十六話 崩壊(脚本)
〇警察署の食堂
黒沼 晶「渋屋・・・」
黒沼 晶「結局あれから、顔を見ていない」
黒沼 晶「・・・」
黒沼 晶「あいつと食べた飯、美味かったな」
黒沼 晶「でも、今はまるで味がしねーよ・・・」
地球外生命体ギャラジーが出現しました。
隊員とエージェントは、直ちに出撃してください
今回は小型から中型ギャラジーによる、中規模襲撃とみられます
黒沼 晶「来たか」
黒沼 晶「俺が、渋屋の分までやらなきゃならねー」
黒沼 晶「せめて今くらいは・・・休ませてやりたいから」
黒沼 晶「あいつの分まで、俺が命を救ってきてやる!」
〇渋谷のスクランブル交差点
黒沼 晶「よし、いいペースだ。 このままいけば、被害者も抑えられ──」
黒沼 晶「今のは爆発音か!? まさか・・・!!」
渋屋 杏「・・・」
渋屋 杏「熱ッ──」
黒沼 晶「渋屋! どうしてここにいるんだ!」
渋屋 杏「どうしても何も、当たり前でしょ? エージェントなんだから」
渋屋 杏「私は大丈夫、万全だから。 それより自分の心配をした方がいいわよ」
黒沼 晶「嘘をつくな!」
黒沼 晶「今の爆発で腕が火傷したんだろ。 万全のお前はそんなミスをしない!」
渋屋 杏「・・・」
黒沼 晶「今回の規模くらいの襲撃なら、俺一人でもなんとかなる」
黒沼 晶「だから安心しろ。 お前は無理しなくていい」
渋屋 杏「いや! 離してっ!」
渋屋 杏「私は戦わなくちゃならないの! 戦わないエージェントに価値はない!」
黒沼 晶「・・・!!」
渋屋 杏「価値がないエージェントは捨てられる! リベリオンから追い出される!」
渋屋 杏「私はずっとリベリオンにいたい! もう、ここ以外の居場所がないの!」
黒沼 晶「おい待て!! 渋屋!!」
黒沼 晶「くそっ!!」
黒沼 晶「追いかけねーと・・・!」
〇オフィスの廊下
日谷 紗枝「渋屋さんは解任するべきかもしれません」
〇高層ビルのエントランス
中野 瑠奈「もう、学校戻ってこなくていいよ。 誰もあなたを待ってなんかいないから」
〇渋谷のスクランブル交差点
渋屋 杏「嫌・・・嫌・・・!! 一人はもう嫌!!」
渋屋 杏「もう捨てないで・・・! 居場所をなくさないで!!」
渋屋 杏「いやああああああ!!! ああああぁぁぁぁっ!!!!」
渋屋 杏「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
渋屋 杏「あれ、私、今何と戦ってるの・・・?」
渋屋 杏「私、何をしてる? 何を手に持ってる?」
渋屋 杏「あれ・・・あれ・・・?」
渋屋 杏「そ、そうだ、取り敢えず戦わなきゃ。 じゃないと一人になっちゃう・・・」
渋屋 杏「・・・一人?」
渋屋 杏「父さん、母さん、瑠奈、クラスのみんな・・・」
渋屋 杏「みんないなくなって、私は既に一人じゃないの?」
渋屋 杏「・・・私、どうしてここに」
渋屋 杏「どうして一人で、こんな場所にいるの」
〇渋谷のスクランブル交差点
渋屋 杏「・・・」
渋屋 杏「・・・え?」
黒沼 晶「渋屋ッ!!」
渋屋 杏「あれ、なんか、痛い・・・?」
黒沼 晶「──ッ!」
黒沼 晶「救護隊員、今すぐに来てくれ! 渋屋が命に関わる傷を負った、だから早く!」
黒沼 晶「一時的な止血をするぞ。 痛むが我慢しろ」
渋屋 杏「ちょ、ちょっと痛いけど・・・ 別にそんなに大袈裟なことじゃないわよ」
渋屋 杏「どうしてそんなに焦っているの? 私は大丈夫よ」
黒沼 晶「・・・もう無理するな、渋屋」
黒沼 晶「もう、十分なくらい頑張っただろ」
渋屋 杏「ちょ、ちょっと・・・! いきなり何よ・・・!」
黒沼 晶「お前は良い奴だ。 眩しいくらい、良い奴なんだ」
黒沼 晶「お前は生半可な覚悟では叶えられない夢を、努力を惜しまずに追いかけた」
黒沼 晶「俺は、お前のおかげで諦めていた夢を見ることができた」
黒沼 晶「だから・・・俺はお前に、幸せになって欲しい」
黒沼 晶「もう、苦しんで欲しくない」
渋屋 杏「・・・」
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