忘れてはいけない日

夜缶

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〇高い屋上

  次のニュースです
  〇〇県〇〇市の高校に通う女子生徒が
  屋上から飛び降り、死亡しました
  警察によりますと──

〇階段の踊り場

〇高い屋上
「うぅ」
若宮雫「うぅ・・・!」
若宮雫「何で誰も・・・気づいてくれないの!」
若宮雫「あのっ!」
山本優樹「うぉっ!?」
若宮雫「あっ」
若宮雫「もしかして」
若宮雫「私のこと」
若宮雫「ま、待って!!」
若宮雫「お願い! 見えてるなら返事を・・・!」
若宮雫「何でも、いいから!」
山本優樹「は、い」
若宮雫「!」
若宮雫「見えてる!? 私のこと・・・!」
若宮雫「ていうか、聞こえ・・・る?」
山本優樹「聞こえ、ます」
若宮雫「う──」
若宮雫「うぅ。良かったぁ・・・良かったぁ!」

〇高い屋上
若宮雫「山本優樹君、って言うんだね」
山本優樹「山本でいいよ」
若宮雫「うん! 私は若宮雫!」
山本優樹「うん」
若宮雫「山本君はいつもここで食べてるの?」
山本優樹「うん」
若宮雫「そっかぁ」
若宮雫「あのさ」
山本優樹「うん」
若宮雫「何で、聞こえてたのに無視したの?」
山本優樹「えっと」
山本優樹「め、めんどくさそうだったから?」
若宮雫「何それ酷っ!」
山本優樹「ごめん」
若宮雫「フフッ」
山本優樹「ど、どうしたの?」
若宮雫「ううん! 優樹君は面白いなって!」
山本優樹「そ、そう?」
若宮雫「うん! 私はそう思う!」
若宮雫「あの、さ」
山本優樹「うん」
若宮雫「明日も・・・ここに来てくれる?」
山本優樹「えっと──」
山本優樹「ごめん。行かなきゃ」
若宮雫「あっ・・・うん」
山本優樹「若宮さん」
山本優樹「明日も、来るよ」
若宮雫「う、うん! 絶対に来て!」

〇階段の踊り場
山本優樹「何で・・・」
山本優樹「よりにもよって、僕があの子のこと・・・」

〇高い屋上
「山本君!」
山本優樹「若宮さん・・・」
若宮雫「来てくれたんだね!」
山本優樹「うん・・・約束だからね」
若宮雫「えへへ」
山本優樹「そんなに嬉しいの・・・?」
若宮雫「もちろん!」
若宮雫「だって、ずっとここにいるんだもん」
山本優樹「えっ。ずっと?」
若宮雫「何故かここから動けないの」
山本優樹「そっか・・・それは大変だね」
若宮雫「だからね」
若宮雫「私、山本君と沢山喋りたい!」
山本優樹「僕で、よければ・・・」
若宮雫「うん! お願い!」

〇高い屋上
若宮雫「山本君ってさ」
山本優樹「うん」
若宮雫「友達とかいる?」
山本優樹「いるよ」
若宮雫「えっ!?」
山本優樹「えっ?」
若宮雫「あっいやその」
若宮雫「いないのかと」
山本優樹「いない前提で聞いてきたの?」
若宮雫「はい・・・」
山本優樹「酷くない?」
若宮雫「き、昨日のお返し!」
山本優樹「そっか」
山本優樹「じゃあ仕方ない、かも」
若宮雫「友達とは食べないの?」
山本優樹「たまに一緒に食べるよ」
山本優樹「でも」
山本優樹「1人の方が好きだから」
若宮雫「そ、そっか」
若宮雫「山本君は自分を分かってるんだね」
山本優樹「え?」
山本優樹「そう、かな・・・?」
若宮雫「うん」
若宮雫「私、いつも流されてたからさ」
若宮雫「そのせいか、友達とも上手くいかなくて」
山本優樹「若宮さん・・・」
若宮雫「分かってるの・・・」
若宮雫「私が自殺したこと・・・」

〇学校の廊下
友人1「ねぇ若宮さん」
友人1「お願いがあるんだけど」
若宮雫「な、何かな?」
友人2「最近新しくできたお店、あるじゃん?」
若宮雫「う、うん・・・?」
友人1「私たち、お金なくてさー・・・」
友人2「だからぁ」
「代わりに買ってきてくれない?」
若宮雫「で、でも私もお金が──」
友人2「それなら盗んできてもいいからさぁ」
若宮雫「えっ・・・何言って・・・」
友人2「なぁに? 嫌だって言いたいの?」
若宮雫「そういう、問題じゃなくて・・・」
友人1「ねぇ若宮さん?」
友人1「私たち・・・」
  『友達』でしょ?
友人1「ね?」
若宮雫「う、ん・・・」
友人2「うんうん! 持つべきものは友達よねぇ!」
友人1「じゃ、よろしくね」

〇教室
「若宮さーん」
友人1「昨日のやつ、買ってきてくれた?」
若宮雫「ご、ごめんね? 持ってきてないんだ・・・」
友人1「は? 何でさ?」
若宮雫「だ、だって流石に盗みは犯罪だし・・・」
友人1「約束したじゃん」
若宮雫「約束?」
友人1「したでしょ?」
若宮雫「だ、だとしても・・・」
友人1「は?」
若宮雫「えっと、いやその・・・」
友人1「はぁ。もういいよ」
若宮雫「えっ?」
友人1「そんなにノリ悪いんなら、もう友達やめる」
若宮雫「え・・・?」
若宮雫「何を言って・・・」
友人1「もう話しかけてこないで」
若宮雫「どう、して・・・?」

