第4話 薫と咲希(脚本)
〇貴族の部屋
先程のメイドさん、柿畑栞(かきはたしおり)さんに連れ出された先は、咲希の自室だった。
紫苑「・・・・・・」
咲希(和馬)「・・・・・・」
紫苑「・・・先程は、その・・・」
紫苑「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
咲希(和馬)「そんな、とんでもない!」
咲希(和馬)「私の為に声を荒げてくれたんですよね・・・たぶん」
咲希(和馬)「・・・教えてください」
咲希(和馬)「事故に遭う前、私と薫さん・・・お母さんの間に何があったんですか?」
紫苑「・・・・・・」
紫苑「・・・旦那様がご存命の頃は、奥様はお嬢様のことを本当に可愛がられておりました」
紫苑「・・・ですが、今から16年前、お嬢様がまだ2歳の時、旦那様が亡くなられて・・・」
紫苑「・・・それからでした」
紫苑「奥様はお嬢様に厳しく教育をするようになったのです」
紫苑「勉学、マナー、習い事・・・」
紫苑「・・・もちろん奥様はお嬢様を立派な大人に育てる為に、いろいろと指導したのでしょう」
紫苑「・・・ですが、それが親子の溝を深めていきました」
紫苑「奥様とお嬢様は年々会話が少なくなっていきました」
紫苑「そして・・・あの事故の数日前・・・」
〇屋敷の書斎
咲希「嫌っ! 私はこんな家、継がないっ!!」
薫「待ちなさい、咲希!」
薫「あなたも今年で18歳」
薫「高校を卒業したら婿を取って、私の跡を継ぐのよ!」
咲希「私の人生を勝手に決めないで!! 私にだって夢があるの!!」
咲希「・・・聞いて、お母様。 私ね・・・」
薫「あなたの夢なんて知ったことではないわ!」
薫「園崎家の跡取りとしてこの家を継ぐ」
薫「それがあなたの幸せなの!」
咲希「・・・っ!!」
咲希「お母様の分からずやっ!!」
薫「・・・なら、もういいわ」
薫「そんなに自由が欲しければ、この家から出ていきなさい!!」
咲希「出てってやるわよ、こんな家!!」
咲希「うぅ・・・」
〇洋館の廊下
紫苑「お嬢様! お待ちください!!」
咲希「止めないで、紫苑」
咲希「出ていけって言ったのはお母様なんだから」
紫苑「・・・っ!」
ガシッ!
咲希「・・・手を離して、紫苑」
紫苑「私はもう10年以上もこのお屋敷にお仕えしております」
紫苑「幼い頃に両親を失い身寄りの無かった私を、旦那様と奥様はこのお屋敷に受け入れてくださいました」
紫苑「そのご息女であるお嬢様には、このお屋敷で幸せになっていただきたいのです」
咲希「紫苑・・・」
咲希「・・・私も熱くなりすぎたみたい」
咲希「少し頭を冷やして考えるね・・・」
紫苑「お嬢様・・・」
その日の真夜中でした。
お嬢様がこのお屋敷を出て行かれたのは。
〇貴族の部屋
紫苑「・・・私は何日も何日もお嬢様を探しました」
紫苑「ようやくお嬢様を見つける事ができた時には、もう・・・」
紫苑「あの時、もっとお嬢様の気持ちに寄り添えていたら・・・っ!」
紫苑「もっと早くお嬢様を見つけ出せていれば・・・っ!」
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