てないが・・・俺が個人で返せなけりゃ、会社にも何かしら影響はあるかもしれない」
薬師寺透「ええっ!? オレ、ドルドラのアカウントレベル200まで育てたんですよ！」
薬師寺透「ドルドラ無くなったら困りますよ！」
室井秀明「俺は会社ごと育ててきたんだ。 ドルドラをいちばんなくしたくねえのは間違いなく俺だ」
薬師寺透「あ、そっか・・・そうですよね、すいません」
室井秀明「・・・お前、本当に素直なとこあるよな」
室井秀明「とにかく、他の連中は知らねえが、今の俺を資産目当てで狙ってもメリットなんざひとつもない」
室井秀明「脅したって何にも出てこねえからな」
青木谷さち「でも・・・室井さんは、そのこと誰にも言ってないんでしょ？」
青木谷さち「渋谷の社長はお金持ちみたいなイメージで、狙われてもおかしくないんじゃない？」
室井秀明「いや、その可能性も低いな」
青木谷さち「どうして？」
室井秀明「もし犯人が金目当てで俺たちを攫ったとして、こんな部屋に放り込む理由がない」
室井秀明「通帳やパスワードが欲しいなら個別に脅して聞けばいいだけで、他の連中と接触させるメリットがない」
室井秀明「それに・・・この部屋には、どう見たって金持ってない薬師寺がいるだろ」
青木谷さち「あ、そうだったわ」
薬師寺透「そんなすぐ納得しないでくださいよ」
田中あい「でも・・・たしかに借金がある人たちなら、同じ場所に閉じ込めることはありそうですよね。マグロ漁船とか」
青木谷さち「ねえ、また確認するけど、あなた本当に女子高生？」
田中あい「あ、はい。私、祖母の影響で極道小説が大好きで・・・」
青木谷さち「どんな祖母よ」
田中あい「あまり過去は、語らない人なんです・・・」
室井秀明「おい、時間がないんだ、話を戻すぞ」
室井秀明「・・・俺はこの部屋には、借金があるやつが放り込まれてるんじゃないか疑ってる」
室井秀明「もしかすると本人じゃなく親族が借金を抱えてるパターンもあるのかもしれない」