〇学校の廊下
「最近さぁ。若宮さん、ノリ悪くなぁい?」
「ねぇ? 何でだろうねぇ?」
「噂ではどっかの男と夜遊びしてるって」
「えーやばぁ! やーらしぃ!」
若宮雫(何で、そんなこと、してないのに)
若宮雫(私、何かしたの・・・?)
若宮雫(あっ)
若宮雫「ね、ねぇ!」
若宮雫(どうして)
若宮雫(私が間違ってるの?)
若宮雫(分かんないよ)

〇高い屋上
若宮雫「それで全部嫌になって」
若宮雫「ここで投げ出しちゃった・・・」
山本優樹「・・・」
若宮雫「馬鹿だよね、ほんと」
若宮雫「ごめんね。暗い話して」
山本優樹「いや」
山本優樹「僕は、聞いてるだけだから・・・」
若宮雫「ううん」
若宮雫「聞いてくれるだけでも嬉しいよ」
若宮雫「ありがと」
山本優樹「若宮さん、僕は──」
若宮雫「あはは。鳴っちゃったね」
若宮雫「ほら。授業に遅れちゃうよ?」
山本優樹「う、ん」
若宮雫「また明日ね!」
若宮雫「行っちゃったなぁ」
若宮雫「私・・・」
若宮雫「どうすれば、いいんだろ」

〇階段の踊り場
山本優樹「・・・」
山本優樹「・・・せめて、償わなくちゃな」
山本優樹「これは、僕の責任だ・・・」

〇高い屋上
「若宮さん」
若宮雫「や、山本君!?」
若宮雫「ど、どうしたの?」
山本優樹「若宮さんと」
山本優樹「話がしたかったから」
若宮雫「山本、君・・・」
若宮雫「私もね」
若宮雫「山本君と喋りたい」

〇高い屋上
若宮雫「それで課題忘れちゃって」
若宮雫「何とか授業まで間に合ったの」
若宮雫「でもその日、先生がそもそも来なくて」
若宮雫「『課題出さなくても大丈夫だよー』って」
若宮雫「焦って損した時があってさ」
若宮雫「まぁ、計画的にやらなかった私が悪いけど」
山本優樹「僕もあるよ」
若宮雫「山本君も!?」
山本優樹「うん」
若宮雫「そ、それでどうしたの?」
山本優樹「えっと」
山本優樹「素直に先生に言ったよ」
若宮雫「誤魔化さないんだ!」
山本優樹「うん」
若宮雫「凄いなぁ」
山本優樹「正直に言っただけだよ」
若宮雫「そっか」
若宮雫「勇気あるね! 『優樹』だけに!」
若宮雫「あれ? 流石に安直過ぎた?」
山本優樹「い、いや」
山本優樹「僕は、むしろ臆病だよ」
若宮雫「え?」
山本優樹「い、いや何でもない」
若宮雫「おかしな山本君」

〇高い屋上
若宮雫「それでね──」
若宮雫「あっ」
山本優樹「どうしたの?」
若宮雫「暗くなってきたなって」
山本優樹「うん」
若宮雫「帰らなくて平気?」
山本優樹「もう少し話してたい」
山本優樹「若宮さんと」
若宮雫「そっか」
若宮雫「凄く嬉しい」
山本優樹「若宮さん、実は君のこと──」
若宮雫「あっ!」
若宮雫「体が・・・!」
山本優樹「若宮、さん」
若宮雫「そっか」
若宮雫「私」
若宮雫「成仏するのかも」
若宮雫「あはは」
若宮雫「本当に、急だね」
若宮雫「もしかして、悲しんでくれてたり──」
山本優樹「してる」
山本優樹「物凄く」
若宮雫「や、やだなぁ冗談のつもりだったのに」
若宮雫「山本君」
若宮雫「ありがとう」
若宮雫「私のためにここに来てくれて」
若宮雫「お喋りの相手してくれて」
若宮雫「本当に」
若宮雫「ありがとう」
山本優樹「僕の方こそ」
山本優樹「ありがとう」
山本優樹「結局」
山本優樹「伝えられなかった、な」

〇学校の廊下
  本当は
  君のことは知っていた
  僕に勇気があれば
  救えたのかもしれない
  僕は
  最低で臆病だ

〇高い屋上
山本優樹「だからこそ」
山本優樹「僕は君を」
山本優樹「忘れない」
山本優樹「忘れちゃいけない」
山本優樹「絶対に」
  もし来世があるのなら
  まず謝りたい
  もし許されるなら
  僕は君と
  本当の『友達』に、なりたい

コメント

  • 困っている人、苦しんでいる人を見付けても、なんて声を掛けて良いかは分からないですよね😢
    中学生の頃、学校のトイレでカツアゲの現場に遭遇した事がありましたが僕にできたのは先生にチクる事だけでした…

    2人が話合えたのは彼女の救いになったと同時に、自責の念を持ってしまった彼にとっても救いになったのでしょうね。

  • 私もイジメられていた側の人間なので、気持ちは痛い程解ります。(まあ男ですが)
    あんまりああだこうだ言うのは野暮でしょうかね。ぐぐっと力強くいいねボタンを押す一作でした。

  • 終わり方の、切なくしんみりした感じが、何か心に残りました。
    イジメ、許さない…😭

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