読切(脚本)
〇田舎の病院の病室
これは私が20代の頃の話です。
大学時代から仲良くしていた友人Aが、
20代という若さで
病気のため亡くなりました。
Aは卒業後に上京したため、
直接会う機会こそ少なかったのですが、
毎日のようにネット上で
会話をしていました。
闘病中のAに誘われて、
一緒にMMOを
プレイしていたこともあります。
一緒に過ごした時間は短かったものの、
とても大切な友人でした。
〇田園風景
四十九日が過ぎ、落ち着いた頃に
友人Aの母にお願いして、
墓参りに同行させてもらいました。
Aのお墓は、
県北部のひなびた農村にあります。
周囲には何もなく、
田園風景の中に友人一族の墓所が
溶け込んでいるような場所でした。
〇本棚のある部屋
私「・・・ということで、 Aのお墓参りに行ってきたんだよ」
その日の夜。
私は共通の友人であるBに
Aの墓参りに行ったことを報告しました。
友人B「へぇ、そうなんだ。 お葬式は参列できなかったけど、 私もせめて墓参りくらいはしたいな」
私「道案内するよ。 今日行ったばかりだから、 まだルートは覚えてる」
友人B「本当!? だったら休みを調整して、 そちらに行くね」
友人Bは東京在住のため、
ネット上での会話が中心ですが、
元々リアルで面識があります。
会うことに何ら問題はありません。
そして、約1ヶ月後の土曜日に
一緒に友人Aの墓参りへと
向かうことになりました。
〇駅前広場
約束の当日。
私は某県の某ターミナル駅で
友人Bと待ち合わせをしました。
本当は午前中から
出掛ける予定だったのですが、
友人Bに急な仕事が入り、
出発時間が昼過ぎになりました。
友人B「レンタカー、借りてきたよ。 道案内、お願いね」
私「任せて!」
私はペーパードライバーなので、
運転はBにお願いしました。
〇走行する車内
友人B「ナビを使うから、 大体の場所を教えてくれる?」
私「ええとね、○市○○だよ」
友人B「えっ、思ったよりも遠いね。 2時間くらい掛かるんだ」
私「うん、県北のカルスト台地の上だからね。 観光名所だから道は整備されているし、 特に難所はないよ」
友人B「カルスト台地ということは、 鍾乳洞が有名な所なんだね」
私「そのとおり! とりあえず、ナビには○○洞と入力して、 進めばいいよ」
〇走行する車内
私「国道を下りた後、 この県道を進んで・・・」
友人B「なかなかの山道だね」
私「そのまま県道を進み・・・」
私「ここで細い道に入ります。 しばらく道なりに進んで・・・」
〇走行する車内
私「うん、この辺だよ」
私「目の前の家は友人Aのご親戚の家で、 前回はここに車を 止めさせてもらったんだ」
私「ここから田んぼのあぜ道を歩いて、 10分くらい掛かるよ」
友人B「さすがに無連絡でご親戚の家に 駐車するわけにはいかないから、 車はあぜ道に置いて歩こうか」
私「そうしよう」
〇田園風景
出発が遅れたため、
既に太陽は沈み、
周囲はすっかり暗くなっていました。
あぜ道には照明はなく、
また民家もありません。
それでも、私たちは真っ暗闇のあぜ道を
歩き続けました。
私「ごめん、さすがに暗すぎて 場所が分からない・・・」
私「明るければ、あぜ道からでも 見えるんだけどなぁ」
友人B「ああ・・・。 これは無理だね。何にも見えない」
私「どうしよう・・・ せっかくここまで来たのに」
友人B「ごめん。 私の予定が遅れたことが原因だし、 今回は諦めるよ」
私「うう、無念・・・」
ここで友人Aのお母様に
連絡を取ることができれば
よかったのですが・・・
前回の墓参りは、
別の友人がお膳立てをしてくれたので、
私はお母様の連絡先を知りませんでした。
私たちは諦め、
車を停めた場所まで戻りました。
車に乗り込む前に、
未練がましく後ろを振り返りました。
すると・・・
私「・・・あれ?」
友人B「どうしたの?」
私「あれを見て! なんか田んぼの中が光ってる!」
友人B「えっ!?」
私「行ってみようよ!」
友人B「・・・危険かもしれないし、 車で行きましょう。 この広さのあぜ道なら大丈夫だから」
私「了解!」
〇走行する車内
私たちは夜のあぜ道を
ゆっくりと車で進みました。
先ほどの光は、
まだ田んぼの中で
ぼんやりと光っています。
友人B「さっきはあんな光、なかったよね?」
私「歩いていた時にはなかったよ」
友人B「虫除けのライト、とかかな? そこに近所の方がいれば、 お墓の場所を教えてもらえるかもね」
私「そうだね、誰かがいるのかも!」
あぜ道を進むにつれて、
徐々に光は弱くなり・・・
遂には消えてしまいました。
友人B「消えちゃった・・・」
私「あっ、見て! 目の前にお墓があるよ!」
私「・・・うん、間違いない。 A一族のお墓だ!」
友人B「うそっ・・・ やっとたどり着けたんだね」
〇田園風景
私たちは車から降り、
友人Aの墓標に手を合わせました。
友人B「・・・先ほどの光、 Aが私たちを案内してくれたんだね」
私「お墓の前で光は消えたし、 きっとそうだね」
友人B「「こら~! 近くまで来たのに、 何で迷ってるの!?」 ・・・って感じかな?」
私「あはは、Aなら言いそうだね」
こうして私たちは
無事お墓参りを
済ませることができました。
あの光は心霊現象かもしれませんが、
私も友人Bも全く怖いとは
思いませんでした。
むしろ迷っている私たちを、
友人Aが導いてくれたんだと
嬉しく思いました。
〇田園風景
あれから月日は流れ・・・
私はまた友人Aのお墓参りに
行きたいと考えています。
・・・ですが、
○年前のことなので、
さすがに細かい道のりは忘れました。
再度Aの手を
煩わせるわけにもいかないので、
今度はAのご家族に連絡を取ってから
向かおうと思います。
怖くはないけれど、読んだ後でじんわりと不思議な感覚に包まれるお話でした。遠方まで時間をかけてお墓参りに行く友達思いの作者さんと友人Bさんの心がけにも感心いたしました。
ナント、私が10人目の読者だそうです❤️
人と霊の垣根を超えて、アッチの世界まで続く友情‥
良いですね❤️💕☺️
末永く仲良くして下さい🌸
亡きご友人もお会いしたくて楽しみにしていたのに、なかなか来ずにまだかと急かしたのかもしれませんね。とっても清々しくなる不思議体験ですね。